家に帰ると いつもクローゼットが開いている
最近いつもこうだ
たしかに閉めて 家を出ているはずなのに
由香
わたしは そんなことはないと信じながらも
身震いするような 危険な可能性を感じていた
由香
由香
この部屋のどこかに わたしをつけている 誰かがいるのだとしたら?
わたしは嫌なイメージを ふるい落とすように
頭を横に振った
由香
由香
由香
クローゼットのなかに なにかがいるのだろうか?
わたしは吊り下がった服をかきわけて 目を凝らして「なにか」がないか チェックする
由香
両手でゆっくりと クローゼットを閉める
由香
由香
疑問は尽きないが よく考えたら
わたしが家を出るとき 開けっ放しにしている癖が あるのかもしれない
由香
由香
心のなかのわだかまりに 違和感を感じながらも
ひとまずシャワーを 浴びることにした
クローゼットが開いている
由香
由香
由香
わたしはもう一度 力をこめてクローゼットを閉めた
由香
早々に布団にもぐりこんだ
いまはとにかく 悪いイメージを振り払わなくては
だが 簡単には眠りにつけない
結局眠りに落ちたのかどうか 分からないまま時間が経って
朝になった
由香
クローゼットは
たしかに開いていた
警官
由香
わたしは意を決して 警察に電話した
警官
由香
由香
由香
由香
由香
警官
警官
警官
由香
由香
呼び鈴が鳴った
ドアを解錠する
警官
由香
警官
警官がつかつかと室内に入ってくる その背後にはもうひとり婦警がいる
警官
由香
警官
警官はLEDライトで クローゼットの中を照らしながら 異常がないか調べている
警官
由香
そのとき 婦警のほうがあっと声を出した
婦警
婦警
婦警
警官
わたしも思わずそれに見入った
たしかに床面には
なにかで擦ったようなキズがある
警官
警官
警官
警官
警官
婦警
クローゼットを持ち上げて 擦り跡の方に寄せるふたり
由香
クローゼットの奥には ガムテープと段ボールで塞がれた
なにかがあった
警官
警官は手袋をはめて 慎重にテープを剥がす
するとテープがつっかえていたのか 奥にあるものが
警官のほうへ勢いよく 落下した
婦警
警官
わたしでもひと目で理解できた
中にあったのは 腐りかけの人間の死体だった
警官
婦警
婦警は一旦場から離れる
異臭の立ち込める空間に わたしと警官が残った
警官
由香
警官は思いがけない セリフを口にした
警官
警官
警官はわたしをじろりと見た
由香
由香
警官
警官
由香
由香
まったく予想外の警官の言葉を 吟味する間もなく
警官は静かに話し始めた
警官
警官
警官
警官
警官
警官
警官
警官
警官
警官
警官
警官
警官
警官
由香
由香
警官
警官
警官
警官
警官
警官
由香
由香
由香
警官
警官
警官
警官がそう言い放ったときだった
婦警
婦警
警官
婦警
婦警
警官
警官
婦警
わたしはなにがなんだか わからないままだった
しかしこの場にいては 捜査の妨げになる
警察署まで行き 事情聴取を行うことになった
3日後
わたしはアパートに帰ってきた
帰しても問題ないと 許可が下りたらしい
由香
由香
警察署でなにをしたかも あまり覚えていないが
今の自分にとっては どうだっていいことだ
由香
由香
クローゼットが 開いている
由香
わたしは恐る恐る クローゼットに近づいた
クローゼットのなかには 変わったものはない
由香
由香
曖昧な記憶から 床の擦り傷という言葉が出てきた
床を見ると 少しはキズらしいものが見えるが
あまり関係ないことだろう
わたしはクローゼットを閉めた
次の瞬間
クローゼットがわたしに向かって 倒れてきた
咄嗟に逃げようとしたが
クローゼットの下敷きになった
由香
首から上は 天井を見上げる形になっている
視界にゆっくりと
赤黒い塊が入ってくる
リュウ
低い声でそう呟く化け物
誰?何故? なんのために?
それすら分からないまま 怪物は右手をわたしの首元に当てた
由香
怪物の手の力はどんどん強くなり
わたしの身体はカーッと熱くなった
呼吸ができなくなり
喉の骨が折れた音がした
Fin.
最後までお読みくださり ありがとうございます
この物語は フィクションです
コメント
2件