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カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデを出迎(でむ)えたのは、他ならぬ母の怒鳴り声だった。
耳馴染みのない音に、カエデの足はまるで床に貼り付けられたかのように、ぴたりと静止する。
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ母
スマートフォンを投げ捨てて、こちらへと向かってくる母は、引き攣(つ)った笑顔を浮かべている。
カエデは思わず1歩、後ずさった。
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデは心の底から湧き上がる喜びに、ぱっと顔を明るくした。
この状況を理解せず、未だに自分を擁護(ようご)してくれるなんて、都合がいいにも程がある!
2人ならば、ももばも桔花も、そして桔花を応援する者達も……まとめて潰してやれるかもしれない。
思わぬところからやってきた救世主を、カエデは力いっぱい抱きしめた。
カエデ
カエデ母
カエデ母
そう意気込む2人の背後。
玄関の入口……に付けられた郵便受けが、かたんと音を立てた。
坪井アカネ様
突然お手紙を差し上げる失礼をお許しください。
私はセラーノベルという小説投稿サイトで、『桔花』という名前で作家活動をしている、江田(えだ)桔平と申します。
貴方様のご息女(そくじょ)である、坪井カエデさんが、私の名を騙(かた)るアカウントを作り……
私を含め、他のユーザーを貶(おとし)めていた件は、存じ上げておりますでしょうか。
ありもしない暴言をでっち上げた事。 未成年と卑猥(ひわい)なやり取りをし、私の名誉(めいよ)を傷つけた事。
すべて、到底(とうてい)許せることではございません。
彼女の行為によって、多くの人々が被害を受け、深い傷を負いました。
坪井アカネ様におかれましては、ご息女の保護者として、彼女の行動に対して、責任と誠意を持って向き合うことを強く求めます。
つきましては、ご息女が引き起こしたトラブルの謝罪と解決に向けて、速やかに対応を開始していただきますようお願い申し上げます。
ご返答については、メール、電話、またはお手紙にてお待ちしております。
また、本件に関する詳細が必要な場合は、追ってお知らせいたします。
このような事になり、誠に遺憾(いかん)ではございますが、早期解決のためのご協力を切に願っております。
江田桔平
堅苦(かたくる)しい文章、知らない男の名前。
それでも、この文章を書いたのは、明らかに桔花だと分かる……分かってしまう。
カエデ
カエデはにじり寄る嫌な予感を、追い払うかのように叫んだ。
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ母
カエデ
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ
意気込む母の背を横目に、カエデはスマートフォンへと視線を向ける。
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
意気揚々(いきようよう)とセラーノベルの画面を開くカエデだが……
カエデ
カエデ
カツ、と爪が音を立てるほど強く、スマートフォンの画面を叩く。
その指の下には、桔花が今しがたしたと思わしい投稿があった。
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花
桔花の投稿には、瞬(またた)く間に多くのコメントが寄せられる。
それはほとんどが、桔花が男性だったということに対する驚きや、戸惑(とまど)いの声。
しかし、その中に、桔花を非難するコメントは一つも無かった。
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
拳を握りしめ、震える唇(くちびる)を噛み締める。
悔(くや)しさと怒りで煮(に)えたぎる心を、今すぐ桔花にぶつけてしまいたいが、それをすれば自分が不利になる。
ただでさえ、自分の個人情報は彼らに握られているのだ。 また『嫌がらせ』に使われるかもしれない。
それを思いつく程の冷静さはまだあった。
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
ところが。
カエデ母
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ
カエデ母
カエデ母
カエデ
カエデ
久々の母からの抱擁(ほうよう)を受け、その温もりを噛み締めるカエデ。
しかし、その様子を嘲笑うかのように、灰色の重たい雲が、窓の外から母娘を見下ろすのであった。