TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

渋谷大

対策探しは当然任せるけど

渋谷大

……悪いけどこの話、俺も混ぜてくれっかな

電気をつけることすら忘れていた暗い室内に

不意に光明が差した気がした

見返った場所で揺れるのは見慣れた白い髪

ここ数日間連絡が取れなかっただけでなく

この場所さえ知らないはずのその人影を目に留め

久留間の目が大きく見開いた

久留間悟

……大?

渋谷大

おう

久留間悟

なんで、ここ

渋谷大

……ごめんな、やっぱり俺

渋谷大

仲間はずれは寂しいや

ポスト

ゴリ……

ポスト

ゴリラぁあああ!!

久留間悟

ポスト!!

渋谷に突撃しようとしたポストを、怒声が制す

それにその場の全員が身を強ばらせる中

久留間は眉間を寄せ、あっさりと背を向けた

久留間悟

役に立たないって言ったろ

久留間悟

どうやって来たのか知らないけどな

久留間悟

さっさと帰って大人しくしてろ

ポスト

ッ、オタク……!

渋谷大

帰んない

渋谷大

俺が役に立たないなんて

渋谷大

その場に行ってみなきゃ、分かんねぇだろ

久留間悟

だったらまだ調査中だ!

久留間悟

頼むから、早くこの島から――っっ!!

ヴーン……

ヴーーン……

卓上に置かれたままのスマートフォンの振動が言葉を遮る

咄嗟に一同の視線がそちらへ集中する中で

もう一人の指先がそれを取り上げた

色摩猛

じっちゃん、って表示が出てる

色摩猛

取るよ

久留間悟

色魔……ッ!?

久留間悟

なんでお前までここに……!!

さらに言い募ろうとする久留間を、唇に人差し指を立てて制する

受話と同時にスピーカーに切り替えられた音声が

静かな室内に緊張を走らせた

 

……せっかくの人質じゃ

 

むざむざと殺したくはなかろう

荒い呼吸とともに吐き出された擦れ声に、全員の息が詰まる

とたん、スマートフォンを囲むように集合し

声を殺してその音に耳を傾けた

???

???

???

???

本田芙蓉

お前さん、苔を飲んで霊能を得たらしいが

本田芙蓉

霊を見るのは、苦痛かの

???

???

???

???

???

???

???

???

???

本田芙蓉

狂人、か

本田芙蓉

……残念ながら、お前さんとわしらは違う

本田芙蓉

先天的に見えるわしらはな

本田芙蓉

その扱いを、幼少期に過ぎておる

本田芙蓉

じゃからどう見逃すべきか、聞き逃すべきか

本田芙蓉

はたまたどう誤魔化すべきであるのか

本田芙蓉

積み重ねた月日が覚えさせてくれた

本田芙蓉

かつては苦痛だったのかもしれんが……

本田芙蓉

ほとんど生者と同じように見えるためか

本田芙蓉

長じてからは、考えたこともない

???

本田芙蓉

全員ではなかろう

本田芙蓉

しかし日常的に怯え、嘆いておる者は

本田芙蓉

少なくとも現代社会には、溶け込めんよ

本田芙蓉

かつてのお前さんのようにな

???

???

本田芙蓉

ただの推測じゃよ

本田芙蓉

そこにあるお前さんのアルバムを見た

本田芙蓉

中学卒業から高校入学までのたった一ヶ月

本田芙蓉

すっかり面変わりするほどの憔悴ぶりじゃった

本田芙蓉

その上で、卒業記録のなさ

本田芙蓉

最終的に命を絶ったことを考えれば

本田芙蓉

自ずと、経緯を想像できるというものじゃ

本田芙蓉

なればこそ問いたい

本田芙蓉

――お前さん

本田芙蓉

どうやって人を殺めた

???

???

???

???

???

???

???

本田芙蓉

……心当たりが多いようじゃな

本田芙蓉

そのすべてじゃよ

本田芙蓉

お前さんが取り込んだ、彼女の力を除けば――

本田芙蓉

人や物に触れられるほどの霊力はなかろう

本田芙蓉

少なくとも石敢當を配置しご両親を封じた

本田芙蓉

その時には、協力者がおったはず

???

???

???

???

???

???

???

???

本田芙蓉

――なるほど

本田芙蓉

尊敬され敬われるユタ

本田芙蓉

その監視者ともなればよほどの権力者と思ったが

本田芙蓉

独裁を防ぐためか、存在は秘されておったか

本田芙蓉

ならば、納得はできる

本田芙蓉

……お前さん、先ほど言ったな

本田芙蓉

霊が見えれば狂人として扱われる、と

本田芙蓉

そう扱われた結果がこれか

???

???

本田芙蓉

ぐぅう……!!

本田芙蓉

はっ、ぁう゛……

???

???

???

???

???

???

渋谷大

……

スピーカーから響く苦悶の声に耐えきれず

久留間の指が終話アイコンをタップする

ポストは身を震わせたまま黙りこくり

色摩もまた、沈黙を守っていた

久留間悟

……帰ってくれよ

絞り出した声音が落ちる

久留間悟

アイツは今でもお前を狙ってるんだ

久留間悟

じっちゃんでさえ捕まるような奴

久留間悟

どうカタヅケられるか、先が見えない

久留間悟

だから――ッ!?

べんっと音を立て、渋谷の手が久留間の両頬を挟む

そのまま力任せに目を合わせると

渋谷は静かに口を開いた

渋谷大

じっちゃんの命と俺の命

渋谷大

天秤にかけるようなことすんな

叱りつける口調だった

渋谷大

お前の中の俺はまだ弟分でしかなくて

渋谷大

助けなきゃいけない奴かも知んないけど

渋谷大

俺の中でお前はずっとずっと対等だし

渋谷大

お前とだったらなんでもできるって思ってる

久留間悟

っっテェ!?

手が離れた代わりに、今度は鋭い痛みが額を襲う

思わず上がった悲鳴ににんまりと笑んだ青い目が

白い髪を揺らして首を傾いだ

渋谷大

お前は、そう思ってねぇの?

挑発するような、からかうような口ぶりだった

それを一瞬呆けたような顔で眺めたあと

久留間は悔しそうに一度顔を歪め

久留間悟

……腹立つわー

心底安心した表情で、そう毒づいた

久留間悟

あとで泣き言言ったって聞かないからな

渋谷大

言うとしたらそっちだろ

ポスト

なぁ

割り入った声に、その場の視線が集まる

おずおずと左右に揺れながら様子を伺うポストは

二人を見上げるように表紙を反らした

ポスト

……仲直り、した?

ポスト

みんなでボス、助けにいける?

渋谷大

渋谷大

心配させてごめんな、ポスト

渋谷大

じっちゃん、助けに行こ

ポスト

……うん

ポスト

うん……!!

久留間悟

また小口黄ばむぞお前

ポスト

だって安心したんだもん……!!

色摩猛

ポッスン、泣く代わりに小口黄ばむの?

久留間悟

……一番聞きたいことあるの、お前だからな

色摩猛

そうだろうね

久留間悟

連絡断ってから今までのこと

久留間悟

洗いざらい吐いてもらうぞ

色摩猛

隠すつもりもないから、どうぞぉ

色摩猛

どうやってここを知ったか

色摩猛

どうやってここまで来たか

色摩猛

まぁ色々話してあげるよ

色摩猛

ねー?

すみれ色の視線の先には、玄関へ続く扉がある

久留間悟

……キツネくん?

向こうから覗いていたのは、キツネの顔

慌てて隠れたその姿に、あの子がパイプ役かと苦い笑いが漏れた

カタヅケ屋霊異記【完結】

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

5,507

コメント

16

ユーザー

じっちゃん… 尊敬の対象でしかないです… 危険な状況でも直、みんなのリーダーって感じですね😳✨ やっと合流の瞬間が見られて、とても嬉しいです!! 「修行し努力してきた自分は強いんだ」ということを見せてやってください渋谷さん!! そして色摩くんも一緒なのが何気に嬉しいです…☺️ 相変わらずポストは可愛いね…

ユーザー
ユーザー

これで「守ってやらなきゃいけない弟分」から「背中を預けられる相棒」に…!?

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚