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お節介アゲハと弱虫ヒナタ

第37話 - お見舞いと食事

200

2022年12月15日

#ドラマ

#青春恋愛

#高校生

#一次創作

#第3回テノコン

×××

椅子に座りうつむく杏樹に凛太郎が優しく語りかける

揚羽凛太郎

話したい事って？

眞琴杏樹

私・・・

眞琴杏樹

もう一度ちゃんと
謝りたくって

眞琴杏樹

先輩にとんでもない事
しちゃったから・・・

揚羽凛太郎

大丈夫だって！

揚羽凛太郎

まぁ、ホラ！

揚羽凛太郎

俺もこの通り
ピンピンしてるしさ！

眞琴杏樹

先輩・・・

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

揚羽凛太郎

泣くなって！な？

揚羽凛太郎

俺は大丈夫だから！

眞琴杏樹

先輩・・・

揚羽凛太郎

でもさっき
龍也も言ってたけど

揚羽凛太郎

眞琴が警察に捕まっちゃう！
なんて事はないんだよな？

眞琴杏樹

う、うん・・・

眞琴杏樹

みんなが、先輩は
私の自殺を阻止
しようとして

眞琴杏樹

怪我しただけだって
言ってくれて──

眞琴杏樹

私が先輩や奏星さんを
監禁した話は
黙っててくれたから

揚羽凛太郎

そっか・・・
なら良かったよ

眞琴杏樹

でも本当にいいの？

揚羽凛太郎

え？

眞琴杏樹

だって私が
しちゃった事って──

揚羽凛太郎

まぁ、実際に俺が眞琴の
自殺を阻止したってのは
事実なわけだし・・・

揚羽凛太郎

それに──

眞琴杏樹

それに？

揚羽凛太郎

人間なんだから
間違いはあるだろ？

眞琴杏樹

先輩・・・

揚羽凛太郎

少なくとも俺は
一度も間違いを犯さずに

揚羽凛太郎

生きてきたって奴は
この世にいないって
思ってる・・・

揚羽凛太郎

母さんだって

揚羽凛太郎

眞琴のお母さんだって

揚羽凛太郎

散々間違ってきたはずだ

眞琴杏樹

・・・・・

揚羽凛太郎

色んな人に迷惑を
かけてきた筈だ

揚羽凛太郎

一回間違っただけで

揚羽凛太郎

一回だれかに
迷惑をかけただけで

揚羽凛太郎

全てを投げ出すなんて真似

揚羽凛太郎

眞琴にはしてほしく無い

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

揚羽凛太郎

だから自分を
責めるのはやめてくれ

揚羽凛太郎

誰も眞琴のことを
恨んでなんてないからさ

揚羽凛太郎

な？眞琴

眞琴杏樹

ありがとう先輩

それからしばらく凛太郎と杏樹は

杏樹がお見舞いに持ってきたお菓子を一緒に食べながら数年ぶりの日常会話を楽しんでいた

揚羽凛太郎

なんか久々だよな

揚羽凛太郎

こうして眞琴と話すの

眞琴杏樹

うん、そうだね

揚羽凛太郎

学校はどんな感じなんだ？

揚羽凛太郎

ちゃんと行けてるのか？

眞琴杏樹

実はあんまり
行けてなくて・・

揚羽凛太郎

そうなのか？

眞琴杏樹

ずっと不登校で

眞琴杏樹

出席日数も
足りないみたいだし

眞琴杏樹

いっその事辞めて──

揚羽凛太郎

いや、まだそう決める
のは早すぎるって！

揚羽凛太郎

まだ、なんかホラ
方法があるかもしんないし

眞琴杏樹

もう、最後まで
話を聞いてよ

揚羽凛太郎

え？

眞琴杏樹

辞めてから──

眞琴杏樹

定時制に行こうかな？
って思ってるんだ

揚羽凛太郎

定時制？

揚羽凛太郎

定時制ってアレだろ？

揚羽凛太郎

夜間に通う高校だよな？

眞琴杏樹

うん・・・

揚羽凛太郎

ならバイトしながら
学費稼ぐ感じ？

眞琴杏樹

まぁ、バイトだけじゃ
学費全部ってなると
厳しそうだから

眞琴杏樹

少しはお母さんに
協力してもらう
事になりそう・・・

眞琴杏樹

まぁ、バイトは
するつもりだけど

揚羽凛太郎

でもそれって
逆に大変じゃ無い？

眞琴杏樹

確かにそうだけど

眞琴杏樹

自分を変えるためだから

揚羽凛太郎

すげーな

揚羽凛太郎

俺なんか母さんに
頼りっきりだから

揚羽凛太郎

尊敬するよ

眞琴杏樹

そんな事無いよ

眞琴杏樹

私がこう思えたのも

眞琴杏樹

みんなが私の事を
庇ってくれたからだから

眞琴杏樹

それに──

眞琴杏樹

全部私が悪いから

揚羽凛太郎

まだ言ってるよ

揚羽凛太郎

だから今回の事は──

眞琴杏樹

そうじゃないの・・・

揚羽凛太郎

え？

揚羽凛太郎

どういう意味？

眞琴杏樹

私のお母さんね──

眞琴杏樹

私が８歳の時に
お父さんと離婚したの

揚羽凛太郎

え？そうだったのか？

眞琴杏樹

先輩には
言ってなかったから

揚羽凛太郎

確かに眞琴の口から
お父さんの話が
出てこないから

揚羽凛太郎

何かあったのかな？
とは思ってたけど

眞琴杏樹

それからお母さんは
私の事を女手一つ
で
育ててくれたの

揚羽凛太郎

・・・・・

眞琴杏樹

朝から晩まで
私を養うために
働き詰めだった・・

眞琴杏樹

でも・・・

揚羽凛太郎

でも？

眞琴杏樹

家で一人で居る
私は寂しかった・・・

揚羽凛太郎

眞琴・・・

眞琴杏樹

兄弟もいないし
ずっと寂しかった・・

眞琴杏樹

そりゃお母さんが
働いてるのは
私を育てる為だから

眞琴杏樹

仕方がないって
頭では分かってたけど

眞琴杏樹

やっぱり寂しかった

揚羽凛太郎

・・・・・

眞琴杏樹

たまにお母さんと
お出掛けできる！
って日でも

眞琴杏樹

片付けなきゃいけない
仕事があるからって

眞琴杏樹

結局どこにも行けない
って事が何度もあった

揚羽凛太郎

・・・・・

眞琴杏樹

でもそれを口に
するわけにもいかないし

揚羽凛太郎

まぁ、だよな・・・

眞琴杏樹

学校に仲がいい
友達も居なかったし

眞琴杏樹

私はこのままずっと
一人なんだって思ってた

眞琴杏樹

そんな時に電車で
先輩と偶然出会った・・

揚羽凛太郎

・・・・・

眞琴杏樹

私の事を気にかけて
くれる人がまだ居るんだって

眞琴杏樹

先輩に出会えて
そう・・思ったの・・

揚羽凛太郎

眞琴・・・

眞琴杏樹

先輩とずっと
一緒に居れれば

眞琴杏樹

私は寂しかった生活から
抜け出す事が出来る

眞琴杏樹

もう一人で
孤独に耐える必要はない

眞琴杏樹

そう・・思ったの・・・

揚羽凛太郎

・・・・・

眞琴杏樹

そして──

眞琴杏樹

先輩がもう私と同じ電車で
通学しないって話を
偶然に聞いちゃって

眞琴杏樹

私はまた、あの寂しかった
生活に逆戻りしちゃうって
思ったら・・・

眞琴杏樹

不安に押しつぶされ
そうなくらいに
辛かった・・・

揚羽凛太郎

・・・・・

眞琴杏樹

だから・・・

眞琴杏樹

先輩にあんな事・・・

眞琴杏樹

だから・・・

眞琴杏樹

全部私が悪いの・・・

揚羽凛太郎

眞琴・・・

眞琴杏樹

私が寂しい思いを
したくないって
ワガママだったの・・

眞琴杏樹

全部・・全部

眞琴杏樹

私が悪いの・・・

揚羽凛太郎

そりゃ・・・

揚羽凛太郎

寂しかったよな・・

眞琴杏樹

え？

揚羽凛太郎

俺も父さんが病気で
死んでるからさ・・

揚羽凛太郎

眞琴の寂しいって気持ち

揚羽凛太郎

分かるよ・・・

眞琴杏樹

先輩・・・

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

揚羽凛太郎

寂しかったよな？

眞琴杏樹

う、うん・・・

眞琴杏樹

寂しかった・・・

揚羽凛太郎

ごめんな・・・

揚羽凛太郎

俺がもっと眞琴の事を
考えてやれる大人だったら

揚羽凛太郎

眞琴にこんな事を
言わせずに済んだのに

揚羽凛太郎

やっぱ俺って
ダメダメだな・・

眞琴杏樹

違うよ！

眞琴杏樹

先輩は悪くなんかない！

揚羽凛太郎

眞琴・・・

眞琴杏樹

私・・先輩と一緒に
居れて幸せだったよ

眞琴杏樹

楽しかった・・・

揚羽凛太郎

眞琴・・・

眞琴杏樹

私、気づいてたんだ

眞琴杏樹

先輩が私に恋愛感情を
抱いてないって事・・

揚羽凛太郎

・・・・・

眞琴杏樹

でもそれを認めちゃったら

眞琴杏樹

私・・孤独に
なっちゃうと思って

眞琴杏樹

ずっと目を背けてきたの

揚羽凛太郎

・・・・・

眞琴杏樹

でも・・・

眞琴杏樹

もう、先輩の事は
諦める・・・

揚羽凛太郎

眞琴・・・

眞琴杏樹

奏星さんの事・・・

眞琴杏樹

好きなんでしょ？

揚羽凛太郎

・・・・・

眞琴杏樹

気を遣わなくていいよ

揚羽凛太郎

ごめん・・・

眞琴杏樹

ううん・・・

眞琴杏樹

謝らなくていいよ

眞琴杏樹

分かってたから・・・

揚羽凛太郎

（眞琴・・・）

眞琴杏樹

でも最後に──

眞琴杏樹

ひとつだけ──

眞琴杏樹

私のお願い──

眞琴杏樹

聞いてくれる？

揚羽凛太郎

お願い？

揚羽凛太郎

お願いって──

凛太郎が全てを言い切る前に杏樹は身を乗り出し

凛太郎に口付けをした

揚羽凛太郎

眞琴・・・

眞琴杏樹

私のファーストキス

眞琴杏樹

先輩に貰って欲しかった

揚羽凛太郎

眞琴・・・

眞琴杏樹

じゃあ・・先輩

眞琴杏樹

私・・行くね

揚羽凛太郎

待ってくれ眞琴！

凛太郎はベッドから身を乗り出し杏樹を引き止めようとする

眞琴杏樹

ダメだよ！先輩！

眞琴杏樹

先輩には奏星さんが
居るんだから・・・

揚羽凛太郎

眞琴・・・

眞琴杏樹

奏星さんの事・・・

眞琴杏樹

大事にしてあげてね

眞琴杏樹

先輩・・・

眞琴杏樹

さようなら・・・

揚羽凛太郎

眞琴！！

病室から去る杏樹の目にはうっすらと涙が浮かんでいた

眞琴杏樹

（ダメ・・・）

眞琴杏樹

（泣いちゃダメ・・・）

眞琴杏樹

（ここで泣いたら──）

眞琴杏樹

（先輩に聞こえちゃう・・）

眞琴杏樹

（でも・・・）

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

眞琴はその場に座り込み大粒の涙を流す

眞琴杏樹

う、うう・・・

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

病院には杏樹の啜り泣く声が聞こえていた

揚羽凛太郎

（俺は・・バカだ・・）

揚羽凛太郎

（女の子一人を泣かせておいて）

揚羽凛太郎

（何がお節介だよ・・・）

揚羽凛太郎

（何が人助けだよ・・・）

揚羽凛太郎

（バカ言ってんじゃねーよ）

揚羽凛太郎

（全然助けれてねーじゃん）

揚羽凛太郎

（逆に辛い想いさせて
悲しませただけじゃねーか）

揚羽凛太郎

（サイテーだ・・俺って）

揚羽凛太郎

（今すぐ眞琴に
駆け寄ってやりたいけど）

揚羽凛太郎

（今行けばまた眞琴を
苦しめるかもしれない）

揚羽凛太郎

（父さんみたいに誰かを
助けれる大人になりたくて）

揚羽凛太郎

（今まで散々色んな人に
お節介焼いてきたけど）

揚羽凛太郎

（結局俺に出来る事なんて
何ひとつなかった・・・）

揚羽凛太郎

（俺なんて・・・）

翌日

病室では果物の籠盛りを手にしてお見舞いに来ていた奏星と凛太郎が談笑していた

日向奏星

ねえ？聞いてる？

揚羽凛太郎

ああ、そうだな・・・

日向奏星

りんご剥いて
あげようか？

揚羽凛太郎

ああ、そうだな・・・

凛太郎は何か考え事をしているのか奏星の問いかけにそっけない返事をする

日向奏星

・・・・・

日向奏星

今日・・寒いね

揚羽凛太郎

ああ、そうだな・・・

日向奏星

今日・・暑いね

揚羽凛太郎

ああ、そうだな・・・

日向奏星

もう！凛くん！

揚羽凛太郎

わぁ！びっくりした

声を荒げる奏星に凛太郎の体がビクリと反応する

揚羽凛太郎

なんだよ！急に
大声出して

日向奏星

急にじゃないじゃん

日向奏星

私が話してるのに
ずっと上の空じゃん

揚羽凛太郎

あ、ごめん・・・

揚羽凛太郎

ちょっと考え事
しててさ・・・

揚羽凛太郎

ぼーっとしてた

日向奏星

もう！せっかく凛くんと
二人きりで話せると思って

日向奏星

楽しみにしてたのに

揚羽凛太郎

ごめんって・・・

揚羽凛太郎

そんな怒るなよ・・・

日向奏星

何考えてたの？

揚羽凛太郎

あ、いや・・それは

揚羽凛太郎

ちょっと・・・

日向奏星

私に言えない話？

揚羽凛太郎

そうじゃないんだけど

日向奏星

もしかして、やっぱり

日向奏星

私が別れようって
言っちゃった事──

日向奏星

まだ怒ってる？

揚羽凛太郎

いやいや、大丈夫だって

揚羽凛太郎

怒ってなんかないし

揚羽凛太郎

俺が怒る立場じゃないし

日向奏星

じゃあ何考えてたの？

揚羽凛太郎

その・・・

日向奏星

まぁ、話したくないなら

日向奏星

無理には聞かない

揚羽凛太郎

奏星・・・

日向奏星

凛くんが元気で
居てくれるなら

日向奏星

それでいい

揚羽凛太郎

ちょっ、急に
やめろよな・・・

揚羽凛太郎

そういう事言うの

揚羽凛太郎

て、照れるだろ・・・

凛太郎は頬を桜色に染めながら恥ずかしそうに目線を逸らす

日向奏星

そう！そう！

揚羽凛太郎

ん？どうした？

日向奏星

今朝、杏樹さんが
お母さんと一緒に
ウチに来たよ

揚羽凛太郎

え？眞琴が？
奏星ンチに？

日向奏星

うん

日向奏星

昨日の事を改めて
謝りに来たんだって

揚羽凛太郎

そうだったのか・・

数時間前

眞琴杏里

この度は誠に
申し訳ありませんでした

眞琴杏樹

申し訳ありせんでした

杏樹と杏里が日向家の面々に深々と頭を下げる

日向康文

まぁ！まぁ！

日向康文

揚羽くんだって
無事だったわけですし

日向康文

奏星や綾星も
娘さんを許してる
ようですから

日向康文

ホラ！頭を上げてください

眞琴杏里

いえ！そういう
訳にはいきません！

日向志津香

杏里さん？

眞琴杏里

は、はい・・・

日向志津香

過ぎた話を言うのは
やめにしましょう

眞琴杏里

ですが・・・

日向志津香

それに、私も
杏里さんには
謝りたいですし

眞琴杏里

志津香さんが？私に？

日向志津香

ほら、その・・・

杏里は自分たちが謝らなければならない立場なのにもかかわらず

逆に謝りたいと言う志津香を疑問に思う

眞琴杏里

どういう意味ですか？

日向志津香

ほら、あの時・・・

日向志津香

初対面だったのに
私ったら──

日向志津香

思いっきり杏里さんを
引っ叩いちゃって

日向康文

え？そんな事したのか？

康文は目を見開いて驚く

日向志津香

それは・・その・・

日向志津香

あはは・・・

日向康文

おい！おい！

日向綾星

あの時のママ
凄く怖かったよ

日向志津香

ちょ！綾星！

日向康文

それはお前・・
いくらなんでも

日向志津香

だってしょうが
ないじゃない

日向志津香

あの時はなんというか

眞琴杏里

いいんです

眞琴杏里

私が間違って
いたんですから

日向志津香

杏里さん・・・

眞琴杏里

それに私は
志津香さんには
感謝してるんです

眞琴杏里

目を覚まして
いただきましたから

眞琴杏里

ダメなは母親からは
卒業しなきゃ！って

眞琴杏里

自分の間違いを
悔い改める事が
できましたから

日向志津香

・・・・・

眞琴杏里

これからは杏樹と
手を取り合って
生きていくつもりです

眞琴杏里

きちんと娘の声に耳を傾けて

眞琴杏里

二人三脚で
生きていくつもりです

眞琴杏樹

お母さん・・・

眞琴杏里

そんな当たり前な事に
今更ながら気づくような
ダメな母親ですけど

眞琴杏里

精一杯やって行きます

日向志津香

杏里さんなら出来ますよ

眞琴杏里

だといいんですが・・

日向志津香

こういう時は
自信持って

日向志津香

「はい！できます！」

日向志津香

って言うんですよ

眞琴杏里

志津香さん・・・

日向奏星

あと、もう今日から
引っ越すんだって

揚羽凛太郎

え？そんな急に？

日向奏星

杏樹さんも

日向奏星

「昨日お見舞いに
行った時に」

日向奏星

「先輩には別れを
告げることができたから」

日向奏星

「思い残す事は
ありません」

日向奏星

って言ってたよ

揚羽凛太郎

眞琴が・・・

日向奏星

だから心配しないで
くれって伝えてくれ
って言われた

揚羽凛太郎

そっか・・・

日向奏星

綾星にも何度も
謝ってたよ

揚羽凛太郎

綾星ちゃんは
なんだって？

日向奏星

「揚羽お兄ちゃんと
お姉ちゃんが」

日向奏星

「別れないで済むなら
全然問題ないから許す」

日向奏星

って言ってた

揚羽凛太郎

あはは・・・

揚羽凛太郎

綾星ちゃんらしいな

ガラガラ

スライドドアが開き龍也と美咲が病室に入ってくる

姫川美咲

やっほ！揚羽くん！

和久井龍也

見舞いに来てやったぜ！

揚羽凛太郎

龍也！姫川！

揚羽凛太郎

わざわざ悪いな！

和久井龍也

どうせ明日
退院するんだから

和久井龍也

お見舞いは別に
いいんじゃね？って
俺は言ったんだけどな

姫川美咲

何言ってんのよ！

姫川美咲

揚羽くんの事が
心配だから

姫川美咲

お見舞いに行きたい
って言い出したのは
龍也の方でしょ！

和久井龍也

バカ！それは言わねーって
約束しただろーが！

日向奏星

ふふふ

揚羽凛太郎

相変わらず
仲がよろしいこって

姫川美咲

あ！奏星も
来てたんだね！

姫川美咲

って当たり前か！

和久井龍也

まぁ、リンの
彼女だからな！

龍也は奏星が持参してきた果物の籠盛りを指差し

和久井龍也

ホラ！やっぱり
要らなかっただろ？

和久井龍也

お見舞い！

姫川美咲

やっぱ奏星なら
持ってきてたか

日向奏星

あ、みんなも食べる？

日向奏星

りんご剥くよ？

揚羽凛太郎

ああ、頼むよ！

揚羽凛太郎

俺切り方
知らないから・・

日向奏星

分かった

姫川美咲

でもやっぱり
なんか持ってくれば
よかった・・

和久井龍也

俺は持ってきたぜ

姫川美咲

え？龍也だけ
抜け駆けずるい

和久井龍也

ホラ！リン！

龍也は服のポケットから何かを取り出して凛太郎に投げて渡す

揚羽凛太郎

おい！投げるなよ！

揚羽凛太郎

って──

揚羽凛太郎

カレーパンかよ！

和久井龍也

カレー好きだろwww

揚羽凛太郎

久々のカレーイジリやめろ

揚羽凛太郎

てか最近
食ってねーわ！

姫川美咲

ぷっははは

姫川美咲

たしかに揚羽くんには
ピッタリなお見舞いかも

揚羽凛太郎

なに姫川も
一緒になって
笑ってんだよ！

日向奏星

ふふふ

揚羽凛太郎

奏星も笑うな！

病室には皆の笑い声がこだましていた

ガラガラ

すると、看護婦が病室に入ってきて──

看護婦

病院なんだから
静かにしてね

揚羽凛太郎

あ、すいません・・

和久井龍也

すいませんでした

姫川美咲

気をつけます

日向奏星

すいません・・・

看護婦

まぁ、元気なのは
いい事だけどね♫

一方その頃

肝月の家では小雪が身の回りの世話をしていた

肝月琢磨

いいですよ！
常盤先生！

肝月琢磨

料理くらい自分で
できますって

常盤小雪

本当に？

肝月琢磨

そうですって

肝月琢磨

だから──

小雪は肝月の言葉を遮るように首筋に手刀を喰らわせる

肝月琢磨

うがぁ！

肝月は首を手で押さえて悶絶する

常盤小雪

ほら！まだ怪我も
万全じゃないんだから

肝月琢磨

でも本当に
いいんですか？

肝月琢磨

なんか申し訳ないというか

常盤小雪

いいのよ！

肝月琢磨

なんでそんなに
親切にしてくれるんですか？

常盤小雪

え！？

常盤小雪

いや、それは・・・

肝月琢磨

（これ・・）

肝月琢磨

（ワンチャンあるかな？）

肝月は意を決して口を開く

肝月琢磨

常盤先生！

常盤小雪

な、なに？

常盤小雪

急に大声出して

肝月琢磨

昨日の事なんですけど

肝月琢磨

昨日の約束って
その・・まだ生きてます？

常盤小雪

昨日の約束？

肝月琢磨

ホラ！昨日・・
一緒に食事する
って話でしたよね？

常盤小雪

あっ、そうだったわね

常盤小雪

色々起こり過ぎて
すっかり忘れてた

肝月琢磨

まだ、大丈夫ですか？

肝月琢磨

大丈夫なら今日・・
一緒に食事に
行きたいんですけど

常盤小雪

うん、いいわよ

肝月琢磨

まじですか！

グキッ

肝月琢磨

あっつ・・・

肝月は喜びのあまりにはしゃぎ過ぎたせいで首を痛めてしまう

常盤小雪

もう！何やってんのよ

肝月琢磨

すいません・・・

肝月琢磨

嬉しくって・・つい

常盤小雪

もう！バカね・・・

肝月琢磨

あはは・・・

常盤小雪

あっ！そうだった！

肝月琢磨

ん？どうか
したんですか？

常盤小雪

あやうく忘れる
ところだったわ・・

肝月琢磨

何か予定が
あったんですか？

肝月琢磨

それなら別に──

常盤小雪

いや、そうじゃなくて

肝月琢磨

ん？

常盤小雪

私──

常盤小雪

肝月くんに焼肉
奢ってもらう約束
してたんだった

肝月琢磨

え？や、焼肉？

肝月琢磨

なんですか？ソレ・・

常盤小雪

え？覚えてないの？

肝月琢磨

す、すいません・・

肝月琢磨

全く記憶に
ありません・・・

常盤小雪

ホラ！修学旅行の日！

常盤小雪

あなたが年甲斐もなく
はしゃいだせいで
腰を痛めたから──

常盤小雪

それを私が介抱
してあげたじゃない！

肝月琢磨

あっ！

数日前

修学旅行最終日の夜

カラオケ大会後の教師部屋での小雪と肝月の会話

肝月琢磨

あだだだだだ

常盤小雪

はぁ・・・

常盤小雪

まったく
何やってるのよ！

常盤小雪

肝月くん！

肝月琢磨

いやぁすいません

肝月琢磨

あはは・・・

常盤小雪

もう若く無いんだから

常盤小雪

無茶しないの！

割愛

常盤小雪

まぁ、明日の朝に
また様子見に来るわ！

肝月琢磨

ご迷惑をおかけします

肝月琢磨

あっ、でも
ロビーでの見張りは・・

常盤小雪

私がやっとくわ！

肝月琢磨

でも・・・

常盤小雪

保健の先生とかも
協力してくれるらしいから

常盤小雪

大丈夫よ！

肝月琢磨

すいません・・

常盤小雪

帰ったら叙◯苑ね？

肝月琢磨

あはは・・・

肝月琢磨

（やばい・・・）

肝月琢磨

（そうだった・・・）

常盤小雪

その顔は
思い出した！って顔ね

肝月琢磨

あはは・・・

常盤小雪

笑って誤魔化さないの

肝月琢磨

てっきりアレは
常盤先生の冗談かと

常盤小雪

はぁ〜・・・

常盤小雪

あの時眠くて眠くて
しんどかったなぁ

肝月琢磨

う・・・

常盤小雪

一人で大変だったなぁ

常盤小雪

（まぁ、揚羽くんと
日向さんに協力
してもらったけど・・）

肝月琢磨

ソレを言われると
返す言葉が・・

肝月琢磨

あはは・・・

常盤小雪

叙◯苑の焼肉食べれば
あの疲れを忘れる事が
出来ると思うなぁ〜

肝月琢磨

・・・・・

常盤小雪

あら、やだ
まだあの時の疲れが
抜けてないのかな？

小雪はわざとらしく首を回しながら自らの手で肩を揉む

常盤小雪

やば・・・

常盤小雪

思い出したら
立ちくらみが・・・

肝月琢磨

ちょっと
待ってください！

常盤小雪

ん？

肝月は小雪に背を向け財布を開けて頭を悩ませる

肝月琢磨

（やべ・・・）

肝月琢磨

（すっかり忘れてたよ）

肝月琢磨

（叙◯苑かぁ・・・）

肝月琢磨

（まぁ、行けなくもないけど）

肝月琢磨

（行ったら後々
厳しそうだな・・）

肝月琢磨

（でもせっかく
常盤先生と二人きりで
食事ができる訳だし）

肝月琢磨

（この際・・・）

常盤小雪

肝月くん？

常盤小雪

大丈夫？

肝月琢磨

あ、はい！

肝月琢磨

だ、大丈夫ですよ！

肝月琢磨

い、行きましょうよ！

肝月琢磨

じょ、叙◯苑！

常盤小雪

ふふふ

肝月琢磨

ん？なんで
笑ってるんですか？

常盤小雪

冗談よ！冗談！

肝月琢磨

え！？

常盤小雪

そんな高い店を
私が言う訳
ないじゃない！

肝月琢磨

なんですかソレェ〜

肝月琢磨

もう、脅かさないで
くださいよ〜

常盤小雪

ごめん、ごめん

常盤小雪

ちょっとだけ
困ってる肝月くんを
見てたかったから

肝月琢磨

もう、心臓に
悪いですって

常盤小雪

お金は私が出すから

肝月琢磨

いやいや
それはダメですよ

肝月琢磨

俺が出しますから

常盤小雪

無理しなくていいわよ

肝月琢磨

いや、せっかく常盤先生と
ご一緒できる訳ですから

肝月琢磨

ここは男である
俺が出しますよ！

常盤小雪

大丈夫？

肝月琢磨

心配ご無用ですよ！

常盤小雪

うー・・・ん

常盤小雪

ならラーメン
食べに行こ

肝月琢磨

え？ラーメン？

常盤小雪

そう！ラーメン！

肝月琢磨

ラーメンでいいんですか？

肝月琢磨

焼肉は──

常盤小雪

私、焼肉より
ラーメンの方が好きだから

常盤小雪

肝月くんは嫌い？
ラーメン

肝月琢磨

いや、好きです！
大好きです！

肝月琢磨

（常盤先生が・・）

常盤小雪

なら行きましょうか

常盤小雪

私、オススメの
お店があるから

常盤小雪

そこに行きましょう

常盤小雪

準備大丈夫？

常盤小雪

もう行ける？

肝月琢磨

はい！すぐに行けます！

常盤小雪

なら早速いきましょ

肝月琢磨

はい！

お節介アゲハと弱虫ヒナタ

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お節介アゲハと弱虫ヒナタ

第37話 - お見舞いと食事

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