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魔法使いは何を唱う？－紫苑の叛逆者－

第21話 - 袋の鼠と変な自由人

2024年02月19日

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かえで🍁✒️

体感で10分程岩だらけの海岸を歩いて、ようやく内陸に進めそうな道を見つける

その道を行く前に、一旦休みつつ、これからのことを話し合うことにした

真冬

とにかくまずは、天ちゃんの救出となるせ君の安否を確認することが先決だよね

優

なるせの方は、命の保証はしてある〜、みたいなことアストが言っとったけど……

彼方

こんなことされた後に言われても、そんなの信じれるわけないよな

シャノン

ただ、つっきーの方は……ベルが言ってた実験が、成功しちゃった……ってことだよね……？

不安げな表情で96ちゃんが言う

ベル

…………

渉

……あ、そうだ。実は一個気になることがあんだけど……

真冬

気になること？

渉

ほら、1ヶ月前に俺と坂田が出会した人。

渉

アレって要は、天月がされてた実験の被害者だったってわけだろ？

優

せやな、さっきの天月とあの人、ほぼ同じ感じやったし……

前に報告会で2人が言ってた、 “闇属性関連の野生化したような人間”

話を聞く限りだと、少なくともこの件は例の実験と関わりがあるように思う

渉

だとしたら、これは俺の憶測だけど……もし実験に成功していれば、眼の色が紫になると思うんだよ

眼の色が、紫に……？

シャノン

……あっ、さっきのつっきーは赤のままだった！！

優

じゃあ実験は失敗しとったってことか！？

渉

かもしれない。あいつのことだし、あれが全部演技だって可能性も十分ある。

渉

それに……ベル

ベル

……？

渉

さっきのお前の“大丈夫”って言葉に、確信めいたものを感じたんだよ。

渉

だから俺は、お前の言う通り、あいつはきっと大丈夫だろうって思ってる

ベル

っ……！　……うん。

ベル

実はさっき、一瞬だけど……ショウタと目が合ったんだ。

ベル

……“みんなを任せた”って、言われた気がした。

ベル

ショウタは絶対、あいつらの闇に呑まれてない。それに俺のことを信じてくれてる。

ベル

きっとショウタには、何か考えがあるんだ。だから今は、俺達にできることをしよう

真冬

うん、了解！

彼方

そしたら、今は一旦なるせの救出か

棗

せやな。てかそもそも、ここがどこなんかよく分かっとらんけど……

渉

一応分かることとして、明らかに首都圏ではないよな。あんな断崖絶壁の岩場はないはずだし

優

ってなると俺ら、相当遠くに飛ばされとる……？

真冬

……実験場に、牢屋……

この場所の環境を、改めて思い出してみる

彼方

……？　まふまふ？

真冬

……もしかしたらここ、敵の本拠地に近いんじゃないですかね。

真冬

実験場は特に、あんな重要な場所、本丸から離れた場所に作るわけないだろうし

優

あ〜、確かに！　まふ天才か！？

真冬

あっはは〜、いやぁ、まぁよく言われるか……っていだだだっ！？

彼方

そんなふざけてる場合じゃないだろ。そうと決まればその本拠地探すぞ

真冬

だ、だからって耳引っ張んなくても良いじゃないですかぁ！

ベル

……あ、そうだ

棗

ん？

棗

……えっ！？

渉

どした？

ベル

これ、鍵と一緒に持ってきた

そう言ってベルが見せてきたのは…… なんと、僕らのスマホだった

真冬

えっ、ベル天才！？

彼方

速攻天才のプライド捨てんなよお前は……

優

でもこれがあれば百人力っすよ！

渉

けど、何で鍵だけじゃなくてこれも見つけられたんだ？

ベル

実はあの時……。

ベル

……あっいや、何でもない。やっぱ秘密

彼方

急に信頼失ったぞ

ベル

ひ、秘密ったら秘密！　別に気にすることでもないだろっ！

ベル

っていうかこれ、取り戻した時からずっと鳴っててうるさかったんだけど……

数時間前

〜百瀬 side〜

末

……お前の逃げ道は、もうとっくに無くなってんだよ

百瀬

は……？

百瀬

……──っ！？

咄嗟に背後に気配を感じて、急いで振り向く

だけどその時には既に、アストの左手がすぐそこまで迫ってきていた

百瀬

ってぇ……！？

振り向いた時の勢いの残りで、壁に背中と後頭部を打ち付ける

百瀬

あーくそっ、何なんだよあいつら……！！

相手への文句を言いながら、ぶつけた頭をさすりつつ、周囲を見回して今の状況を確認する

百瀬

（ここは……檻か……？）

四畳半の狭い部屋に、簡易ベッドや小さな机が置かれた、牢獄のような部屋

分かりやすく壁一面が鉄格子になっているから、恐らくそれと同等のものだろう

檻の外は暗いけど……一応、内装と廊下からして、さっきいた屋敷内の一角なのは間違いなさそうだ

百瀬

（出入り口らしきドアもねぇし……何だこの部屋……）

まるで、最初から誰かを監禁する為に作られたかのような部屋の造り

百瀬

（気味悪ぃな……）

スタ、スタ……

そんなことを考えていると、不意に廊下の奥から足音がする

アスナ

……あ、いたいた。ドンマイ救世主さん

ヒラヒラと手を振りながら暗闇から顔を出したのは、さっきも会った影山アスナだった

アスナ

そこに入ったからには、色々と情報吐いてもらうからね

百瀬

お前……さっきどっか行ったのは……

あれはただ、こいつが自由人だったわけじゃなくて、全部計画通りの……

アスナ

え？　あぁ違う違う。あれはただ代表に会いたくなかっただけ。

アスナ

あの人嫌いなんだよね、自分の価値観押し付けてけてくる感じとか。こっちからしたらマジ知らないっつーの

百瀬

（ん？　あれ、マジで自由人だっただけ……？？）

アスナ

それより、鳴海の能力使いの加入はBoEの念願だったの。特にあんたはね。

アスナ

そう言うわけだからさっさと答えて欲しいんだけど、まず最初に、あの予言書の内容は？

百瀬

（あれは……もう全部終わってることだし、話しても大丈夫か）

百瀬

俺達7人の使いとしての出会いと軌跡、後は“鈴音の厄災”について。

百瀬

でも数ヶ月前に全部終わって、あの予言書は役目を終えてる。そっちに役立つ情報はないよ

アスナ

ふーん……まぁ、そんなことだろうとは思ってたけど

そう言ったアスナが、檻に背を向けて床に座り始める

アスナ

一応聞くけど、あんたサージェンツの応用能力使えるの？

それから、鉄格子にもたれつつそう聞いてきた

百瀬

……多分

アスナ

は？　何でそんな曖昧なのさ

百瀬

俺にも分かんないんだよ。最近になって俺も使えるようになってきた感じだから

アスナ

へぇ……じゃあ“僕”と同じか

百瀬

同じ……って、え？

あれ、今こいつの一人称……

アスナ

えって……え？　まさか気づいてなかったの？

アスナ

僕、男だけど

百瀬

……え？

百瀬

……はあ！？

アスナ

ちょっ、あんた声デカい！　変に人来たらどうすんの！

百瀬

ご、ごめ……

百瀬

（いや、別に来たところでこいつは困ることないんじゃ……？）

条件反射で咄嗟に口を押さえつつ、そんな疑問が頭に浮かぶ

アスナ

はぁ……話戻すけど、僕もサーペンツの応用能力は少しずつ使えるようになったの。だから同じってわけ

百瀬

へ、へぇ……

突然の重大情報に頭が追いつかない中、どうにか相槌を打つ

アスナ

……変でしょ、僕

百瀬

え？　あー……まぁ、普通の人から見りゃそうだろうけど

アスナ

誰から見たってそうだよ。だって……

そこまで言って、俯き気味に口を閉ざしたアスナ

百瀬

…………。

百瀬

……でも、変な奴なんて世の中大勢いるぞ？

アスナ

えっ？

百瀬

俺の知り合いは大体変な奴ばっかだし、俺にとっちゃお前だって同じようなもんだよ。

百瀬

つか寧ろ、そういう奴の方がカッコいいと思うけどな

アスナ

……何で？　どこが？

百瀬

自分の好きなものを堂々と好きって言うのは、勇気がいることじゃん。

百瀬

だから別に、変なのは悪いことじゃないと俺は思ってる

百瀬

（……って、何で俺敵を励ましてんだ……）

一通り話し終えてから、ついいつもの調子で話していることに気づく

アスナ

…………。

アスナ

……あんた今暇？　あぁ、何もやることないし暇か。じゃあちょっと僕の話聞いてよ

百瀬

え、お、おう……

勝手に話を進められて困惑しつつ、辛うじて返事をする

アスナ

僕……本当は、君達に憧れてたんだ

魔法使いは何を唱う？－紫苑の叛逆者－

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そっか！実験が成功してたらうらさかが遭遇した被害者みたいに眼が紫になる！でも、あまちゃんは確かに赤だった！まだ大丈夫…だよね？ベル…あまちゃんのこと信じてるんだね、私も信じるよ！(？) 言いかけたのは…なんだったんだ？そしてやっぱりアスナは男の子だったんだね。でも確かに好きなもの堂々と『好き』って言えるのは大切だよ。アスナ『みんなに憧れてた』って…？続き楽しみにしてます！

かえで🍁✒️

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