1週間後
朝
慎哉
……
死神(用務員)
元気ないけど、大丈夫?
慎哉
──え?
目の前のベンチに死神(用務員)が腰かけていた
学校の作業用のつなぎではなく、黒ずくめに身をつつんでいる
死神(用務員)
1週間ぶり
慎哉
なんで、あなたがここに…………?
死神(用務員)
次の任務地へ赴く前に、すじを通そうと思って
慎哉は隣に腰かける
死神(用務員)
ちゃんとさ、お別れの挨拶をしてなかったよね
慎哉
お別れ?
死神(用務員)
短い間だったけど
死神(用務員)
きみとすごした時間は楽しかったよ
慎哉
慎哉
まるで二度と会えないような、言いかたですね…………
死神(用務員)
うん
死神(用務員)
会えないというより、会わない方がいい──
慎哉
! ……なんで?
死神(用務員)
ボクが“死神“だから
死神(用務員)
きみはこのまま問題なければ、首席で学校を卒業
死神(用務員)
卒業したあと、海外の音楽院に留学するんでしょ
慎哉
…………
死神(用務員)
有望ある若い子がさ
死神(用務員)
死神のそばにいたら、ダメだよ──
死神(用務員)
そろそろ時間だ
ベンチから立ち上がる
慎哉
……!
慎哉
(行ってしまう……!)
ガシッ
腕を掴んだ
死神(用務員)
……!
慎哉
慎哉
……また、ピアノを聴きに来てよ…………
慎哉
聴かせたい曲が山ほどあるのに…………
死神(用務員)
──困ったな
苦笑いをする
左手を慎哉の頭に置き、優しく撫でた
死神(用務員)
──確約はできないよ?
慎哉
それでもいい
慎哉
……だから…………
死神(用務員)
──そんな顔をされたら、断れないね
死神(用務員)
死神(用務員)
わかった
死神(用務員)
いつかまた、きみのピアノを聴きに行く
死神(用務員)
──それまでは
死神(用務員)
サヨナラ、ね
慎哉
…………
すでに姿はなかった
時計を見ると5分も経っていない
慎哉
慎哉
いつか、必ず────
少年は“あの人“との再会を願い、叶うことを──祈った
現代
202X年○月△日
女子高生B
今日は付き合ってくれてありがとう
女子高生A
いいよ。気にしないで
女子高生A
それより──
女子高生A
買えてよかったじゃん♪
女子高生A
阿左美慎哉のトリュビュートアルバム
女子高生B
見つけたときは、涙が出そうになっちゃった
女子高生A
大ファンだもんね
女子高生B
女子高生B
阿左美さんのピアノ、もっと聴きたかったなぁ…………
女子高生B
あんなことになるなんて
女子高生A
……誰も予想がつかなかったことだったし
女子高生A
……しかたないよ
女子高生B
でも、まさか……
女子高生B
事故で亡くなるなんて、思いもしなかった…………
女子高生A
早すぎるよね…………
女子高生A
37歳って、まだこれからなのに──
女子高生B
あれから、10ヶ月経つけど…………
女子高生B
未だに信じられない──
女子高生A
女子高生A
すっかり湿っぽくなっちゃったわ
女子高生A
ねぇ、今からクレープ屋に行こう
女子高生B
今から?
女子高生A
景気付けによ
女子高生A
ほら、行こう♪
女子高生B
え? あ、ちょっと……!
そのまま、クレープ屋へと足を向けた







