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江藤ルミエール
195
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#ミステリー
鬼霧宗作
61
【SYSTEM】
【SYSTEM】
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生徒ナンバー09・加藤麻冬。
金髪のセミロングに、大きくくっきりとした目。
どこかミステリアスな雰囲気を隠せない小悪魔的な存在で、言い寄ってくる男子が後を絶たない。
けれど、ただ目立つだけの少女ではなかった。
麻冬は成績優秀な才女でもあるが、それを周囲に強く見せようとはしない。
むしろ、少し軽く見られるくらいの方が楽だとさえ思っていた。
加藤麻冬
加藤麻冬
麻冬はテーブルの前に立った。
凪津美が死んだ場所。
玖玖瑠が倒れた場所。
瞳子が、唯一クリアして戻ってきた場所。
同じテーブルなのに、そこには死と生が並んでいるように見えた。
【SYSTEM】
ロボットの胸部モニターが点灯した。
“速い”。
“普通”。
“遅い”。
3つの文字が、目まぐるしく点滅する。
麻冬は息を詰め、タイミングを見計らってボタンを押した。
表示されたのは――
“遅い”。
加藤麻冬
ロボットの指がピンポン玉を摘み、中央のカップに入れて伏せる。
3つのカップが動き始めた。
1、2秒に1回ほど。
これまでのどの速度よりも明らかに遅い。
それでも、麻冬は油断しなかった。
加藤麻冬
加藤麻冬
カップが右へ。
中央へ。
左へ。
麻冬の目は、その動きを追い続けた。
やがて、ロボットの腕が止まった。
【SYSTEM】
加藤麻冬
麻冬は、真ん中のカップを指さした。
加藤麻冬
【SYSTEM】
ロボットが、真ん中のカップを持ち上げる。
その下には――
レモン色のピンポン玉があった。
加藤麻冬
声は小さかった。
けれど、その一言に、押し殺した安堵が滲んでいた。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
麻冬の月桂冠が、カチッと音を立てた。
輪が緩む。
麻冬は震える手で外し、床に落とした。
加藤麻冬
麻冬は生徒たちの方へ戻った。
だが、拍手も歓声もなかった。
何人かの生徒が、麻冬を見ていた。
よかったね、ではない。
羨ましい、でもない。
次は自分かもしれない。
そんな目だった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
生徒ナンバー31・牧原志穂。
身長は170センチ後半で、学年一の長身を誇る。
学外のバレーボールサークルに所属し、体格にも運動神経にも恵まれていた。
5つ年下の弟がいる。
本人は認めたがらないが、極度の“ブラコン”だった。
牧原志穂
牧原志穂
志穂は長い脚で、テーブルの前へ進んだ。
背が高いぶん、胸部モニターもよく見える。
けれど、それが安心に繋がるわけではなかった。
月桂冠は、誰の頭にも同じように食い込む。
背が高くても、低くても。
強くても、弱くても。
失敗すれば、死ぬ。
ただそれだけだった。
【SYSTEM】
ロボットの胸部モニターが点灯した。
“速い”。
“普通”。
“遅い”。
志穂は一瞬息を止め、ボタンを押した。
表示されたのは――
“普通”。
牧原志穂
牧原志穂
ロボットがピンポン玉を中央のカップに入れ、伏せる。
3つのカップが左右に動き始めた。
“普通”。
その言葉ほど、優しくはなかった。
1秒間に1、2回ほど。
目で追えなくはない。
けれど、少しでも気を抜けば見失う。
志穂は、バレーボールで鍛えた視線の使い方を思い出した。
ボールを追う。
相手の腕を見る。
重心を見る。
次の動きを読む。
今、追っているのはボールではない。
自分の命だった。
やがて、カップの動きが止まった。
【SYSTEM】
牧原志穂
志穂は、自分から見て左のカップを指さした。
牧原志穂
【SYSTEM】
ロボットの右腕が、そのカップをゆっくり持ち上げる。
牧原志穂
カップの下には――
ピンポン玉があった。
牧原志穂
その声は、ほとんど息に近かった。
膝から力が抜けそうになる。
けれど、志穂は踏み止まった。
ここで崩れたら、戻れなくなる気がした。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
カチッ。
月桂冠が緩み、床へ落ちた。
牧原志穂
志穂は床に転がった月桂冠を見下ろした。
ついさっきまで、自分の命を握っていたもの。
今は何事もなかったように転がっている。
助かった。
そう理解した瞬間、胸の奥にじわりと熱が戻ってきた。
だが、すぐに思い出す。
まだ終わっていない。
自分は助かっただけだ。
この試練は、3名が死亡するまで続く。
志穂は、生徒たちの方へ戻った。
誰も祝福しない。
誰も責めない。
ただ、助かった者と、月桂冠をつけたままの者との間に、見えない溝ができていく。
菜々美は、その溝を見ていた。
瞳子。
麻冬。
志穂。
助かった生徒の名前が増えていく。
その一方で――
死んだ生徒の顔は、もう何人かの中で薄れ始めている。
菜々美の耳には、まだ残っていた。
「ウサコちゃあん」
あの幼い叫び声だけが、白い部屋のどこかに貼りついているようだった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
コメント
1件
うわああ麻冬ちゃんも志穂ちゃんもクリアおめでとう…!😭💕 それぞれの緊張感がめっちゃ伝わってきて、読んでる間ずっと息止めてたよ…。「遅い」を引いた麻冬ちゃんの慎重な判断も、バレーの動体視力で勝負した志穂ちゃんの覚悟も、どっちもかっこよかった✨ でもクリア後の誰も祝福しない空気がリアルで怖い…まだ3人死亡まで続くってのもゾッとするし、菜々美ちゃんの耳に残る「ウサコちゃあん」が切なすぎるよ…次の展開が気になる!