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Sea Otter2026
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山根利広
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ラチム
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コメント
4件
え、これ最初のオムライスのエピソードから既に重すぎるんだけど!?!?😭💔 愛する旦那があんな形で…しかも自分の一言がきっかけだったかもって後悔、胸が締め付けられるよ… そこからSNSのデマポストに繋がって、菜々乃ちゃんの日常が始まるんだけど、電車の人身事故のシーンで一気に不穏な空気に戻るの上手すぎる…「まわせ」って言葉がめっちゃ怖い!次どうなるのか気になって仕方ないんだけど!?!?🔥
あれは1999年の冬
12月の出来事です。
私には今年結婚したばかりの亭主がいます。
私は彼を心から愛し
誰よりも彼のことを理解していました。
彼も私の全てを理解してくれて
愛し合っていました。
幸せとはまさにそのことなのだろうと思うほど
私は幸せでした。
しかしそんな幸せは
突然消えてしまったのです。
ある寒い日のこと。
私はその日体調を崩し
朝から寝込んでいました。
彼は私を案じ仕事を休み
看病してくれていました。
お昼になり体調も回復してきたので
昼食にすることにしました。
「何が食べたい?」と聞いてくれたので
私は「あなたの作ったオムライスが食べたい」と
言いました。
彼はそれを聞いて
材料を買うからと言って
家を出ました。
しかしそれから何時間経っても
彼は帰ってきません。
5時間が経過しようとしていたとき、
電話がかかってきました。
県警の方からでした。
「ご主人のことで話したいことが」
そう言うので
嫌な予感を抱えながら
私は署に向かいました。
警察官は
深刻な表情でした。
何があったのかと聞くと
「ご主人は焼死体で発見されました」
と告げられました。
死因は
通り魔によるものだそうです。
彼は生きたまま灯油をかけられ
燃やされたそうです。
私があの時
「オムライス食べたい」
そう言っていなければ……
その後悔の念は
今でも私の心に巣食っています。
そして
とうとう私は
自分で犯人を探し出し
殺すことに決めました。
このポストを見た方は
私の作った機械によって
「リスト」に
登録されます。
ハッキングが可能な機械です。
この登録を解除するには
できるだけ早くこの投稿を
リポストしていただくことが
必要です。
そして
このポストを見たのに
リポストしなかった方は
犯人の協力者と見做し
あらかじめ私が契約をしておいた
暴力団員を使い
抹殺させていただきます。
菜々乃
菜々乃
菜々乃
たまたまタイムラインに流れてきた文章を見て
秋見堂菜々乃は失笑した
目を閉じると
スマートフォンの液晶画面の光が閉ざされ
視神経が弛緩し頭が重くなる
そして再び目を開いて
陰湿なポストを
もう一度眺める
最近よくあるデマポストだ
菜々乃は心底うんざりさせられたように
大きなため息をついた
菜々乃
菜々乃
菜々乃
よく見るとデマポストを再投稿したのは
菜々乃とSNSで仲のいい人物だった
菜々乃
菜々乃
菜々乃
忠告しておこうか
そう思ったが
アカウント乗っ取り系の類だったら 巻き添えを食らいかねない
菜々乃はスマートフォンから顔を上げて
電車の窓に映るくたびれた自分の顔をじろりと見た
菜々乃
朝アイロンで整えた髪は
きょう一日の疲れと
強い湿気とが重なり合って
すっかりぐねぐねとうねっている
それが手伝ってか 制服姿も萎びた感じで
早く脱ぎ捨ててしまいたいという 不快感が強い
こういう日に限って
電車の中の空気も芳しくない
皆首を折って
スマートフォンをフリックし続ける
自分もそうではないかと思い返し
ぎゅっと目を閉じ また開く
窓に映っているのは
やはり疲弊した女子高生の姿だ
菜々乃
清潔感を失った髪を
指先で引っ張って伸ばしてみる
だが「これが元の姿だ」とでも言うように
変にカールするばかりだった
再びスマートフォンに指先で触れる
だが 普段とは違って
なにかをしようという気にはなれなかった
先ほどのポストが感情の中で尾を引いている
少し頭痛もあった
車掌
車掌
電車のドアが開くと
ドアの前にひしめき合う群衆は 排泄されるように外に出ていった
菜々乃はすかさず 目の前にできた空席を取る
菜々乃
菜々乃
目を閉じるが
当然眠れなかった
あのポストの文字列が
意識の奥底に 焦げた油のようにこびりついている
文字と不安定な感情がないまぜになって
積乱雲のようなおどろおどろしい像に 成り果てた頃だった
鋭い警笛が鳴る
体に重力がかかり
進行方向に乗客全員が突っ込むような 格好になる
菜々乃
騒然とした車内に車掌のアナウンスが流れる
車掌
車掌
車掌
車掌
車掌
車掌
車掌
乗客たちは明らかに苛立っている
舌打ちも聞こえる
とうぜん菜々乃も例に漏れない
菜々乃
菜々乃
毒々しい呟きが 口からこぼれる
車掌
車掌
車掌
車掌
電車の中にいる乗客の苛立ちの度合いが やにわに高まる
中肉中背のサラリーマンが 「ここで降ろせ!」と怒鳴りながら 先頭車両へ移動していく
菜々乃も心のなかでそれに賛同していた
数分が経ち
10分が経ち
20分が経った
菜々乃
スマートフォンをいじくるが
決して落ち着かなかった
車掌
車掌
車掌
車掌
車掌
「早くそうしろよ!」と 別のサラリーマンが口走る
ほどなくして 先頭車両の出口が開いた
菜々乃が降りる駅のプラットフォームは
目と鼻の先だった
急遽取り付けられた階段をゆっくりと降りて
乗務員が誘導している 通路へ進もうとした
男
菜々乃
誰かに呼び止められたような気がして
足を止めふと背後を見やる
菜々乃
菜々乃
男
今度はプラットフォームの方から 声がした
菜々乃
菜々乃
男
菜々乃は周囲を見渡す
正面には救急車があった
菜々乃
そこに担架で運び込まれた「誰か」が
首だけをこちらに向けて
何か喋っている
菜々乃
口ははっきりと こう動いていた
男
男