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ナンパでカラオケで人生崩壊?とも思ったけどお酒頼んでたのかな… 見事に「嫌な奴しかいねぇ」…
「っとぉ!ごめんねオバサン」
「はい貼って来たよ」
「もう上手すぎー」
「またオバサンのランドセルにオバサンマーク貼って来たの?」
「そ。ぶつかった時にね。あたし達人だから。オバサン全然気づいてないよ」
「あいつなんでオバサンって言うんだっけ?」
「もぉー何回その話させんの。だからぁー、苗字が[大羽(おおば)]でオバサン。ババアみたいにトロいからオバサン」
「もうヤバい何回聞いても笑える」
「あたしらまだ10代なのにそんな風に呼ばれてオバサン カワイソー」
「ねー。あたしだったら自殺するわ」
この間「Hiria」の最新コスメ使ったら1日だけで3人からナンパされたんだけど。あたしヤバくない?
____と、昼休み 口にしたら茜が一瞬「また自慢話かよ」みたいな顔をした。
茜はバレてないと思ってるだろうけどあたしは はっきり見た。
茜のくせに生意気だ。
だから茜意外の、あたしの友達全員に「明日から茜シカトね」とラインする。
自宅の最寄り駅で降りる前に半分以上の子がOKスタンプを返してくれた。
否定の声は上がらない。 当然だ、あたしの命令だもん。
__自分で言うのもなんだけど、あたしは結構イケてる顔だと思う。 脚だって学年の誰より長い自信がある。
要するに人の上に立つ才能ってやつがあたしには ある。 事実、あたしは小さい時から皆の中心だった。
勝ち組ってこういうことっしょ、と鼻歌を歌いながら自宅の最寄り駅で降りると
由美
駅のホームに設けられたベンチに座っていた女子高生が2人、あたしに駆け寄って来た。
陽奈
灯華
陽奈
由美
陽奈
灯華
陽奈
由美
陽奈
本当あたしって才能あるw
互いに近況を語らいながらカラオケボックスを目指して歩いていると
知らない男の人が笑みを浮かべて話しかけて来た。 あ、このパターンはいつものアレだ。
陽奈
陽奈
チラリと由美と灯華を見ると、2人とも落ち着かない様子で互いにアイコンタクトしていた。
……まぁ由美も灯華もカワイイけどあたしレベルじゃない。 ナンパされたのはこれが初めてなんだろう。
相手の顔もまぁ悪くないし、もしかしたら何か買って貰えるかも!
由美と灯華にとったら貴重な経験だし、あたしにとっても悪い話じゃないし
ここはノッとくか♪
陽奈
陽奈
陽奈
あたしは手早く皆の曲を入れてあげるとタンバリンを振り回した。
陽奈
あたしは張り切ってマイクを握りしめると液晶画面の前に立った。
狭い室内をグルリと見渡す。 由美と灯華がしきりにナンパして来たお兄さんに視線を送っていた。
陽奈
由美
灯華
由美と灯華は我に返ったように慌てて手を叩く。 合いの手もすぐに出来ないなんてどんだけお兄さんに夢中なんだ。
ま、それもあたしレベルの女が一緒に歩いてたおかげだよね♪ あたしは息を吸うと歌い始め_____
曲が止まった。 室内に空振りしたあたしの歌声が取り残された。
見るとお兄さんがリモコンで曲を停止させていた。
陽奈
マイク越しに抗議したけど、お兄さんはニコニコしてるだけだ。
エコーを伴ったあたしの声の残滓(ざんし)が無くなると、お兄さんはようやく口を開いた。
陽奈
陽奈
あたしは何とか声を滑り込ませた。 その声は掠れてるしいつの間にかマイクも口元から離れてる。
天井のミラーボールが、笑みが消えたお兄さんの顔を様々な色に照らした。 由美と灯華は制服のスカートを握りしめたまま俯いている。
お兄さんは席を立つと、部屋のドアを開けた。
いつの間に立っていたのか、女がのっそりと入って来た。
伸ばし放題の髪はボサボサで顔の半分を覆っている。 背は低く、猫背で更に小さく見える。
……この負のオーラ全開のやつは…
オバサン____大羽はモップのような前髪のすき間から ねっとりとした視線であたし達を撫でた。
大羽
大羽はなぜか あたしに視線を固定すると、いひひいひひ と肩を揺らした。 言い様の無い嫌悪感で鳥肌が立った。
大羽
大羽
ガタンっと大きな音がして我に返った。 見れば由美と灯華が鞄を握りしめて立ち上がっていた。
……由美達が何とかしてくれるんだ よかった…。 由美と灯華は肩を震わせながら早口でまくし立てた。
由美
灯華
陽奈
一瞬何を言っているのか分からなかった。 大羽の笑声が1オクターブほど高くなった。
由美と灯華はあたしの顔を見ずに そそくさと出口に向かった。
由美
陽奈
あたしは由美達の元に駆け寄った。肩を掴もうとした寸前、お兄さんが2人を守るように割って入った。
陽奈
由美と灯華は鞄を握りしめて顔を逸らしたままボソボソと答えた。
由美
灯華
陽奈
相変わらずあたしの方を見ようとしない2人にあたしは唾を飛ばして喚いた。
陽奈
お兄さんの顔が由美達に向いた。 由美達は顔を歪めるとあたしを睨み付けた。
由美
灯華
陽奈
由美
灯華
由美
灯華
そう言い残して由美と灯華は部屋を出て行った。 追いかけようとしたけど足が動かなかった。
大羽
大羽
大羽はあたしの鞄を掴むと、中身をソファーにぶちまけた。
陽奈
大羽はあたしの抗議を無視して物色を続ける。 やがて大羽の手は化粧ポーチに到達した。
大羽
大羽
陽奈
大羽
陽奈
大羽は警察手帳を掲げるみたいにスマホを顔の前で構えた。
大羽
陽奈
お兄さんがドアにもたれながら腕を組んだ。
冗談じゃない!
前に「Hiria」買ったから、あたしは本当に金欠なの!
なんで、なんであんな奴にあたしが…! でも断ったら動画が…
とりあえずお金は高校の友達から借りるとかして用意出来た。
翌週、指定された時間にカラオケボックスに赴くと、大羽はお兄さんと一緒に入り口で待ち構えていた。
リップを受け取った大羽の口から出たのはお礼の言葉ではなく、「次は ひぃりあの香水ね」だった。
「だ、だ、誰もリップで手打ちにするとか言ってないから。こ、断ったら動画ばら蒔くから」 冗談じゃない!
大羽の要求はどんどんグレードアップして行った。 お金が足りない。
始めは快く貸してくれた友達も次第に「また?」みたいな顔をするようになった。 「それよりお金返して欲しいんだけど」とも言われた。
それよりって何よ!あたしがこんなに困ってるのに!
バイトのシフトを増やしたり新しい服を買う為のお金を減らしたりしていると、どういうわけか友達はあたしから距離を取るようになった。
更に大羽の馬鹿が校門で待ち伏せとかするから、あたしは学年中から好奇の目に晒されるようになった。
「なんであんなブスと陽奈が?」 晒し上げだ。
「あのブスに弱み握られてるんじゃない?」 そう言ったのは、以前ハブにした茜だ。
ムカつくムカつくムカつく! なんであたしが こんな目にっ!
大羽は更に調子に乗って、土下座したら許してあげるとか言って来た。
冗談じゃない!なんであたしが大羽なんかに!
あたしは大羽なんかには屈しない。 大羽より下だなんてあり得ない。
だからお金がいる。 でも足りない。
足りない…足りない! 足りな
ね、陽奈にトイレの水ぶっかけたってマジ?
マジらしいよ
うわーヤバ
でも自業自得じゃない?
そうだよね。だってアイツ茜の財布盗もうとしたんだもん
茜カワイソー
本当サイアク。 あたしそれで人間フシンになりかけたからね
財布盗むとかマジあり得ない。アイツまだ謝って来てないんでしょ
陽奈ってそういうとこあるよね。あたし前から嫌いだった
あたしも。自慢話ばっかりだし。 ……あ、そうだ あたしね、この前街で陽奈見たんだけど
これ写真ね。見て陽奈の私服!
え、うわヤバ これ陽奈?うわーヤバ
オバサンくさっっ
思うに、イトコはHが土下座なんか死んでもごめん!ってなるのを読んでたんだろうな。
ま、自分が昔さんざんいじめた奴だもんな。 分からんでもない。
そっからはトントン拍子でH側の内部崩壊。 トモダチの財布盗もうとしたってんで、今Hはいじめられてる。
自慢の服もコスメも買うお金無いから、今のHは目も当てられない。 まさに「オバサン」。
Hに「オバサン」の称号を与えること。 それがイトコの復讐。
いやー恐ろしいね(゜_゜;)