奪ワレル・・・

収録前に3人で話そうとみんなより早めに楽屋に入った

と、ドアが開いて暗い表情のラウールがゆっくりと足を引き摺って現れた

起きた時よりは声になるようになった

出しにくい感じはあるけども……

ただ……これでは歌えない

阿部ちゃんが俺の首を見て言うのに頷いた

朝、くっきりと首に浮かんでいた手形は時間が経つにつれ薄くなって、今は消えていた

優しいアイツらに心配はかけたくない

心配したメンバーが関わる事で被害が増える可能性だってある……

俺たちで、どうにかしないと……

3人顔を見合わせて頷いた

3人でとりあえずメンバーには話さない事を決めて時間を潰していたら照が最初に楽屋に入ってきた

めめは心配そうに俺たちを見ていた

ずっと喋らないわけにいかなくて声を出したらすぐにバレてしまった

まぁ、こんな掠れた声じゃバレないわけないだろうけど……

心配そうな顔の照に首を振って答えた

あ、阿部ちゃんがオフモードになってる

一点を見つめて止まっている阿部が3人に気付かれないようにそっとその前に移動した

3人はラウに集中していて、こちらには気付く様子はない

そんな姿を見ながら後ろ手で阿部の身体を叩く

よかった、戻ってきたみたいだ

小さな声で言われた礼に頷いて阿部ちゃんの前から離れて椅子に座る

それからみんなが揃って打ち合わせと収録が始まった

無事に収録が終わって、ラウールと一緒に家に帰ってきた

翔太は雑誌の撮影があって遅くなるからとテレビ局で別れた

不安げなラウールにニコリと笑顔を向けるとホッとした表情になる

あれから時間が経つにつれラウールの足は回復して軽く踊れるくらいにはなった

翔太も少しずつ声が出るようになっていたし、俺もほとんどいつも通りになった気はする

このまま3人とも元通りになって、昨日の出来事は夢だった…………

そう願った

願っていた