「平和だあ…」 校舎の屋上でゴロンと横になり、青い青い空を眺める。 ふわふわしてる雲が、何だかとてものどか。 自習の時間には決まってここで、ぼんやりと空を見ながら過ごす俺。 鐘が鳴ったら昼休みだな とか 今日の学食の日替わりランチは何だったかな とか そんな事を考えてたら。 ガチャリ ドアが、開く音がした。 「…あ、先客がいる」 小さな、女子の呟きに顔を向ければ、小柄な女の子がひょっこりと扉の隙間から顔を覗かせている。 「…サボり?」 聞いたら 「ううん、自由登校だから、サボりじゃない」 と、ちょっとムッとした声が返って来た。 自由登校…。 じゃあ、三年なのか。 年上らしいその女子は、そろそろと扉から屋上へ出て、ううーん、と、大きく伸びをした。 「…君こそサボり?二年でしょ、そのネクタイ」 「…まぁ、そんなもんかな?」 「何で疑問系」 クスクス笑う上級生は、短いスカートを押さえながらその場に座り、カラフルな鞄から派手なノートを一冊取り出した。 キラキラチカチカ。 やけにラメラメな筆入れとノート。 よく見ると、爪もラメラメなマニキュアがお日様の光でチカチカキラキラ。 「…女子って、なんでラメラメ好きかな?」 何となしに聞いてみたら 「可愛いから。可愛いくない?コレ」 と、鞄の中からポーチを取り出し、俺に見せる。 「…可愛いっていうか…目ぇ痛い」 「男子って、何でワカンナイかなあ。あたしのカレシもそう言うのよね」 ぷくっと頬を膨らませる年上女子。 ああ、彼氏、いるんだ なんて。 変にガッカリしてしまったのに。 「…間違い」 「なにが?」 「“彼氏”じゃなくて、もう“元カレ”だった…」 ラメラメの鞄に顔を埋めて。 ラメラメの指先でぎゅっと鞄をにぎりしめ。 年上女子はお昼のチャイムが鳴るまで、しくしく、ずっと泣いてた。 END
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