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かまくびさんって知ってる?
知らない。なんなんだそれ?
この学校の怪談の1つだよ
午前2時に、体育倉庫の中にいると、 低い声が聞こえてくるんだ
「くびりたいやつはいるか?」
って
その時に 殺したいほど憎い人の 名前を言うと
首をねじって 殺してくれるんだって──
一條恭平
二葉桐男
俺がばっさり切り捨てると、 二葉はがくっと肩を落とした。
二葉桐男
二葉桐男
一條恭平
二葉桐男
先生
壇上の先生に叱りつけられ、 俺と二葉は縮こまった。
ここは中高一貫のマンモス校『明生学園(めいじょうがくえん)』通称明学。
この俺『一条恭平(いちじょうきょうへい)』は、この春から外部編入で明学の高頭部にやってきた。
最初のオリエンテーションでとりあえず声をかけたのが、隣に座っていた『二葉桐男(ふたばきりお)』。
二葉は内部進学組で、この学校のことはおおよそ分かっているというので、色々話を聞いていたのだ。
二葉桐男
一條恭平
オリエンテーションが終わり、俺は二葉に校内を紹介されながら、無茶振りしたことを謝っていた。
先程の怪談は、先生の話が退屈になってしまい、『なんか面白い話とかないのか?』と二葉に聞いて始まった話だ。
一條恭平
一條恭平
一條恭平
二葉桐男
一條恭平
一條恭平
二葉桐男
一條恭平
二葉桐男
二葉の冷ややかな視線が俺を貫く。
持ち前の気安さを活かし、知り合ってから数日で割と打ち解けてきたが、その分彼の中での俺の評価はダダ下がりである。
二葉桐男
切り替えるようにコホンと咳払いをしてから、二葉はそう切り出した。
二葉桐男
一條恭平
二葉桐男
二葉桐男
二葉桐男
一條恭平
二葉桐男
二葉桐男
一條恭平
二葉桐男
一條恭平
二葉桐男
一條恭平
下らない話を続けながら、俺達は廊下を歩いていく。
???
そんな俺たちが、後方からじっと投げ掛けられている視線に気付くことは、なかった。
その後、二葉に敷地内を紹介してもらう傍ら、面白そうな部活をいくつか見て回ったものの、興味を惹かれるものはなかった。
また明日回ろう、という約束を取り付け、俺達は校門前で別れる。
しかし……。
一條恭平
はたと思い出した俺は、仕方なく引き返す。
忘れたのは入学前の課題。合格発表日にパンフレットやら入学書類やらと一緒に貰った奴だ。
締切は明日までだ。流石に入学当初から課題をすっぽかすわけにも行かない。
ここはただっぴろいせいで、戻るのも大変なんだけどな……。 ズボラな自分を恨みながら、まばらになってきた校舎の中へと戻った。
再び校舎の外に出た時には、辺りはだいぶ暗くなってしまっていた。
というのも、課題をどこにやったか忘れ、しばらく机の中を漁っていたからである。結局見たくもない物理の教科書の後ろに挟まっていた。
電灯はまだついておらず、土地勘がないこともあってか、まるで異世界にのみこまれてしまったようにも感じる。
一條恭平
少し早足で歩き出したその時、
???
校舎の陰から、物々しい叫び声が聞こえてきた。
一條恭平
思わず、声がした方へと歩き出す。
声の元は、体育館……いや、柔剣道場っぽい施設の裏側。
足音を立てないように、こっそり声の方に近づく。
物陰から覗いてみると、1人の女子を何人かの上級生が取り囲んでいた。
上級生A
女子生徒
上級生B
上級生C
女子生徒
上級生A
一條恭平
俺と同い年であろう女子生徒は、周りの上級生より頭半個分背が高いものの、威圧的な態度に圧されてか、反論もできていない。
誰がどう見ても、難癖をつけて彼女から金を巻き上げようとしていることは明らかだった。
先生を呼んでくるか、それとも俺が止めに入るか……悩んでいたその時。
スッ──
小さな風が吹いたかと思うと、俺の後ろから、1人の女子がすっと横を通り過ぎた。
すれ違った瞬間に、俺にだけ聞こえる大きさで、
???
一條恭平
彼女は俺にそう告げると、そのまますたすたと向かっていった。
???
上級生A
一條恭平
俺が止める暇もなく、彼女は上級生たちの元へ向かい、ためらいなく声をかける。
???
上級生A
上級生B
上級生C
彼女は毅然とした態度で歩み寄るが、上級生達はそれでひるむこともなく、口汚い言葉を次々と浴びせてくる。
一條恭平
一條恭平
俺が彼女の身を心配した時……彼女が右手に、大きな棒状の『何か』を持っていることに気付いた。
何を持っているのか……目を凝らしたその瞬間、
パッ
校内の電灯が一斉に点灯した。 彼女たちの体が、まばゆい光で照らされる。
光の強さに一瞬だけ視界が真っ白になったものの、すぐに目が慣れて、彼女達の姿がはっきりと見えるようになる。
そこで俺は気づいた。彼女が右手に持っていたのは、1メートルを超える長さの……。
一條恭平
間違いなかった。 彼女は右手に、大きめのスコップをしっかりと持っていたのだ。
砂場や園芸で使う奴じゃない。土木作業で使われるような本格的な奴だ。 ここが工事現場ならともかく、今の彼女には明らかに似合わない。
上級生A
女子生徒
いじめられていた女子はもちろん、上級生たちもさすがにたじろぐ。
その場に明らかに不釣り合いな、物々しいスコップに、一斉に注目が集まる。
一方、彼女はあっけらかんとした態度で、
???
と言って、一番近い位置にいた上級生の近くまで向かい、
スコップを振り上げた。
ズガッ!!
上級生A
上級生の悲鳴が響いた。
彼女のすぐ目の前を、スコップの尖った先端が上から下へと通り過ぎ、そのままアスファルトの地面に激突したのだ。
一條恭平
???
彼女はそう言うと、スコップをゆっくりと持ち上げ、再び頭上へと持ち上げる。
上級生A
上級生B
???
スコップを持ち上げたまま、彼女はゆっくりと、後ずさる上級生たちに近づいていく。
???
上級生C
上級生B
後方にいた上級生2人が、脱兎のごとく逃げ出す。
だが、彼女の目の前の上級生は、腰が抜けたのかへなへなと座り込んでしまう。
今彼女がスコップを振り下ろしたら──!
一條恭平
俺は物陰から飛び出し、慌てて彼女たちのもとに駆け寄る。
今まさに振り下ろそうとしていた彼女の背後に迫り、スコップを奪い取ろうと、その手を勢い良く掴んだ。
一條恭平
上級生A
固まっていた俺の意識は、上級生の悲鳴でようやく動き出した。
気づけば、座り込んでいた上級生も、ほうほうの体で校舎の向こうへと逃げ出していくところだった。
一條恭平
奪い取ったスコップを、ゆっくりと地面に置く。カシャンと冷たい音が小さく響いた。
一條恭平
一瞬だったが、はっきりと見えた。
彼女と、殺されかけていた上級生の間に、割り込むように……
首の折れ曲がった男が立っていた。
普通の人間なら、とうに死んでいる角度で……。
???
スコップの土でもついていたのか、彼女はぱんぱんと2、3回手を叩いてから、ぐいっとのびをする。
そして、俺の方を振り返って、
???
一條恭平
???
ついさっきまでの狂気はなんだったのかとばかりに、ふくれっ面で俺に怒り始めた。
一條恭平
???
一條恭平
???
一條恭平
彼女の演技力……というか行動力に俺は脱帽する。
というか……どうして彼女はスコップを持ってたんだ? 扱い方は手慣れていたし、その辺で拾ったものではないだろう。一体どういう理由で……。
???
声を失って立ち尽くしていたいじめられっ子に、彼女は優しく声をかけるものの、
女子生徒
タタタタタッ!
我に返ったのか、お礼を言いながら、上級生たちの倍の速度で走り去っていった。
一條恭平
???
ふん、と鼻を鳴らしてから、彼女は俺が落としたスコップを拾い上げる。
???
一條恭平
三国綾乃
彼女……三国は、軽く微笑みながら、こちらにすっと右手を差し出す。 俺は彼女の顔をまじまじと眺めた。
改めて見ると、彼女はかなりの美人だ。目鼻立ちの整った清楚な顔に、高級な織物のような艶のある髪。
良い所の御令嬢のような、気品に満ちた雰囲気をまとっている。
その一方……日本人離れした赤い瞳からは、放射性物質のような、触れてはいけない危うさを孕んだ美しさが現れていた。
ぶっちゃけてしまえば、顔は良いが目だけ怖い。あんなことがあったからなおさらである。
三国綾乃
一條恭平
彼女の美しさ(と怖さ)に気を取られ、握手を求められていたのを忘れていた。
だが……これからよろしくと言われても、この学校じゃ同じ部活やクラスでも無い限り、もうほとんど接点がなくなると思うのだが。
まあ、拒否するのもなんだし、一応応えておくか。 そう思った俺が右手を差し出し、スラリとした彼女の細い手を握ろうとした瞬間、
三国綾乃
三国はさっと、手を引っ込めた。
一條恭平
三国綾乃
一條恭平
全身が固まった。彼女にも……あの男が……。
三国綾乃
三国綾乃
三国綾乃
三国はスコップを背負って、俺の横を通り、校門の方へと歩いていく。
三国綾乃
そう言い残してから、三国は角を曲がり、校舎の陰へと消えた。
後には俺1人が残される。
大して暑くもないのに、じっとりとした嫌な汗が背中を伝った。
一條恭平
電灯の光の中、思わずそんな疑問が口をついて出てくるが、応えてくれる人は誰もいなかった。