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嫌な奴しかいねぇ☺

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嫌な奴しかいねぇ☺

1 - 嫌な奴しかいねぇ☺

♥

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2022年04月16日

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「っとぉ!ごめんねオバサン」

「はい貼って来たよ」

「もう上手すぎー」

「またオバサンのランドセルにオバサンマーク貼って来たの?」

「そ。ぶつかった時にね。あたし達人だから。オバサン全然気づいてないよ」

「あいつなんでオバサンって言うんだっけ?」

「もぉー何回その話させんの。だからぁー、苗字が[大羽(おおば)]でオバサン。ババアみたいにトロいからオバサン」

「もうヤバい何回聞いても笑える」

「あたしらまだ10代なのにそんな風に呼ばれてオバサン カワイソー」

「ねー。あたしだったら自殺するわ」

この間「Hiria」の最新コスメ使ったら1日だけで3人からナンパされたんだけど。あたしヤバくない?

____と、昼休み 口にしたら茜が一瞬「また自慢話かよ」みたいな顔をした。

茜はバレてないと思ってるだろうけどあたしは はっきり見た。

茜のくせに生意気だ。

だから茜意外の、あたしの友達全員に「明日から茜シカトね」とラインする。

自宅の最寄り駅で降りる前に半分以上の子がOKスタンプを返してくれた。

否定の声は上がらない。 当然だ、あたしの命令だもん。

__自分で言うのもなんだけど、あたしは結構イケてる顔だと思う。 脚だって学年の誰より長い自信がある。

要するに人の上に立つ才能ってやつがあたしには ある。 事実、あたしは小さい時から皆の中心だった。

勝ち組ってこういうことっしょ、と鼻歌を歌いながら自宅の最寄り駅で降りると

由美

あ、陽奈(はるな)

駅のホームに設けられたベンチに座っていた女子高生が2人、あたしに駆け寄って来た。

陽奈

由美!灯華(ともか)!

灯華

久しぶりだね~

陽奈

ね、え?中学以来だよね、え、めっちゃ久しぶり

由美

相変わらず陽奈オシャレだよね。「inスター」見たよ

陽奈

え、ありがとー。あれ「Hiria」の最新コスメ使っててさー、あ、それ使ったらさ、あたしナンパされてさ3人も

灯華

さすが陽奈だよねー
あたしら これからカラオケ行くんだけど、陽奈も来る?

陽奈

え行きたい。けど金ない金欠なんだよねあたし。「Hiria」買ったからさ。あれマジで高いからさー、めっちゃ行きたいどうしよー

由美

あ、お金はあたしらが出すよ?

陽奈

いいのぉ?じゃ行くー

本当あたしって才能あるw

互いに近況を語らいながらカラオケボックスを目指して歩いていると

あ、ねぇそこの女の子、ちょっといいかな

知らない男の人が笑みを浮かべて話しかけて来た。 あ、このパターンはいつものアレだ。

陽奈

何ーーあたしらカラオケ行くんだけど

へぇーいいじゃん。実は俺さ友達と約束してたんだけどドタキャンされてさ、暇してんだよね

陽奈

何もーナンパー?これで何人目よ。
女子高生に手ぇ出すのぉ?

悪いことはしないからさ~奢るよ俺

チラリと由美と灯華を見ると、2人とも落ち着かない様子で互いにアイコンタクトしていた。

……まぁ由美も灯華もカワイイけどあたしレベルじゃない。 ナンパされたのはこれが初めてなんだろう。

相手の顔もまぁ悪くないし、もしかしたら何か買って貰えるかも!

由美と灯華にとったら貴重な経験だし、あたしにとっても悪い話じゃないし

ここはノッとくか♪

陽奈

よし歌おー、あ、あたしリモコンやったげる原キー縛りね

陽奈

あたし「虹you」のダンス完コピしたの。灯華「西田カナ」好きだよね入れたげるお兄さん「ひげおとこ」歌ってよ

陽奈

盛り上がって行こーーっ!

あたしは手早く皆の曲を入れてあげるとタンバリンを振り回した。

陽奈

あ、1曲目あたしの「虹you」だ歌いまぁーーっす♪

あたしは張り切ってマイクを握りしめると液晶画面の前に立った。

狭い室内をグルリと見渡す。 由美と灯華がしきりにナンパして来たお兄さんに視線を送っていた。

陽奈

ちょっと2人ともあたし歌うってば

由美

…あっ……い、イエーイっ

灯華

イエーイっ

由美と灯華は我に返ったように慌てて手を叩く。 合いの手もすぐに出来ないなんてどんだけお兄さんに夢中なんだ。

ま、それもあたしレベルの女が一緒に歩いてたおかげだよね♪ あたしは息を吸うと歌い始め_____

曲が止まった。 室内に空振りしたあたしの歌声が取り残された。

見るとお兄さんがリモコンで曲を停止させていた。

陽奈

ちょっとお兄さぁぁーん?

マイク越しに抗議したけど、お兄さんはニコニコしてるだけだ。

エコーを伴ったあたしの声の残滓(ざんし)が無くなると、お兄さんはようやく口を開いた。

____「オバサン」がいたんだってね、君が小学生の時

陽奈

…………は?

大羽だからオバサン、トロいからオバサン……事あるごとにそう からかってたそうだね

その人が席に着いたり何か持ち上げたりするたびに君は しゃがれ声で「よいしょ」って言ったりしてたんだって?

あとぶつかるフリしてランドセルにおばあさんの落書きを貼り付けてた……「オバサンマーク」って言うらしいね?

陽奈

え……や、急に何……?

あたしは何とか声を滑り込ませた。 その声は掠れてるしいつの間にかマイクも口元から離れてる。

忘れたとは言わせないよ

天井のミラーボールが、笑みが消えたお兄さんの顔を様々な色に照らした。 由美と灯華は制服のスカートを握りしめたまま俯いている。

由美さん灯華さん、そして陽奈さん。君達のやったことは最低だ

俺は大羽昭子(あきこ)の従兄として君達を許さない

そして………もちろん当事者も

お兄さんは席を立つと、部屋のドアを開けた。

いつの間に立っていたのか、女がのっそりと入って来た。

伸ばし放題の髪はボサボサで顔の半分を覆っている。 背は低く、猫背で更に小さく見える。

……この負のオーラ全開のやつは…

当事者。君達が散々からかった、昭子だよ

オバサン____大羽はモップのような前髪のすき間から ねっとりとした視線であたし達を撫でた。

大羽

いひっ………ざまぁ…

大羽はなぜか あたしに視線を固定すると、いひひいひひ と肩を揺らした。 言い様の無い嫌悪感で鳥肌が立った。

大羽

いひっ…い、今の動画に撮った。ド、ドアがガラス張りだから そ、外からでも簡単に撮れた…

大羽

こ、これが いひっ出回ったら いひひひひっ

ガタンっと大きな音がして我に返った。 見れば由美と灯華が鞄を握りしめて立ち上がっていた。

……由美達が何とかしてくれるんだ よかった…。 由美と灯華は肩を震わせながら早口でまくし立てた。

由美

や、約束通り陽奈連れて来たから…っ

灯華

あ、あたしらの顔は晒さないでよね。声も変えるって約束だから

陽奈

…………はぁああ!?

一瞬何を言っているのか分からなかった。 大羽の笑声が1オクターブほど高くなった。

由美と灯華はあたしの顔を見ずに そそくさと出口に向かった。

由美

……じゃ、約束果たしたんで、あたしら帰ります

ご苦労だったね

陽奈

っ……ちょ……っと待ってよ!

あたしは由美達の元に駆け寄った。肩を掴もうとした寸前、お兄さんが2人を守るように割って入った。

陽奈

どういうこと、なに、あんたらはこうなるって分かってたの?

由美と灯華は鞄を握りしめて顔を逸らしたままボソボソと答えた。

由美

……いや、だって脅されてさ…。小学校の時の「遊び」、バラすぞって

灯華

あ、あたしらこれでも進路とか真剣に考えてるからさ…

陽奈

あ、あたしはどうなってもいいって言うの!?信じらんない!

相変わらずあたしの方を見ようとしない2人にあたしは唾を飛ばして喚いた。

陽奈

だ、だいたいなんであたしだけが悪いみたいになってんの?よいしょって言うやつ由美が一番ふざけてたじゃん!オバサンマークは灯華が描いてたし____

お兄さんの顔が由美達に向いた。 由美達は顔を歪めるとあたしを睨み付けた。

由美

違うし陽奈に命令されて嫌々やってただけだし

灯華

あたしも。くだらないってずっと思ってた

陽奈

ふ、ふざけないでよ あんたらだってオバサン、オバサンって笑ってたじゃん!急にいい子ぶってんじゃねぇよ!

由美

いい子ぶってない!よいしょって言うやつもオバサンマークも全部考えたの陽奈じゃん!

灯華

あたしらの意見とか無視じゃん今日も勝手に曲入れるし…陽奈のそういうとこ昔から嫌いだった

由美

あたしも。自業自得でしょ

灯華

あたしら悪くないから

そう言い残して由美と灯華は部屋を出て行った。 追いかけようとしたけど足が動かなかった。

大羽

いひひひひひっ!捨てられてやんのっざまぁ!いひひひひ

さて……どうする昭子

大羽

んーー…とりあえずー…

大羽はあたしの鞄を掴むと、中身をソファーにぶちまけた。

陽奈

ちょ……っと何してんの!

大羽はあたしの抗議を無視して物色を続ける。 やがて大羽の手は化粧ポーチに到達した。

大羽

あ、「オトート」のリップクリーム…

大羽

こ、このストロベリーの香り、欲しかったんだよね…いひひ

陽奈

……は?

大羽

お、「オトート」のストロベリーの香りのリップクリーム。欲しいって言ってるの…ら、来週の今日までね

陽奈

は、は、はぁあ?な、なんであんたなんかに!

大羽は警察手帳を掲げるみたいにスマホを顔の前で構えた。

大羽

も、もし断ったらさっきの動画、む、無加工でばら蒔くから

陽奈

っ……!

断らない方がいいと思うよ

お兄さんがドアにもたれながら腕を組んだ。

あんなのが世に出たら君は間違いなくジ・エンド…まともな人生は歩めないよ

そう考えたらリップくらい御安いご用だろ?

冗談じゃない!

前に「Hiria」買ったから、あたしは本当に金欠なの!

なんで、なんであんな奴にあたしが…! でも断ったら動画が…

とりあえずお金は高校の友達から借りるとかして用意出来た。

翌週、指定された時間にカラオケボックスに赴くと、大羽はお兄さんと一緒に入り口で待ち構えていた。

リップを受け取った大羽の口から出たのはお礼の言葉ではなく、「次は ひぃりあの香水ね」だった。

「だ、だ、誰もリップで手打ちにするとか言ってないから。こ、断ったら動画ばら蒔くから」 冗談じゃない!

大羽の要求はどんどんグレードアップして行った。 お金が足りない。

始めは快く貸してくれた友達も次第に「また?」みたいな顔をするようになった。 「それよりお金返して欲しいんだけど」とも言われた。

それよりって何よ!あたしがこんなに困ってるのに!

バイトのシフトを増やしたり新しい服を買う為のお金を減らしたりしていると、どういうわけか友達はあたしから距離を取るようになった。

更に大羽の馬鹿が校門で待ち伏せとかするから、あたしは学年中から好奇の目に晒されるようになった。

「なんであんなブスと陽奈が?」 晒し上げだ。

「あのブスに弱み握られてるんじゃない?」 そう言ったのは、以前ハブにした茜だ。

ムカつくムカつくムカつく! なんであたしが こんな目にっ!

大羽は更に調子に乗って、土下座したら許してあげるとか言って来た。

冗談じゃない!なんであたしが大羽なんかに!

あたしは大羽なんかには屈しない。 大羽より下だなんてあり得ない。

だからお金がいる。 でも足りない。

足りない…足りない! 足りな

ね、陽奈にトイレの水ぶっかけたってマジ?

マジらしいよ

うわーヤバ

でも自業自得じゃない?

そうだよね。だってアイツ茜の財布盗もうとしたんだもん

茜カワイソー

本当サイアク。 あたしそれで人間フシンになりかけたからね

財布盗むとかマジあり得ない。アイツまだ謝って来てないんでしょ

陽奈ってそういうとこあるよね。あたし前から嫌いだった

あたしも。自慢話ばっかりだし。 ……あ、そうだ あたしね、この前街で陽奈見たんだけど

これ写真ね。見て陽奈の私服!

え、うわヤバ これ陽奈?うわーヤバ

オバサンくさっっ

思うに、イトコはHが土下座なんか死んでもごめん!ってなるのを読んでたんだろうな。

ま、自分が昔さんざんいじめた奴だもんな。 分からんでもない。

そっからはトントン拍子でH側の内部崩壊。 トモダチの財布盗もうとしたってんで、今Hはいじめられてる。

自慢の服もコスメも買うお金無いから、今のHは目も当てられない。 まさに「オバサン」。

Hに「オバサン」の称号を与えること。 それがイトコの復讐。

いやー恐ろしいね(゜_゜;)

なんてな

実は全部俺が考えたんだよね~

やっぱり復讐系の話はバズるな~

伸びろ伸びろもっと伸びろ

そう言えばあいつら…Hじゃなくて陽奈と一緒にいじめてたあいつら…

なんてったっけ名前………まぁいいや。今回は俺達に協力してくれたから見逃したけど

やっぱりあいつらにも痛い目見てもらうか!

俺の「いいね」のために!

そうと決まれば早速オバサン__じゃない昭子に連絡して……

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ナンパでカラオケで人生崩壊?とも思ったけどお酒頼んでたのかな… 見事に「嫌な奴しかいねぇ」…

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