主
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主
昼間はまだ暖かい気候が続いてるけど、日が沈むのがいつの間にか早くなった。
いつも行くお気に入りの雑貨屋さんに寄り、 本屋さんで新刊の漫画と雑誌も買う。ついでに文具も。
最後にプリクラを撮って、ファストフードで日が沈むまで二人で話し続けた。
気がつくと7時を過ぎていて、あたりはずいぶん暗くなっていた。 気温がぐっと下がり肌寒さを覚える。
そろそろ帰ることにして店を出ると、ちょうど回送電車がそばの線路を通り過ぎて一陣の風が僕たちの間を通り抜けた。
駅に戻ると、帰る方向の違う僕たちは別々のホームに向かった。
莉犬が電車に乗り込むのを、向かいのホームから見送って、 僕の次にやってきた電車に乗る。
そこはすっかり暗くなっていて、窓には僕の顔が映りこんでいる。
さっきまで莉犬の整った顔立ちを見ていたからか、 目の前にある僕の顔がいつも以上に平凡としたものに感じる。 特にこれと言った特徴も魅力もない顔だ。
不細工ではないけれど、 可愛いとかきれいだとか言われることはめったにない。
自分でいいところを挙げるなら、やや色白でニキビ一つない肌くらいだろうか。まあ、あと目がきれいと言われることがある。
背は、163㎝と低めだし、体には程よくお肉がついている。 髪も、ちょくちょく染めてるから痛んでるところもあるし。。。
でも、この容姿にさほど不満は抱いてない。 ただ客観的に見て、やっぱり不思議だと思った。
なんで、僕なんだろう。
カバンからさとみ君からもらった手紙を取り出した。
返事がなかったことに落ち込むほど、これは本気の告白だった、らしい。
ノートの切れ端の、しわくちゃのこれが。
綺麗な紙に書く方がそれらしく見えるのに、 と思うと同時に、それほど必死だったのかとも思える。
“好きだ”
この3文字に、彼はどれほどの勇気を込めたのだろう。
どんな気持ちで返事を待ってたのだろう。
だれかに告白なんてしたことのない僕には、想像もつかない。
たった3文字の短い言葉には、彼の思いが詰まってるんだ。 そう思うと、僕に向けられた好意が、ダイレクトに伝わってきて、 今更胸がぎゅうっと締め付けられる。
僕は、自分の思いをこんなにわかりやすい文字にして人に伝えたことはない。
ななもり先輩と付き合ったときだって、告白される前からななもり先輩のことが気になってたことを僕は一度も先輩に伝えなかった。 別れる時ですら、僕は自分の気持ちを言うことはできなかった。
さとみくんは、友達にどうしたのかといわれるほど気を落としていた。
それほど彼はこの手紙に思いを込めてくれたのだろう。
一度は無視しようと思ったけど、それはやっぱりさとみ君に対してあまりに失礼だ。
またすれ違ったときに声をかけられたら困るっていうのもあるけれど。
ころん
手紙を折りたたんで、窓に映る自分の先にある夜空を眺めながら呟いた。
でも、なんて返事すればいいんだろう。
僕は噂でしか彼を知らない。
こういう性格の人だろうな、と勝手に判断してなんとなく苦手意識を抱いてる。 その気持ちは今も変わらないので、莉犬が言ったように、 “とりあえず付き合ってみる”という選択肢はもちろんない。
つまりお断りの内容を書かなければならないというわけだ。 断るなんて、僕が一番苦手としている行為だけれど、手紙ならできそうだ
何とか返事を書いてさとみくんに届けなくちゃ。
そう決心すると、ふと大事なことに気が付いた。
そう、返事を書く。
つまり、さとみ君の手に渡らなくちゃいけない。
ころん
さとみ君とはクラスが違うどころか、校舎も違う。
理系コースの校舎に足を踏み入れるのは移動教室の時くらいだ。
何もない時に一人で行くと、きっと目立ってしまう。
誰もいない時間を狙って、彼のクラスに忍び込み机に張り付けるのはどうか。
いや、いつだれがやってくるかわからない。
危険すぎる。
万が一誰かに見られたら完全に不審者だ。
さとみ君のストーカーだと思われるだろう。
手渡しなんて、もっと無理。 自分から目立ちに行ってどうする。
どうしよう。全く方法が思いつかない。
一週間待てば、選択授業がある。 その時に返事を入れることはできるけど、 それまで待ってくれるだろうか。
今日みたいに、顔を合わせてしまったときに話しかけられるかもしれない。
それに、それまでさとみ君は落ち込み続けるかも。
思いがけない大問題に返事の内容どころではなくなって頭を抱えた。
主
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コメント
3件
60字以内に留めなきゃwwとりあえず今日も最高でした!次回も楽しみにしてます✨
続き楽しみにしてます✨