何者かに追われる悪夢、女の霊との遭遇ーー。タカシは2つの問題に悩まされながらも、新たな職場で懸命に働いていた
タカシ
眠い…
タカシ
とにかく眠い…
タカシ
悪夢と幽霊のせいだ…こんちくしょーめ…
ナオト
タカシくん、めちゃくちゃ眠そうだけど大丈夫?
隣席のナオトが心配して声をかけてきた。ナオトはタカシと同時期に入社した同期社員だ
タカシ
あーわかる?
タカシ
実はさ…
タカシは睡眠不足の理由をナオトに説明した
ナオト
女の霊!?
タカシ
バカ!声でかいよ!
ナオト
あ、ごめん。それは厄介だね…
タカシ
どうせ信じてくれないんだろ?
タカシ
あー何か手を打たないと、「睡眠不足死」しちゃうよ〜
ナオト
そんな死因聞いたことないけど
タカシ
何か良い対策法ないかな?
ナオト
うーん…
タカシ
いきなり聞かれてもわかんないよね
タカシ
大丈夫、大丈夫!もう忘れてくれ、何とか乗り切ってみせるからさ
ナオト
うちの実家、お寺なんだよね
タカシ
え?お寺?
ナオト
そう
ナオト
親父に相談してみようか?
タカシ
マジか!!ぜひお願いしたい!
ナオト
OK!あとで親父に電話してみる
タカシ
いやー本当に助かるわ!
ナオト
仲間がこんなに辛そうにしてたら、俺も辛いからさ
タカシ
お、おう…
タカシ
マジでありがとな
タカシはナオトの仲間思いな性格を知り、会社にいながら感動し、少しの涙をこぼした
ナオト
あれ?タカシくん、泣いてない?
タカシ
違うよ!欠伸したら、涙が出ただけ!
タカシ
さ、午後の会議に向けて、資料まとめちゃおうぜ
ナオト
そうだな!
昼休憩。タカシとナオトは休憩室で、各々が買ったコンビニ弁当を食べていた
ナオト
そういえば親父に女の霊のこと聞いてみたよ
タカシ
え?もう?
ナオト
うん。何か強力なお札があるみたいだから、送ってくれるって
タカシ
おおおお!
タカシ
本当に助かる!お父様にお礼を伝えといてください!
タカシ
あと今度、晩御飯奢らせてください!
ナオト
そんなに笑
タカシ
ナオトさまぁああ、本当に感謝です!
ナオト
教祖様みたいに崇めないで笑
タカシの携帯電話が振動する。相手はミナコからだった
タカシ
あ、ごめん!電話だから、ちょっと出てくるね
ナオト
オッケ〜
タカシ
もしもし、どした?
ミナコ
いま、大丈夫?
タカシ
ちょうど休憩中だから大丈夫
ミナコ
実はさ…私…
ミナコ
……
しばらく経ってもミナコは口を開けない
タカシ
え?どうしたの?何かあった?
ミナコ
私、ストーカーにあってるみたいなの…
タカシ
す、す、ストーカー!?
予想外の言葉にタカシは大きな声を出して驚いた
ミナコ
そうなの。もっと早く言おうと思ったけど、タカシ忙しそうだったからさ…
タカシ
いやいや、それは関係ないよ!もしかしたら、命に関わる問題なんだからすぐ相談しなきゃ!
ミナコ
ごめん
タカシ
それで、どんな被害にあってるの?
ミナコは何者かによる無言電話やストーキングにあっていることをタカシに伝えた。そして、思い当たる節があるという
ミナコ
実は、タカシが東京に来る前、合コンに参加したことがあるの
タカシ
合コン…
ミナコ
でも数合わせのために行っただけだから、別に浮気しようとかそういうことじゃなくて…
ミナコ
その時にしつこく連絡先を聞いてきた男がいるんだけど、あまりにしつこくて教えちゃったんだよね…
タカシは無言でミナコの話を聞いていた
ミナコ
その後もしつこく連絡してきたから、彼氏がいるので期待に応えられませんって言ったのね
ミナコ
それからしばらく連絡がこなくて、私も連絡先が変わったりして、彼の存在を忘れてたの
ミナコ
その人が怪しいって思ってるんだけど、連絡先もわからないし、確かめようがなくて…
タカシ
そうだったのか…
ミナコ
怒ってない?
タカシ
え?なにが?
ミナコ
合コンに参加したこと
タカシ
ああ。数合わせで行っただけでしょ?
ミナコ
うん
タカシ
なら問題ないよ。人付き合いも大切だしさ
ミナコ
ありがとう…
タカシ
今度参加する時はちゃんと教えてね
ミナコ
うん、わかった
タカシ
それよりもストーカーをどうするか、だね
ミナコ
今のところ特に被害はないから大丈夫なんだけど、もしものことを考えたら怖くて…
タカシ
じゃあ、うちで良ければしばらく住む?
ミナコ
ありがとう。でも会社に相談したら、女性専用の寮に一時的に住まわせてもらうことになったから、大丈夫!警備員もいるから安全だし!
タカシ
そ、そう…それは良かった
タカシ
(一瞬でも同居できると思った自分を殴りたい…)
ミナコ
また何かあったら連絡するね
タカシ
うん、よろしく
ミナコ
仕事頑張って。またね
タカシは電話が切れても、耳から携帯電話を離さず、その場に立ち尽くした
タカシ
悪夢と女の霊にストーカー…
タカシ
とんでもない東京デビュー1年目だ…
ナオト
長かったけど、大丈夫?
タカシ
いや大したことじゃないから大丈夫だよ
ナオト
そうか、なら良かった
タカシは最後のから揚げを頬張った。ショックのせいか味が薄くなったような気がした
タカシ
これからどうなることやら…
続







