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私は、さーちゃんに

真実を伝えることにした。

すみれ

さーちゃん、

すみれ

落ち着いて、聞いてね…。

???

うん

すみれ

すみれ

あなたは、25年前にこの建物に住んでいた、普通の女の子。

???

25年前…?

???

そんなに昔なの?!

すみれ

そう。

すみれ

あなたの言うとおり、さーちゃんのお父さんも、お母さんも、この家に一緒に暮らしていたの。

すみれ

私も偶然その事を知ったときは、びっくりした

たまたま図書館で調べものをしている時、古い新聞にここの住所と、事件の詳細が書いてあったのだ。

???

…どうしてそれを、すみれちゃんが知っているの?

???

それから、どうしてすみれちゃんは、その事をすぐに教えてくれなかったの…?

すみれ

それはね、

すみれ

あなたが傷つくから。

???

傷つく?

すみれ

そう。

すみれ

だって、あなたは

???

…?

すみれ

すみれ

強盗殺人犯に

すみれ

殺されたんだから

???

???

え?

???

え……何?

???

殺人って・・・?

すみれ

家に泥棒が入って、それから

すみれ

すみれ

犯人は、あなたを殺してしまった。

この話は、さーちゃんにしない。

真実を偶然知った時に、私はそう決めていたのだ。

すみれ

あなたが記憶を失くしたのも、きっと忘れたいくらい辛い出来事だったから………

???

???

そう…なの?

???

何も、覚えてないよ…

すみれ

そう、それでいい

すみれ

幼いあなたは、何も思い出さなくていいの

???

そんな・・・

さち子

信じられないよ。

すみれ

いきなりそんなこと言われても、信じたくないよね。

すみれ

すみれ

ただ、あなたの本当の名前は、教えておきたいな。

???

名前?

すみれ

そう。

???

本当の名前………

すみれ

あなたの、本当の名前は

すみれ

「さち子」

さち子

さち子

さち子………?

さち子

パパ、ママ……

さち子

私を、置いていったわけじゃなかったんだ

すみれ

………そう

すみれ

あなたは、きちんと愛されていたと思う

すみれ

すみれ

私、一度だけあなたのお墓、見に行ったの

さち子

え?!

すみれ

…勝手にそんなことして、ごめんね。

すみれ

でも、お墓に行って分かったんだ。

すみれ

お墓、きれいに手入れがされていて、お花もかざってあって

すみれ

あなたが好きだったものが、たくさんお供えされてたの

さち子

その時、誰か来てたの?

すみれ

さーちゃんのお父さんが、たまたま来てたから、ご挨拶したんだ。

さち子

そう、だったんだ………

すみれ

今まで隠していて、ごめんなさい

すみれ

あなたに悲しい思いをさせたくなかった。

すみれ

あなたが昔、殺されていたなんて

すみれ

教えたくなかった………

さち子

さち子

すみれちゃんは優しいね。

さち子

うん………

さち子

さち子

そうだね、私もすみれちゃんと同じ立場だったら、本当のこと言えないかもしれない

すみれ

さーちゃん………

すみれ

今まで本当のことを話さなくて、ごめんない

さち子

さち子

すみれちゃん、これからは施設で暮らすんだよね?

すみれ

うん。身寄りのない18歳未満の子供は、施設に入らなきゃいけないんだって。

さち子

そうなんだ………

すみれ

本当は、嫌だよ。

すみれ

さーちゃんと離れて暮らすなんて………

すみれ

だって、私達ずっと一緒だったのに

すみれ

お母さんのせいで、私とさーちゃんが一緒に暮らせなくなるなんて、本当は嫌!

さち子

すみれちゃん………

すみれ

でも、さーちゃんもお父さんとお母さんに会いたいよね………

さち子

うん、私パパとママに会いたい!ずっと会えなかったから!

すみれ

…そうだよね

さち子

すみれちゃんと離れるのは寂しいけど…とうとう、お別れの時が来た、ってことなんだよね?

すみれ

うん

すみれ

寂しいね

すみれ

これから一緒にいられないなんて

さち子

…きっと、今までが不自然だったんだよね。

さち子

死んでるのに、ずっと魂だけで生きていて、もちろん年も取らずに、成仏もしないなんて………

すみれ

(何?いきなり大人みたいな話し方)

さち子

私、断片的だけど記憶を少し取り戻したみたい

すみれ

え?!

さち子

パパとママと、毎日楽しく暮らしてたことも、

さち子

殺されたことも………

さち子

思い出してきた………

すみれ

さーちゃん…

さち子

すみれちゃん、今まで仲良くしてくれてありがとう。

さち子

私、まず自分のお墓探して、パパとママに会ってくるよ

すみれ

…そう、決めたの?

さち子

うん。

さち子

きっと、記憶があればこの家の外に出られると思う。

すみれ

そっか………

さち子

もし、パパとママと会話できなくてもいいんだ。

さち子

久しぶりに、パパとママの顔を見たい

すみれ

すみれ

お墓の場所、教えようか?

さち子

ううん、自分で探したいな

さち子

時間かかっても、きっと見つけてみせる

すみれ

…分かった

その後、私は施設へ引っ越した。

あの家は競売にかけられたが、中古物件という条件や、不景気が重なってしまったせいで、未だに買い手はつかないらしい。

すみれ

(お母さんと離れて暮らしてから、受験勉強に集中できるようになった。)

すみれ

(施設のみんなも優しいし、毎日楽しい)

すみれ

すみれ

あっ

今日は、さーちゃんの月命日だ。

すみれ

(あれから一度もお墓にも、前の家にも行ってないんだよね)

すみれ

(さーちゃん、どうしてるかな)

ふと気づくと、私はさーちゃんのお墓に来ていた。

すみれ

やっぱり、お花も新しいし、お線香もあげたばっかり。

すみれ

さーちゃんのお父さんか、お母さんが来てたのかな………

すみれちゃん

すみれ

(今、呼ばれた気がした)

すみれ

そこにいるの?さーちゃん

 返事は無い。

すみれ

さーちゃんは、私の命の恩人で、

すみれ

姉妹みたいな存在で………

すみれ

そして、今でも私の一番の親友。

すみれ

すみれ

………あなたは、どうだった?

すみれ

私といて、楽しかった?

もちろん!

すみれ

なんてね。

すみれ

すみれ

じゃあ、またね

すみれ

さーちゃん

すみれちゃん

パパとママに会えたよ!

今までありがとう。 大好きだよ!

すみれ

今度は本当に聞こえた

すみれ

姿はないけど………

すみれ

(さーちゃん………)

すみれ

(私も、ずっと大好きだよ)

私達家族は、あの家に引っ越したせいでバラバラになってしまった。

でも、それは決してさーちゃんのせいではなく、今まで既に生じていた家族の「ほころび」が原因だ。

すみれ

私も、大学に入って、卒業して、結婚とかできるかな………?

すみれ

いつか、幸せな家庭を築きたいんだよね

すみれ

私の両親みたいな、宗教や他者に依存するような関係じゃなくて

すみれ

普通の家族が欲しいな………。

さち子

すみれちゃんなら、できるよ!自信持って!

さーちゃん

私のことを、見ててね。

私、あなたの分も生きて、幸せになるから。

私も、さーちゃんのこと、ずっと忘れないから。

-fin-

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