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ましゅの短編シリーズ

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ましゅの短編シリーズ

7 - 君が、この世界にいなくても。

♥

1,222

2019年11月28日

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この状況、どう捉えればいいんだろう。

さっきからやたらと体が痛い。

1ミリでも体を動かせば、激痛が通る始末。

焦点が合わなくて、ずっとぐるぐるしている。

頭蓋骨に障害があったのか、釘を打たれているような感じで頭が痛む。

ザーザーと馬鹿みたいにうるさい雨。

周りから聞こえる人たちの声。

問いかけもできない。痛い。寒い。

橋本 貴音

……………こ、ゆきくん

彼の名を呼ぶ。

しかし、返事は返ってこない。

ようやく、焦点が合い、彼の状態を見る。

橋本 貴音

………っ!

言葉にできないような悲鳴が上がった。

信じられない。嘘だって言って。

ドッキリだって、夢だって。

だって、彼の帯に赤黒い血がで出るから。

橋本 貴音

小雪、くん。

悲鳴が上がっている体を無理に動かせる。

おじさん

ダメだ!君は怪我がひどい!これ以上、体を動かすな!

動かすな?

そんなの絶対に嫌。

橋本 貴音

う。煩い!

手を振り払って、彼のところまで行く。

橋本 貴音

小雪くん!小雪くん!

しかし神様は意地悪だ。

こんなところで、意識がプチンと切れてしまうなんて……

橋本 貴音

…………。

あれから、1年の時が経った。

思い出せば、胸がチクチクする。

橋本 貴音

……小雪くん。今日もきたよ。

飽きずに変える花。

ここは墓地。

橋本 貴音

………あれから、結構月日が経ったね。

橋本 貴音

小雪くん、ごめんね。

橋本 貴音

私のせいで

なぜ、こんな人生が来てしまったのか。

全ては、あの夏の日。

どうして、私だけこの世界から取り残されたのか。

私の、生活が、狂ってしまったあの日だった。

綾瀬 小雪

貴音。

橋本 貴音

小雪くん!

橋本 貴音

一緒に帰ろ〜。

綾瀬 小雪

うん。

綾瀬 小雪

……ねえ貴音。

橋本 貴音

うん?なあに?

綾瀬 小雪

今晩、お祭りあるじゃん?

橋本 貴音

ああ、○○神社の。

橋本 貴音

あそこ、毎回屋台が豪華だからね〜。

綾瀬 小雪

一緒に行かない?貴音の浴衣姿、みたい。

橋本 貴音

……!

橋本 貴音

勿論!その代わり、小雪くんも着るんだよ?

綾瀬 小雪

え、俺も!?

橋本 貴音

あったりまえじゃん!

綾瀬 小雪

……わかった、期待しておいて。

綾瀬 小雪

俺、期待しておくからさ。貴音の浴衣姿。

橋本 貴音

私だって!

綾瀬 小雪

おまたせ〜貴音。

橋本 貴音

おっそいよ!小雪くん!

綾瀬 小雪

………!

橋本 貴音

へへ、どー?

橋本 貴音

可愛い?

綾瀬 小雪

………可愛い。

橋本 貴音

え?もう一回言って〜!

綾瀬 小雪

だー!ほら行くぞ!

橋本 貴音

へへっ。

橋本 貴音

……あ。

橋本 貴音

軽く花火上がってる。綺麗。

橋本 貴音

橋本 貴音

素敵。

綾瀬 小雪

………。

橋本 貴音

あ、ごめんね!小雪くん、いこ!

綾瀬 小雪

ちょ、そんなに急ぐな。

橋本 貴音

へへ、楽しみでって、うわ!!!

綾瀬 小雪

貴音!

宙を舞う。

感覚がない。

ああ、これ、落ちるやつだ。

ぎゅっと、目を瞑る。

ズダダダ

ズサ

ものすごいことと勢いで、私は、階段から落ちてしまった。

もう、感覚がない。

小雪…くん。

病院に緊急搬送された私たち。

急遽な対処をとり、私は命を取り留めたが

小雪くんはー…間に合わなかった。

絶望と後悔が混ざり合った。

私のせいで、大切な人をなくしてしまうだなんて。

私がもっと気をつければ

小雪くんは、事故に遭わなかったはずなのに。

橋本 貴音

………っ。

あの日から、泣かないって決めた。

でも、もう限界かもしれない。

おばあさん

本当、嫌だねぇ。

橋本 貴音

っ!!

不思議な老婆が、立っていた。

一体、いつからそこに…

橋本 貴音

嫌って、何がですか?

おばあさん

毎回毎回、事故が起き、芽吹く命枯れる。

おばあさん

ほんと、いやわねぇ。

橋本 貴音

……?

おばあさん

……おや。

おばあさん

そのお墓は、お前さんのたいせつな人なのか?

橋本 貴音

……私の、彼氏だったんです。

橋本 貴音

私のせいで、彼は他界しましたが。

おばあさん

……ほう。

おばあさん

お前さん、何かしたのか?

橋本 貴音

……………階段から、落ちて、巻き込んだんです。

橋本 貴音

私が、気をつけてたら、よかったに……

橋本 貴音

こんな仕打ち……。

おばあさん

…………お前さんは馬鹿だのお。

橋本 貴音

!?

何このおばあさん、初対面なのに馬鹿って…。

おばあさん

そんなに詰めて、何ができるのか?

橋本 貴音

……。

おばあさん

責めたって、現実は変えられぬ。

橋本 貴音

………戻りたい。

橋本 貴音

あの時に、あの時間に、あのぬくもりを目指して。

おばあさん

………戻るといいさ。

橋本 貴音

……は?

おばあさん

言葉のまんまさ。最近の若者は飲み込みが悪くて困るわい。

おばあさん

……私はちと、超能力者と呼ばれておる。

おばあさん

時間を戻すのは容易い御用だが、お前さんは過去に戻る気はあるのかね?

橋本 貴音

……あります。

橋本 貴音

戻りたい、戻らせて。

おばあさん

……ははっ。初対面の怪しい老婆を信じるだなんて、お前さんは面白いのお。

おばあさん

……まあいいか、目を瞑れ。何も感じず、無になるのさ。

おばあさん

いいかい?約束さ、あの事故が起きた時間が過ぎれば、強制的にこの世界に帰らされるからな

橋本 貴音

…………………。

橋本 貴音

構わない。

おばあさん

わかった。今から転送してやろう。

グニャ

視界が…。

だんだん、ぼやけて、いってー…。

橋本 貴音

………つ!

ここはー…?

時計を見ると、8月25日。

1年前の、あの日ー…。

橋本 貴音

(本当に、戻ってきたんだー…)

綾瀬 小雪

………貴音?

綾瀬 小雪

……い、貴音〜。

橋本 貴音

わ!?

橋本 貴音

ご。ごめんごめん!ボーっとしてて…。

綾瀬 小雪

……?

綾瀬 小雪

それよりさ、今日お祭りあるじゃん?一緒路に行かねーか?

橋本 貴音

っえ

橋本 貴音

………うん。

大丈夫、階段に気をつければいい話。

小雪くんを、巻き込まなければいい話。

タイムスリップした意味がない。また落ちてしまったら。

大丈夫、落ち着けー…。

橋本 貴音

…………。

橋本 貴音

………きちゃったなぁ。

綾瀬 小雪

お〜い!貴音ー…。

橋本 貴音

橋本 貴音

あ、小雪くん。

綾瀬 小雪

っ!!

橋本 貴音

小雪くん、浴衣姿かっこいい。

綾瀬 小雪

……そっちも、かわえーじゃん。

橋本 貴音

……ありがとう。

綾瀬 小雪

……元気ないじゃん。どうしたの?

橋本 貴音

………え。その。へ、平気だし。

橋本 貴音

そ、それより。早く、いこ。

ドクンドクンドクンドクンドクン

ザッザッザッ

綾瀬 小雪

おーい、早く行くぞ?

綾瀬 小雪

!?

橋本 貴音

小雪くん!

一体どういうこと?

彼が落ちて…

ダメ!

彼を、守らなきゃ。

ドン

橋本 貴音

うあっ!!

ズサ

綾瀬 小雪

……あぶねー。貴音、さんきー…。

橋本 貴音

………っ。

やばい、痛い。

また。あの痛み。

……でも、小雪くんを守れてよかった。

凛花

……なんで、あんたが先に来ないのよ。

橋本 貴音

…………りん、か?

彼女は西本凛花。性格が悪くて有名で、私のこと嫌っててー…。

凛花

でもまあいいわ。あんたが怪我しちゃったし、これで小雪くんは私のもの。

……もしや

私が転んでしまったのは、凛花が押し出したから?

あの時、私は後ろを向いてて、前を見てなかった。

転んだ瞬間、何か、変だった。

あれは、凛花が押したからなんだ。

綾瀬 小雪

おいふざけるな!貴音!今救急車呼ぶからな!

橋本 貴音

……………こ、ゆき、。。。

……意識が慌ただしくて面倒だな。

そして、プチンと切れた。

橋本 貴音

……………。

綾瀬 小雪

…………。

橋本 貴音

小雪くん。

綾瀬 小雪

………貴音、ごめん。俺のせいでっー…。

橋本 貴音

大丈夫だよ、小雪くんが死ななくてよかった。

橋本 貴音

………あのね、急に言うけどさ。

橋本 貴音

私、未来からタイムスリップしてきたの。

綾瀬 小雪

……タイムスリップ?

橋本 貴音

私の世界では、2人とも事故に遭っちゃって、小雪くんが死んでしまったの。

橋本 貴音

……私、嫌で嫌で。気持ちだけでも伝えたかったから、こっちにきたの。

橋本 貴音

こっちの世界で生きて欲しかったからさ。

橋本 貴音

でも、もう限界見たい。

綾瀬 小雪

…………貴音?

橋本 貴音

あれ。

橋本 貴音

体が透明。

橋本 貴音

戻らなきゃ。

橋本 貴音

……私ね、小雪くんがいなくて寂しかったけど。

橋本 貴音

小雪くんがいない世界でも、頑張ってみせる。

橋本 貴音

だから、小雪くんも頑張って。

橋本 貴音

……祭り、屋台すら見れなかったけど、可愛いっていってくれて嬉しかった。

橋本 貴音

冬の時は、クリスマスデートにもいったよね。

橋本 貴音

全部全部、素敵でキラキラした思い出だった。

綾瀬 小雪

やめろ、貴音、行かないでー…。

綾瀬 小雪

俺も、かっここいっていってくれたり、デート誘ったりしてくれて、嬉しかった。

綾瀬 小雪

貴音がいない世界があるなんて、考えられない。

橋本 貴音

……私もだよ。

橋本 貴音

ごめん、ね。

橋本 貴音

じゃあね、小雪くん。

綾瀬 小雪

貴音!!!

橋本 貴音

ありがとう、大好き

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コメント

30

ユーザー

感動しました!

ユーザー

何これ… 感動して涙止まらないんですけど やばい、干からびる…

ユーザー

主人公の下の名前、なんて読むの?

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