石田 綾香
ドアを開けて、
そんなことを思った。
石田 綾香
重いため息をこぼして
踵を返す。
石田 綾香
石田 綾香
そう納得する自分もいた。
人のものを平気で盗む
佐々木未空は
殴ったら死んでしまったし、
遊ぶ金欲しさについてきた
戸田さくらは
追いかけている途中に
崖から転落するし、
客を盗撮していた
”真偽真”は
こっちが何かする前に
首を吊って勝手に死んだ。
もっとみんな、
激しく抵抗したり、
泣いて命乞いをするのかと思ったのに。
結果は案外呆気ないものだった。
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
そんなことを思う。
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田は頭を横に振る。
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
”本物の恐怖に歪む”
”人の顔を見ることはできない”
”真偽真”のスマホから入江へ
メッセージを送ったから
ちゃんと彼の家に来ているはず。
石田 綾香
そう思って、
鞄の中にバールをねじ込んだ。
”真偽真”の部屋、
302号室の扉をそっと開く。
生温い空気が
足元を撫でた。
中を覗き込むと、
部屋の電気は付いていて、
人の動く気配もした。
石田 綾香
石田 綾香
安堵の息を飲み込み、
部屋に入ると、
ゆっくり扉を閉めた。
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
そう思いながら、
進んだ先には
誰もいなかった。
人の気配すら無い。
石田 綾香
唖然としていると、
ポケットに入れていた
”真偽真”のスマホが微かに振動する。
取り出し、
画面を見ると
入江からのメッセージが
届いていた。
・
”部屋に着きました”
・
石田 綾香
そう呟くと、
背後で
キィ……
という音がした。
振り返ると、
クローゼットが
わずかに開いている。
石田 綾香
石田 綾香
そのことに気が付いて、
背筋に冷たいものが走った。
・
ギ、ギギッ……
・
立てつけが悪いのか、
クローゼットの扉から
嫌な音が聞こえた。
石田 綾香
混乱しながらも、
”何かが来る”
ような気がして、
鞄の中から
バールを取り出した瞬間、
───ギギッ…
ガタンッ!
一際大きな音を立て
クローゼットが開いた。
そして、
中から
髪の長い人物が
ゆったりとした足取りで
出てきた。
石田 綾香
纏う空気に
線香の香りがすると、
心臓がドキリと跳ね上がり、
石田の脳裏を過ったのは
お化け屋敷を彷徨う
【キリコ】の姿だった。
石田 綾香
石田 綾香
一歩、
一歩、
左右に少し揺れながら
近づいて来る。
血まみれの包丁を持って。
石田 綾香
心臓が早鐘をうち、
呼吸が早くなる。
逃げようとしたが、
足が震えて
言うことを聞かない。
石田 綾香
声を震わせバールを構える。
それでも、
相手は足を止めない。
石田 綾香
恐怖を振り払うように叫び、
バールを振り下ろした
が、あっさり掴まれてしまった。
石田 綾香
しかし、
押しても引いても
ビクともしない。
石田 綾香
石田 綾香
長い髪の隙間から覗く
血のように赤い瞳を見た瞬間、
全身に
絶望感が駆け巡り、
血の気が引くのを覚えた。
石田 綾香
石田 綾香
そう思わせるほど、
その目は、
狂気に充ちていた。
ゆっくりと振り上げられる包丁。
石田 綾香
石田 綾香
石田は逃げることも忘れ、
ただただ見つめる。
救いも
慈悲も無い
赤い目を。
風都 燐
風都 燐
風都が慌てて止めに入った。
風都 燐
星崎は呆れたように言い、
包丁を持った手を
ゆっくりと下ろした。
風都 燐
その問いに
星崎はそっと目を逸らす。
風都 燐
石田 綾香
石田はキョトンとした顔で、
風都と星崎を見る。
入江 正憲
石田 綾香
石田 綾香
背後から現れた入江を見て、
石田の顔が強張る。
石田 綾香
入江 正憲
入江は石田の言葉を遮るように尋ねた。
入江 正憲
入江 正憲
入江 正憲
石田 綾香
石田 綾香
入江 正憲
入江 正憲
入江 正憲
入江は石田の手元を指差す。
石田 綾香
石田は自分が持っているスマホを見て、
表情が固まった。
星崎は長い髪のカツラを取る。
石田 綾香
石田 綾香
石田の手が震える。
石田 綾香
星崎 水織
石田 綾香
星崎 水織
星崎 水織
星崎 水織
石田 綾香
星崎 水織
星崎 水織
石田 綾香
何か言い返そうと口を開いたが、
うまく言葉は発せられなかった。
星崎 水織
星崎 水織
石田 綾香
石田 綾香
星崎 水織
星崎 水織
石田 綾香
星崎 水織
そこで星崎は短く息を吐いた。
星崎 水織
星崎 水織
石田 綾香
石田はすぐに否定した。
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
石田 綾香
花望 馨
冷ややかな声が聞こえ
全員が振り返ると、
そこには
花望馨(はなもち かおる)が立っていた。
風都 燐
花望 馨
花望 馨
花望はゆっくりと
石田に近づいた。
花望 馨
花望 馨
花望 馨
石田 綾香
石田は全てを拒むように
下唇を噛み締める。
花望 馨
花望 馨
石田 綾香
花望 馨
花望 馨
そう言って花望が
警察手帳を見せると、
石田は顔を強張らせ、
小さな悲鳴を上げたのだった。
・
・
だが、
何となく
これで全てが解決!
というわけにはいかないことを
風都は薄っすらと感じ取っていた。
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