テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#恋愛
ばたっちゅ
20,190
56
1927年、 ヴァージニア・名門オードリー家
エレノア・オードリー
ヴァイオレット
重い鉄の扉が開き、一筋の冷たい光と共に、 母親のエレノア・オードリーの冷酷な声が響いた
当時12歳だったヴァイオレットは、 窓一つない、冷たい石床の地下室の隅で、 細い身体を丸めてガタガタと震えていた
彼女は、ヴァージニアの誰もが羨む、 名門貴族の長女として生まれた
しかし、生まれつき膝が人間とは逆に、 後ろ向きに深くしなる「バックニー」の特異な身体を持っていた
厳格で完璧主義な両親にとって、 それは「一家の恥晒し」以外の何物でもなかった
オードリー家は「長女は病死した」と世間に偽りの発表をし、 ヴァイオレットをこの光の届かない地下室へと永遠に幽閉したのだ
エレノア・オードリー
エレノア・オードリー
エレノア・オードリー
ガチャン、と冷たい音を立てて置かれたのは、 犬の餌皿のような古い鉄の器
中に入っているのは、家畜の飼料を混ぜ合わせたような、 冷え切った、味のしない灰色の泥のような食事だった
エレノアはそれだけを言い残すと、振り返ることもなく扉を閉め、 厳重に鍵をガチャガチャと施錠した
再び訪れる、完全な暗闇と、死のような静寂
ヴァイオレット
ヴァイオレット
ヴァイオレット
ヴァイオレットは、 小さな拳で冷たい鉄の扉を叩きながら、泣き叫んだ
しかし、返ってくるのは、 冷たい沈黙だけだった
逆向きにしなる足で、 ドアを蹴ったり、叩いたりしたが、 それでも反応は返ってこなかった
ヴァイオレット
ヴァイオレット
ヴァイオレットは泣き疲れて、 「本当に閉じ込められたんだ」という実感がジワジワと湧き、 静かに涙を流しながら、絶望した
それから2年、彼女は暗闇の中で過ごした
実の親から「家畜」と呼ばれ、 まともな温かい食事も、美しい衣服も与えられない生活
人間としての尊厳をすべて剥ぎ取られ、 絶望に押しつぶされそうになる毎日
しかし、彼女の心の中にある「レディとしてのプライド」だけは、 どれだけ虐げられても、どうしても殺し尽くすことができなかった
ヴァイオレット
ヴァイオレット
彼女は暗闇のなか、家畜の餌のような食事を、 誰よりも優雅に、完璧なテーブルマナーの所作を崩さずに口に運んだ
餌のような食事は、 味はしないし、お世辞にも美味しいとは言えなかったが、 ヴァイオレットは表情を崩すことはなかった
そして、後ろに深く曲がる自分の脚を愛おしそうに撫で、 その驚異的な柔軟性を活かして、狭い地下室の中で毎晩、 独学で美しいステップを踊り続けた
動くたびに関節がきしみ、血が滲むような痛みが走ったが、 踊っているときだけは、檻を抜けた美しい鳥になれるような気がした
ヴァイオレットが14歳になったある夜、 転機が訪れる
本邸の配管工事のミスで、 地下室の通気口の格子がわずかに緩んだ
普通の人間なら、 頭すら通らないほどの狭い隙間
ヴァイオレット
ヴァイオレット
しかし、ヴァイオレットは、 人間には不可能な「後ろ向きに深く曲がる関節のしなり」を極限まで活かし、 自らの身体を信じられない角度に折り曲げた
ヴァイオレットは、その狭い逃げ道をするりと通り抜け、 ついに外の世界へと脱出した
実の親が「呪い」と呼んだその逆関節の脚こそが、 彼女を暗闇から救い出した「自由の翼」だった
ヴァイオレット
ヴァイオレット
ヴァイオレットは脱出したものの、 行く宛がないため、泥がついた衣服で路上を彷徨っていた
アーノルド
ジョルジーナ
そんな彼女を拾ったのが、 ジョルジーナとアーノルドだった
ヴァイオレット
ヴァイオレット
ヴァイオレット
ジョルジーナは彼女の泥を、優しく拭いた
ジョルジーナ
ジョルジーナ
ジョルジーナは、彼女のプライドを折ることなく、 新しい「女王の居場所」を与えた
その日から、 ヴァイオレットはアウターレールの列車に保護されて、 「看板娘・フラミンゴガール」として、 ステージで拍手喝采を浴びるようになった
ヴァイオレット
ヴァイオレットは、 柔らかいベッドの上で、目が覚めた
地下室に閉じ込められていた頃の、 あまりにもリアルすぎる悪夢を見ていた
それは、 幼少期の思い出をそのままリピートしたようだった
ヴァイオレット
ヴァイオレットは、ホッと胸を撫で下ろして、 心臓の位置がわかるくらい、緊張していた自分自信を落ち着かせる
額と手を触ると、汗をかいていたのがわかる
ヴァイオレットはさっき見た悪夢が忘れられず、 バックニーの足がすくんで、 しばらくベッドの上から立ち上がれなかった
コメント
1件
第13話、胸が締め付けられる回だったよ…っ😭💔 「家畜」呼ばわりされて鉄の皿で飼料食わされる12歳のヴァイオレット…なんでそんな扱いされなきゃなの!って怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになった。でも彼女が暗闇の中でもレディのプライド捨てずに優雅に餌を食べて、独学で舞ってたの、本当にかっこよすぎる…✨ 逆関節の脚が“自由の翼”になるなんて皮肉だけど美しすぎて痺れたよ。ジョルジーナたちに拾われて「いい脚だ」って言われた瞬間、涙出た。最後の悪夢の余韻で立ち上がれない描写もリアルで、心臓ぎゅーってなった…🩹🌸