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イヴァン・ブラギンスキ

ただいま……

誰もいない家。

両親はいつも忙しい。

姉さんは今日も友達と遊んでいるのだろう。

だから、この時間帯はとても苦手だ。

ひとりぼっちで、あの頃の僕を思い出す。

苦しみだけしかない空間で、一人もがいていた幼い頃を。

イヴァン・ブラギンスキ

ぅ、うう……くるし……ま、ま……ぱぱ……おねぇ、ちゃ……

イヴァン・ブラギンスキ

(……! だめ、だめだよ、イヴァン)

イヴァン・ブラギンスキ

(今はもうだいぶ良くなったんだ。)

イヴァン・ブラギンスキ

(だから、急に体調が崩れることはないよ……)

イヴァン・ブラギンスキ

(大丈夫……)

そう自分に言い聞かせていた時、

アーニャ・ブラギンスカヤ

……イヴァン?

と、後ろから姉さんの声が聞こえた。

イヴァン・ブラギンスキ

ねっ……姉さん……

アーニャ・ブラギンスカヤ

そこで何しているの?

イヴァン・ブラギンスキ

な、なんでもない、よ

アーニャ・ブラギンスカヤ

そう……

アーニャ・ブラギンスカヤ

今日はわたしが夕飯作っておく

アーニャ・ブラギンスカヤ

イヴァンはできたらでいいから、お風呂とかお皿とか洗濯物とかお願い

イヴァン・ブラギンスキ

わ、わかった……

姉さんの動きが、止まった。

イヴァン・ブラギンスキ

ね、姉さん……?

アーニャ・ブラギンスカヤ

……ねえ、イヴァン。

なんだか少し、声が重たい。

イヴァン・ブラギンスキ

え、なに?

アーニャ・ブラギンスカヤ

あなた、そのおどおどした話し方、なんとかならないの?

イヴァン・ブラギンスキ

……え?

アーニャ・ブラギンスカヤ

ごめんねえ、なんだかその話し方、イライラしてくるの

イヴァン・ブラギンスキ

え、ええ? 姉さん……?

アーニャ・ブラギンスカヤ

言いたいことがあるならちゃんと話して

アーニャ・ブラギンスカヤ

返事もくよくよなよなよしない

イヴァン・ブラギンスキ

あ、ご、ごめんなさい……

アーニャ・ブラギンスカヤ

だからその話し方を……

アーニャ・ブラギンスカヤ

……まあ、いいわ。

アーニャ・ブラギンスカヤ

とりあえず、お願いね

イヴァン・ブラギンスキ

……うん

姉さんはすたすたとリビングへと行ってしまった。

僕は頰に張り付いた悲しさを取り除けず、トボトボと自室へと向かった。

荷物を置き、制服を脱ぐ。

そして制服をハンガーにかけ、ベッドに寝転がった。

姉さんから風呂掃除やら皿洗いやら洗濯やらを頼まれていたが、

やる気にはならなかった。

無性に疲れた気がする。

なぜだろう。

立ち上がることも億劫だ。

瞼が徐々に重くなっていく。

心なしか体に熱がこもっている気がする。

そう思った時、僕の意識は完全に途切れてしまった。

アーニャ・ブラギンスカヤ

ちょっと、イヴァン。

アーニャ・ブラギンスカヤ

全然やってないじゃないの

アーニャ・ブラギンスカヤ

何してるの……イヴァン?

アーニャ・ブラギンスカヤ

え、イヴァン? 大丈夫?

アーニャ・ブラギンスカヤ

イヴァン!

ハッとして目を開けると、

そこには文庫本を片手にイヴァンの勉強机に腰を下ろした姉さんの姿があった。

イヴァン・ブラギンスキ

ね、姉さん……?

アーニャ・ブラギンスカヤ

やっと起きた

アーニャ・ブラギンスカヤ

もう、お父さんもお母さんもいない時に熱発しないでよ……

そこで初めて僕は自身が熱発していたことに気がついた。

イヴァン・ブラギンスキ

僕……熱、出ちゃった……?

そうよ、と姉さん。

そして、持っていた文庫本を机に上に置き、

僕の額に手を当てる。

アーニャ・ブラギンスカヤ

……まだ、少し熱いわね

アーニャ・ブラギンスカヤ

やっぱり、無理のしすぎかな

イヴァン・ブラギンスキ

……僕、無理してないよ……

アーニャ・ブラギンスカヤ

何言うの。

アーニャ・ブラギンスカヤ

中学校という新しい環境で無理していないわけがないじゃない。

イヴァン・ブラギンスキ

で、でも! 僕、無理なんてしてない……

アーニャ・ブラギンスカヤ

あなたは生まれつき体が弱いから、少しのことでも傷つきやすいのよ

アーニャ・ブラギンスカヤ

それを、わかって言ってるの?

イヴァン・ブラギンスキ

わ、わかって、るよ……

アーニャ・ブラギンスカヤ

わかってないわよ、イヴァンは

アーニャ・ブラギンスカヤ

また、保健室登校をしたらどう?

アーニャ・ブラギンスカヤ

ほら、少し良くなったあの頃みたいに、

アーニャ・ブラギンスカヤ

調子の良い時は教室で受けて、

アーニャ・ブラギンスカヤ

優れない時は保健室で勉強していたら?

アーニャ・ブラギンスカヤ

きっとそっちの方がいいわ

イヴァン・ブラギンスキ

……でも

アーニャ・ブラギンスカヤ

なに?

イヴァン・ブラギンスキ

僕は、教室で受けたい……

アーニャ・ブラギンスカヤ

なんで?

イヴァン・ブラギンスキ

……好きな、人がいるから……

アーニャ・ブラギンスカヤ

……へえ

姉さんは立ち上がった。

イヴァン・ブラギンスキ

姉さん?

アーニャ・ブラギンスカヤ

好きな子がいたら、無理しちゃうの?

アーニャ・ブラギンスカヤ

相手はイヴァンのこと、好きじゃないかもしれないのに?

イヴァン・ブラギンスキ

え……

アーニャ・ブラギンスカヤ

とりあえず、今日はもうおやすみ。

アーニャ・ブラギンスカヤ

おかゆ、作ってくるから

そう言うと姉さんは部屋から出て行ってしまった。

“相手はイヴァンのこと、好きじゃないかもしれないのに?”

その言葉が頭の中に残り続けながら。

君が僕を好きなはずないよ

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コメント

2

ユーザー

投稿ありがとうございます! 私的に、イヴァンは芯がある強い男性のイメージがあるので、緑川さんの書く弱々しい感じをみると、とてもかわいらしいな~って思います😳 今回も最高でした😌また続きが読めるのを楽しみにしています🙇

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