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〜彩莉 side〜
ジリリリ、ジリリリ、ジリ……カチッ
彩莉
手探りで、耳障りな目覚ましの 音を止める
それから薄らと目を開けた
部屋の窓から、朝日が差し込んでいる
時計を見ると、針は七時を指していた
あっ、私、藤咲彩莉です。 都立春舞高校の二年生
家の最寄り駅から、 電車で二駅先にあるんだけど……
彩莉
彩莉
慌ててベッドから飛び起きて、 壁にかけてある制服に着替える
姿見を見ながら髪を整えて、 お気に入りの桜の髪留めも付けて…… ……よし!
机に置いていたスクバを持って、 部屋から飛び出す
その勢いのまま、リビングに入った
彩莉母
彩莉
彩莉
返事を返しつつ、 お母さんに文句を言う
彩莉母
彩莉
そう言われると、言い訳できない……
彩莉母
彩莉
結局言い負かされて、 ダイニングテーブルの椅子に座って、 用意されていたトーストを食べ始めた
私の家、実はシングルマザーなんだ
私が小一の頃、お父さんが 病気で亡くなっちゃって、 それからはお母さんと二人きり
彩莉
実は、ほとんどお父さんのことが 記憶になくて
中学生の時、お母さんにどんな人 だったのかを聞いてみたんだけど、 どうしてかはぐらかされてしまった
それ以降、お父さんのことを 思い出させるのも悪いし、 ずっと聞けずにいるんだよね
そんな昔のことを思い出しながら、 チラリとテレビの方を見た
ニュースキャスター
ニュースキャスター
彩莉
この怪盗、最近よくニュースで 見かけるんだよね
色んなところに盗みに入ってて、 今まで失敗したことはないらしい
そればかりか、 姿を見た人も極僅かなんだって
それなら、何で盗みに来たっていう のが分かるのか、なんだけどね
時雨桜が現れたらしきところには、 必ず桜の花弁が一枚落ちているから、 らしい
詳しく言うと、 盗まれたものがあったところに
さらに、姿を見た人がほとんどいない せいなのか、あちこちで噂が 飛び交ってるんだよね
何もかも曖昧だから、みんな時雨桜の 話をする時は、自然と「らしい」を 語尾につける
性別不詳、 どんな格好をしてるのかも分からない
大体よく聞くのは、白髪の長い ポニーテールで、身長が高くて、 くノ一みたいな格好をしてるって噂
髪が長いことと、くノ一の格好を してるってところで、女性なんじゃ ないか、とも言われてる
けど最近、うちの高校で、 一気に広まった噂があって
『時雨桜の正体が相川真冬説』
相川真冬っていうのは、ちょっとした ことで高校内で有名になった人
彩莉
真冬は、たしかに髪を白く染めてて、 背も男子の平均より少し高い
それに、運動神経も抜群だけど……
彩莉
きっと、偶然噂と特徴が一致してる たけだ……と思ってる
彩莉
朝ごはんを食べ終えて、 家を出る支度をして、今度こそ、 学校に行く為にバッグを持った
それから玄関に行って、靴を履く
よし、準備完了!
彩莉
家を出て少し歩くと、道の先に、 見覚えのある人影を見つけた
彩莉
凪沙
この子は、私の中学からの友達で 親友の、佐野凪沙
高校デビューって去年前髪ぱっつんの ボブをミルクティー色にして、 それからずっとその色なんだよね
彩莉
私もやってみようかな、なんて 言ったけど、私は黒髪のままの方が 似合うらしいからやめておいた
凪沙
凪沙
彩莉
目を輝かせて聞いてきた凪沙に、 今朝のニュースを思い出しながら返す
凪沙って、噂話とかが 大好きな子なんだよね
だから、噂だらけの時雨桜は、 凪沙の格好の的
ニュースに出ると、 毎朝こんな風に話をする
彩莉
凪沙
彩莉
凪沙
彩莉
誰かが侵入してきたっていうのが、 監視室? みたいなところから、 一発で分かっちゃうだろうし
凪沙
凪沙
彩莉
彩莉
凪沙
それはびっくりだけど……その情報、 毎回どこで手に入れてるんだろう
凪沙
噂話になって、 途端に元気に話し出した凪沙
彩莉
凪沙
彩莉
じゃあ、その噂って 嘘になるんじゃない!?
凪沙
“一人なら”? ……って、どういうことだろう
凪沙
彩莉
彩莉
凪沙
そうやって話しながら歩いていると、 いつの間にか駅に着いていた
ドンッ
彩莉
凪沙と話をして前を見ていなかった せいで、すれ違いざまに中学生くらい の女の子とぶつかってしまった
???
あ、無言で去って行っちゃった……
彩莉
改札を通って電車に乗って、 ドア近くの手すりにつかまる
ふと、視界の端に、 チラリと白い髪が映った
もしかして、と思って、 その方をよく見てみる
彩莉
私達って家が近くて、同じ駅から乗る から、たまに車両が被る時があるんだ
凪沙
そっぽを向いていた私に気づいて、 凪沙が話しかけてきた
彩莉
凪沙の方に向き直って、そう答える
実は、私と真冬がいとこ同士だって ことは、誰にも言ってないんだよね
だから凪沙も知らないし、 私と真冬もあまり関わろうとしない
彩莉
それで近づけず、関わろうにも 関われなくて、お互いのことも 詳しいとこまでは知らない
真冬が学校で有名人になったの だって、その出来事を、噂好きの 凪沙に聞いて知った話だし
それより、みんなに人気な真冬と、 平凡な私が仲良くしてると、 普通におかしいでしょ?
きっと、そういうのを気遣って くれてるんだ……って、思ってる
彩莉