奪ワレル・・・

勢いよく外に飛び出して、黒い影に向かって掴んだ石を投げ叫んだ

黒い影の目と目が合い、思わず足が竦みそうになるのを必死に抑えて走り出す

後ろは振り返らない………振り返れない、が、後ろから気配がついてきているのは感じ、少し安心した

今はとにかくあの建物から……2人からアイツを離さないと……

木々を掻き分けながら無我夢中に走り続け、気配が離れた所で物陰に隠れた

暗い森の中、息を整えながら周囲の気配を探る

遠く離れた所に黒い影が動いているのが見え、そっと死角に移動し息を殺した

心臓がドクドクと大きな音を立てる

汗が頬を伝い、地面に落ちる

そんな音ですらアイツに聞こえるんじゃないかと不安になり、勝手に身体が震えてきた

自身の身体を抱きしめるようにして、膝で口元を押さえる

震えるな

震えるな………！

……ヲ……カ…………テ

澄ました耳に小さな声

その声が聞こえた途端、全身から血の気が引く感覚がした

視線の先に、蠢く黒い影

それは形を歪に変えながら………

女の姿になった

声を出すな

気配を消せ……！

口を両手で抑えながら、必死で震える身体を抑える

どうにか死角に移動しようと身体に力を入れるが全く言うことを聞いてくれない

頼む……動いてくれ……！！

カ……ｪ…………テ

こっちを見るな………気付くな……！

動けない俺はギュッと身体を縮め、目を閉じた

どれくらい時間が経ったのか……

音も何も聞こえなくて、そっと顔を上げた

ミツケタ

顔を上げた……その目の前に先ほどの女が俺の顔を覗き込んでいた

その目は血走り、ニタリと笑う口からは血が……

あまりの恐怖で動けない俺に向かって血濡れた女の手が伸びてくる

もう少しで手が首に触れそうになった瞬間、渾身の力を振り絞り走り出した

が、その目の前には黒い影が

思わず足を止めるが、後ろには女の霊

慌てて左に向かって走り出した

どこに逃げればいいのか、逃げ切れるのか分からないが必死に走る

後ろから迫る気配に悪態をつきながらも力の限り走った

女は聞き取りにくい掠れた声で喋りながら手を伸ばしてくる

何度も捕まりそうになりながらも逃げていたその時……

逃げている先にまた黒い影が

後ろを振り返ると女と先ほどの黒い影

慌てて方向を変える

が、更にもう一体………

女と3体の影になす術もなく、後ろからきた女に頭を掴まれ勢いよく地面に倒された

首に伸ばされる手を掴み抵抗する

必死に女の力に抵抗していたら突然足に激痛が

あまりの痛みに抵抗していた手の力が抜け、瞬間女の手が首に……

チラリと足元に目線を向けると黒い影が蠢いていた

ありえない方向に曲がり、真っ赤に染まった俺の足

目の前には馬乗りで力一杯俺の首を絞める女……

徐々に視界が暗くなってくる

女のはっきりとした声を最後に、俺は完全に意識を手放したーーーーーー