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シンジ
母親が死んでから、初めての朝を迎えた。
兄弟でコンビニの弁当を食べた後、シンジは洗濯物を干してから寝た。
ただ、起きたことが起きたことだけあって、興奮してしまっていたのだろうか。
あまり眠ったという自覚はなく、朝の4時にはすっかり目が覚めてしまっていた。
もちろん、学校周りの支度なんて、母親がやるわけがないから、朝早く起きて支度をすることには慣れている。
ただ、早起きをしただけでは解決しない問題が、目の前に立ちはだかっていた。
シンジ
シンジ
シンジの制服は血が落ちてくれたのだが、弟の制服は血が落ちてくれなかった。
学ランだから目立たないだろうとタカをくくっていたのだが、いざ乾いたのを確認すると、学ランの黒とは異なる黒が、べったりと染み付いているのが見える。
シンジ
変に怪しまれたくないから、できることならば普段通りに2人とも学校には行っておきたかった。
しかし、弟の学ランを見る限り、それは難しいかもしれない。
幸いなことにコンビニで食べ物は買ってきてあるし、一日ぐらい休ませても問題はない。
シンジ
不幸中の幸いというか、母が完全にネグレクトをしてくれていたおかげで、学校関連への連絡なども、普段からシンジが窓口となっていた。
ゆえに、休みの連絡を入れても不審に思われることはないだろう。
早い段階で決断したシンジ。
そして、朝が早いのは弟とて同じだったらしく、目をこすりながら弟が居間に降りてきた。
アキノリ
少しばかり残念そうに、ただとても安堵したかの様子で、アキノリはため息を漏らす。
シンジ
できる限り、ネガティブではなくポジティブな答えを返す。
シンジ
アキノリ
シンジ
シンジ
シンジ
アキノリ
シンジ
シンジ
アキノリ
シンジ
シンジ
アキノリはシンジの言葉に不安げに頷いた。
その後、改めてシンジは家の周りを確認して回る。
凶器になった包丁は、綺麗に洗って、何事もなかったように台所にしまってある。
シンジ
シンジは裏庭のほうに出ると、井戸のほうへと向かう。
シンジ
入念に見回りをして、母の痕跡が残っていないか探してみるが、しかしどこにも母がいた痕跡は残っていない。
そうこうしている内に時間が過ぎ、シンジはアキノリの学校へと連絡をした。
事務員が出て、弟の欠席を伝えると、実に事務的な感じで返してくれた。
あんなことをした後だから、むしろこれくらい素っ気なく相手をしてもらったほうが安心感があった。
シンジ
シンジ
シンジ
アキノリ
アキノリの言葉は、普段通りの社交辞令的なものなのか。それとも、事件のことには気づかれないように気をつけろ――という意味なのか。
シンジには後者のように思えた。
外はいつも通りの朝を迎えていた。
ここからシンジの通う学校までは、自転車で30分ほどかかる。
普通の家庭ならば、バス通学などをさせる距離だが、シンジの母がそんな甘ったれたことを許してくれるわけがなかった。
母子家庭で子どもが2人。そんな条件だから、それなりの生活保護をもらっていただろうに、シンジとアキノリにそれが投資されることはなかった。
あの女からすれば、シンジとアキノリは、生活保護費を上乗せするための道具にすぎなかったのであろう。
ユキト
ふと、シンジの自転車に横付けするように、原付バイクが停まると、ハーフヘルメットの男が声をかけてきた。
赤、黄、青と縦に並ぶ信号機が、赤になったタイミングのことだった。
シンジ
ユキト
ユキト
ユキト
数少ない友人の口から母のことが出てきて、シンジは思わず言葉を失った。
実はシンジ、気の許せる友人には家庭事情を話していた。
ユキトは家庭事情を知った上で、それでもシンジと仲良くしてくれている物好きだった。
ユキト
ユキト
シンジ
信号が青に変わる。
ユキト
シンジはそう言うと原付バイクで先に行ってしまった。
シンジ
シンジ
数時間後――。 兄の言いつけを守り、家で大人しく過ごす。
足音を立てることさえ悪いような気がして、トイレに立つときも忍び足になってしまう。
部屋のテレビでは、ろくでもないワイドショーが、やれ芸能人の不倫などを報じていた。
アキノリ
息をひそめながら過ごすことしばらく、お昼を過ぎた辺りで小一時間ほど寝てしまったようで、思ったより時が流れるのは早かった。
このまま何事もなく兄が帰る時間になって欲しい。
そのようなことを願うと、裏目に出てしまうのが、今のアキノリなのかもしれない。
アキノリのクラスメイト達
ふと、外から聞こえてきたのは、クラスメイト達らしき声だった。
気づかれないように窓を開けて外を確認すると、やっぱりクラスメイト達だった。
アキノリのクラスメイト達
どうやら、学校で配られたプリントを持ってきてくれたらしい。
きっと、大事なプリントなのであろう。
アキノリ
兄の言いつけを守り、居留守を使うアキノリ。
アキノリのクラスメイト達
アキノリのクラスメイト達
アキノリのクラスメイト達
アキノリ
アキノリ
どうしようなアキノリが迷っている間に、クラスメイト達は裏口に回る。
そう、あの井戸がある裏口に。
アキノリはクラスメイト達の動きに合わせて部屋を移動すると、窓を少しだけ開けて様子を確認する。
アキノリのクラスメイト達
アキノリのクラスメイト達
クラスメイトの1人が井戸に歩み寄る。
アキノリ
クラスメイトの1人が井戸の蓋に手をかける。
アキノリ
アキノリ