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七月七日
桃華は毎年、 同じ色の短冊を選んでいた。
淡い桃色。
女の子
そう聞かれるたび、 桃華は笑って答えた。
桃華
桃色は、誰かの心を温める色。
桃華にとっては、 そういう色だった。
昔から桃華は、 自分より誰かを優先する子だった。
お友達
友達が泣いていればそばにいる。
桃華
男の子
寂しそうな人がいれば 声をかける。
桃華
桃華
陽菜
桃華
陽菜
自分が辛くても、笑顔を作った。
陽菜
幼なじみの陽菜は、 いつもそう言っていた。
陽菜
桃華
桃華はそう言って笑った。
二人で七夕を過ごした日。
陽菜は桃色の短冊を 桃華に渡した。
陽菜
桃華
桃華は迷わず書いた。
🎋大切な人たちが 幸せでありますように
陽菜は少し悩んでから、 短冊を隠すように書いた。
桃華
陽菜
二人で笑った。
その時間が永遠だと思っていた。
でも、
次の夏。
陽菜は
陽菜
桃華
いなくなった。
桃華の世界から、 突然大切なものが消えた。
それでも
桃華
桃華
桃華
周りを悲しませないために。
桃華
何度もそう言った。
本当は、 大丈夫なんかじゃなかった。
夜になると、 桃華は一人で 昔の短冊を眺めていた。
桃華
ある日。
陽菜の家族から、 小さな箱を渡された。
母
桃華
🎁パカ
中には、一枚の短冊。
去年の桃色の短冊だった。
裏には陽菜の字で、 小さく書かれていた。
🎋桃華が、 私がいなくても笑えますように
桃華はその文字を見た瞬間、 初めて声を出して泣いた。
桃華
自分の願いばかりだった。
陽菜が幸せでありますように。
みんなが笑えますように。
なのに陽菜は最後まで、 桃華のことを願っていた。
それから桃華は、 毎年七夕になると短冊を書いた。
でも、願いは少し変わった。
🎋誰かが笑顔になれますように
その願いだけは、 ずっと変わらなかった。
何年も経った七夕の日。
桃華はいつものように 桃色の短冊を手に取った。
でも、 その年だけは文字を 書く手が止まった。
昔より少し弱くなった指で、 ゆっくりペンを動かす。
そして書いた。
🎋陽菜がくれた優しさを、 最後まで誰かに渡せますように
その日、 桃華はいつもよりたくさん笑った。
たくさん話した。
たくさんの人に
桃華
桃華
と伝えた。
そして 桃華は窓から空を見上げた。
昔と変わらない星空。
昔と変わらない七夕。
違うのは、 自分がもう 昔の自分では ないことだった。
机の上には、 一枚の桃色の短冊。
そこには 最後の願いが残されていた。
🎋私がいなくなっても、 誰かの心に優しい色が 残りますように
翌朝。
桃華の部屋には、 静かな朝の光が 差し込んでいた。
机の上の短冊だけが、 風に揺れていた。
それから毎年。
七夕になると、 町の笹には 一枚の桃色の短冊が 飾られるようになった。
誰が書いたのかは、 誰も知らない。
でもそこには、 毎年同じ言葉があった。
桃華
桃華が最後まで 守り続けた願いは、
誰かの心の中で、 ずっと生き続けていた。
~完~
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コメント
1件
読み終わりました。桃華の「優しい色だから」という一言に、もう全部が詰まってるなと感じました。陽菜が最後に残した短冊「桃華が、私がいなくても笑えますように」—あの瞬間、胸がぎゅっとなりました。自分の願いばかりだと思っていた桃華が、最後に「陽菜がくれた優しさを、最後まで誰かに渡せますように」と書く流れ、本当に美しかったです。静かに、でも確かに残る優しさ。好きです、このお話。