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デビルズパレス 主の部屋
ナック
そう言って
花を手折るような丁寧な手つきで
お姫様抱っこで運ばれたわたしは
そっとベットに降ろされた
主
主
わたしは無抵抗に
彼が布団をかけてくれるのを眺めていた
主
主
主
耳元にドクンドクンと
生を叫ぶ音が響く
主
ナック
ナック
心配そうに顔を歪めた彼が
こちらをのぞきこむ
ナック
わたしを呼ぶ口元を見たら
その口に触れた体温と柔らかさで
頭が
いっぱいになる
主
ナック
ナック
主
ナック
彼の言葉をさえぎるように
わたしは言った
主
主
ナック
涙が溢れて
顔が熱くて
鼓動がどんどんはやくなっていって
そして
主
頭の中を埋め尽くす
キスをしたあとの
とても寂しそうな微笑み
主
その笑顔は
飽きるほど見た
そして
見ないふりをしてきた
主
主
ナック
ナック
主
主
その日
心配する姉を放って わたしはナックと2人で街に行った
そのとき
けたたましく鳴り響く警音とともに
強い光を纏った天使が現れた
それは相当な強さの天使で
悪魔を解放出来ないわたしは
ボロボロになりながら必死に戦う彼を 見ていることしかできなかった
そして一瞬の隙をついて 天使の攻撃がわたしに放たれた時
駆けつけた姉がわたしの背を押した
主
主
目がくらむような光の渦に 飲み込まれていく姉は
とっても寂しそうに笑っていた
主
主
主
主
ナック
主
雪崩のように
溢れて止まらないわたしの言葉を 食むように
彼はわたしに唇を重ねた
主
ナック
主
ナック
ぬくもりが消えたあとに触れる空気は
冷たくてしかたない
ナック
ナック
主
ナック
ナック
ナック
ナック
主
主
主
ナック
ナック
主
主
主
ナック
ナック
主
主
ナック
主
主
ナック
彼はそっと
わたしの涙を指先ですくいとった
それはまるで
蝶の羽に触れるような繊細な仕草だった
ナック
ナック
最上級のシルクのようになめらかな声が
ナック
ナック
甘い言葉に嘘を溶かす
主
主
主
主
主
青と赤の瞳が三日月のように細められ
わたしは縋るように腕を伸ばす
主
愛しいぬくもりを感じながら
それが去ったあとの冷たさを 考えてしまう
ナック
ナック
ナック
ナック
ナック
見上げた彼の
頬に手を添えて
花を愛でるようにその古傷をなでた
主
主
主
嘘でもいいよ
わたしを見てなくてもいい
わたしとの約束は
破らないでね
1年前
デビルズパレス 食堂
???
???
その言葉とは裏腹に
そのお方は楽しそうな笑顔を浮かべて
定位置の席に着いた
ナック
ナック
わたしは席から立ち
彼女の来訪を迎えた
ナック
ナック
先代主
先代主
先代主
ナック
先代主
先代主
ナック
主様は隣に視線を移す
先代主
先代主
そこには静かな寝息をたてるお嬢様が 座っていた
腕を組んで頭を埋めているお嬢様を
主様が優しく撫でる
艶のある黒髪がそれを無抵抗に 受け止める
先代主
ナック
先代主
先代主
ナック
主様の微笑む瞳には
溢れんばかりの慈愛が滲んでいる
しかしお嬢様はそれを決して 受け入れようとしない
ナック
ナック
先代主
ナック
ナック
ナック
先代主
先代主
先代主
ナック
主様たちが初めてこの屋敷に いらっしゃった日は鮮明に覚えている
腕や顔にあったいくつもの痣と 光のない怯えた瞳
長い間虐げられてきたであろうその姿に
服の下に隠した古傷が痛んだ
ナック
ナック
ナック
ナック
ナック
先代主
先代主
先代主
主様は瞳の端に滲んだ涙を
しなやかな指先で隠すように拭き取った
先代主
先代主
ナック
ナック
先代主
先代主
主様は少し頬を膨らませた
先代主
先代主
その怒る姿がかわいらしく
つい、笑みが零れてしまう
ナック
ナック
先代主
先代主
ナック
ナック
ナック
ナック
ナック
ナック
わたしは心からの思いをこめて
胸に手を添え、礼をした
先代主
先代主
先代主
いつものように笑う主様
ナック
ナック
しかし、その頬は
先代主
春を彩る桜のように
愛らしく染まっていた
先代主
先代主
ナック
先代主
先代主
ナック
先代主
ナック
先代主
先代主
先代主
ナック
ナック
ナック
ナック
じわりと
胸に温かいものが込み上げてくる
先代主
先代主
主様は身を乗り出し
片手を私の頬に添えて
いつのまにか零れていたわたしの涙を そっとすくった
先代主
先代主
ナック
触れられた手のぬくもりが
頬の古傷を優しく包む
先代主
先代主
これまで見てきたどんなに美しい花も 決してかなうことはできない
ナック
ナック
主様の笑顔は
そんな愛しさを感じさせた
終