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朝の光が境内の石畳を照らし 木々が静かに揺れる
鳥のさえずりがまるで祝詞のように神域を包み込む
私の日常はその清らかな空気の中にあった
私は社家に生まれた 神社の名前は"伊賀原神社"
伊賀原神社は古くから"自然を敬う社"として人々に知られていた
人口の少ない小さな村にある神社だから参拝者は多くない
でも訪れる人々は皆深く頭を下げて木々の声に耳を傾けて帰っていく
私も幼い頃からその空気の中で育った
伊賀原千紅沙
そんな私には一つだけ大きな誇りがある
伊賀原千紅沙
母
母
伊賀原千紅沙
それは病弱な母に代わり 巫女舞を奉納すること
これが私の誇りでもあり生きる意味だった
曾祖母から受け継いできた 半年に一度行われる"恵の舞"
春と秋に神社の森に風が吹き抜ける日に舞は行われる
私は真紅の衣をまとって 自然への感謝を込めて舞う
それはただの儀式ではなく 神や自然と人が繋がる約束のようなもの
けれどそんな静かな日々の均衡はある青年の訪れによって少しずつ揺らぎ始める