コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
デビルズパレス
食堂
ラムリ
ラムリ
主
主
無邪気な笑顔とともに彼から 差し出されたのは
透明なグラスの中で揺れる
深い赤だった
主
ワインについて明るくない私は
どこで聞いたかも不確かな情報を 頼りに
とりあえず手元のグラスを ゆるく回した
主
ぶどうの酸っぱさとアルコールの 痺れるような香りが
少し不快だった
ラムリ
ラムリ
ラムリ
主
主
主
ラムリ
ラムリ
ふわふわの髪を揺らし 鋭く尖った歯を見せて笑う彼に 目を細めながら
私はグラスの端に口をつけた
主
ぶどうの香りとアルコールの風味が 口と鼻を覆い隠す
あまりの不快感に一瞬呼吸が止まった
ラムリ
ラムリの弾んだ声が迫る
主
私は嬉しそうな彼に
また目を細めた
そのとき
ルカス
ルカス
主
ラムリ
少し離れた入口の近くで
ルカスは変わらぬ笑みをたたえていた
ルカス
ルカス
主
主
私はグラスをテーブルに置き
ルカスを席へうながした
ルカス
ルカス
ルカスの弾む声が響く
ルカス
ルカスは私の席のそばで立ち止まって
ルカス
ルカス
苦い顔をするラムリの方を向いた
ラムリ
主
ラムリ
一気に静かになった彼は反対に目をあちこちに泳がせていて
素直な性格は隠しようがなかった
主
ラムリ
私はラムリの方を向いた
彼はモジモジとせわしないがまだ目線を合わせようとしない
主
主
主
主
ラムリ
主
ラムリ
ラムリ
テーブルから身を乗り出した彼の その目は
今にも泣き出しそうだった
主
ラムリ
主
ラムリ
ラムリ
主
主
ルカス
ルカス
ルカス
ラムリ
ラムリ
主
主
私はラムリの頭を軽く撫でてから
ご機嫌な後ろ姿を見送った
ルカス
私の横に立っていたルカスが
私の前に跪いた
主
椅子に座る私と床に膝をつけた彼
普段は見上げるばかりの視線が
今はまっすぐ重なっている
ルカス
ルカス
ルカス
金色の瞳が私を貫く
主
ルカス
主
主
私は目を細める
さっきラムリにもそうしたように
主
これを人は「笑顔」って言うから
ルカス
ルカスは気持ちを押し殺すように そう言うと
テーブルの方を向いた
ルカス
主
そのままテーブルに置かれたグラスを手に取り
赤く揺れるワインを口に含んだ
ルカス
ルカス
ルカス
ルカス
長いまつ毛に伏した瞳は
私を包み込むように
優しい色をしていた
ルカス
ルカス
ルカス
主
主
主
主
私はルカスからグラスを奪って
残りのワインを飲み干した
ルカス
ぶどうの酸っぱい香りと
アルコールの強い苦味と
ほんの少しだけ感じる甘さ
主
ルカス
主
主
ルカス
ルカスは優しく微笑む
今の嘘じゃない言葉に
きっとラムリは残念そうな顔をする
けれどルカスは
言葉の内容じゃなくて
真実であることを喜ぶ
主
主
主
ルカス
ルカス
ルカスの大きな手が
額に触れ
目元をなぞり
頬を包む
ルカス
ルカス
主
ルカスは私を抱き上げて歩き出した
花に触れるように優しい動作だった
その優しさがたまらなくなって
なんだか泣きそうになった
主
主
他人の優しさと温もりに包まれながら
耳に伝わる鼓動の心地良さで胸が いっぱいになる
ルカスは何も言わず
私も彼の顔を見あげようとは しなかった
でも
私を抱く手に少し力が入って
耳もとの鼓動が少し早くなったように感じた
このまま部屋につかなければ
なんて
まだ気づかれていない複数の痣の痛みを感じながら
私は優しい温もりに身を任せた