テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

一覧ページ

魔法使いは何を唱う？－紫苑の叛逆者－

第17話 - 夢か現か幻か

2024年02月09日

#nmmn

#utit

#srmf

#ursk

#96tk

#nrs

かえで🍁✒️

〜真冬 side〜

ノアさんから招集がかかったのは、それから間もない頃のことだった

ノア

……これは、明らかな宣戦布告だね

ノアさんが見せてきた一枚の紙には、こんなことが書かれていた

彼方

明後日の……なんて読むんだこれ？

翔太

“子字の正刻(ねじのせいこく)”。ちょうど0時のことです。

翔太

つまり、その時間にあの公園に来いってことだと思うけど……

真冬

流石に危なくない？　相手の正体と目的が分かったとはいえ、細かい素性とかは何も知らないし……

シャノン

罠の可能性だって十分あるもんね……

優

けどこういうの、蹴ったら蹴ったであんま良くない気もするけどなぁ……

渉

まぁ、相手に悪印象与えることになるのは確実だろうな

百瀬

……ん〜、俺は行った方がいいと思うけど……

彼方

ちなみに理由は？

百瀬

確かに危ないかもしれんけど、相手のこと知るチャンスだとも思いません？

百瀬

それに……これはちょっと自意識過剰かもしれないっすけど、俺らが戦って負けるとも思えないし

翔太

……うん、確かに一理あるかも。

翔太

昔のベルと対峙して、勧誘までしてるなら、少なくとも僕個人の力は知ってるはず。

翔太

相手の数は未知数だけど、あっちが僕ら7人を相手にして、力で襲ってくるとも限らないしね。

翔太

ただ警戒するに越したことはないから、気は抜かずに行く感じで

真冬

そうだね

短い話し合いの結果、相手の宣戦布告に乗ることが決まった

彼方

じゃあ、明後日までに色々準備しておくか

優

そうっすね

渉

って言っても、今できることって言えば……

棗

……いつも通りの訓練やな！

真冬

力はあるに越したことはないしね。

真冬

それに、今までもこうやって切り抜けて来たし！

相手の情報に関しては、なるせ君が本部で手に入れてくれたものが、今僕らが知れる情報の上限だと思う

だったら他にできることは、万が一に備えての戦闘訓練だ

あちらがどんな出方をするにしろ、身を守る手段は持ってた方が良いし、力を持っていて損はない

翔太

じゃあ早速始めようか！

2日後

約束の日　午前0時

〜百瀬 side〜

宣戦布告状通り、指定された日時に、みんなであの公園に集まる

翔太

……今のところ、特に闇の気配はないね

彼方

まさか言い出しっぺが遅刻かよ……

真冬

いや、流石にそれはないと──。

真冬

──っ！！

何かを感じ取ったのか、まふ君が言葉の途中で口をつぐむ

百瀬

（俺も感じたけど……この魔力の気配は……）

???

……ん？　想定より随分と早い到着だな

こっちの調査だと、いつも時間に超ルーズ〜とか出てたんだけどねぇ

木々の暗がりから顔を出してきたのは、紫髪の若い男女2人組

よく見ると、顔が似てるような……

翔太

君達が僕らを呼び出したの？

月明かりに照らされる2人を前に、最前にいる天月君がそう切り込む

???

あぁ、そうだ。改めて自己紹介をしておこうか。

アスト

俺は影山アスト。闇属性至上主義者連盟、通称BoEに所属している

アスナ

私は影山アスナ。同じくBoE所属で、私らは兄弟。以後よろしくね〜、救世主さん達

棗

“影山アスト”……！！

つい最近聞き覚えのある名前に、みんなで身構える

アスト

そう警戒するな。俺達は今日、お前達と交渉しに来た

真冬

交渉……？

アスト

あぁ。……お前達、BoEに入るつもりはないか？

彼方

その勧誘の為だけにこんな深夜に呼び出したのかよ

アスナ

魔法自体が一般人に知られてないことなんだし、別に人気のない時間帯を狙うのは普通でしょ？

アスナ

それにアンタ達、現世でもそれなりに有名みたいだから、気を遣ってあげたんだけど

百瀬

（俺達それぞれについて、一通り素性は調査済みってわけか……）

どこから情報を仕入れたのかは知らないけど、どうやらあちらも無策で来たわけではなさそうだ

アスト

それで、どうだ？　俺達BoEに手を貸す気は……

翔太

あるわけないでしょ。

翔太

それにそっちからしても、これは分かりきった結果なんじゃないの？

少し強い口調で、相手を突っぱねる天月君

アスナ

あっそ。なぁんだ、つまんない人達

アスト

……残念だ。

アスト

行くぞ、アスナ

アスナ

はーいっ

優

え……？？

百瀬

ちょっ……え？　お前らの用それで終わり？

あまりにあっさりとした様子で背を向けて去ろうとする2人を見て、つい引き止めてしまった

アスナ

そうだけど、それが何？　先に言っておくけど、誘いに断ったんだから情報は渡さないよ

情報に関しては、この流れになって別に期待はしていない

けど、俺の印象のBoEはもっと、目的の為なら何でもする、みたいな奴らだったんだけど……

アスト

……あぁ、そういえば一つ、忘れ物をしていたな

百瀬

（忘れ物……？）

アストがそう言ったかと思えば、こちらに……詳しく言うと天月君の方に、スタスタと歩いてくる

翔太

……？

翔太

…………ぇ……？

彼方

……？　天月？

そのアストを見た天月君が、何故か目を見開いて、ありえないとでも言うような顔をしていた

翔太

な、なんで……？　だって、もう“グレンさん”は……！

〜翔太 side〜

今僕の目の前にいる人は、間違いなくグレンさんだった

あの優しい笑顔を、僕が見間違えるはずがない

だけど、ちゃんと異変にも気づいてる

彼は、もうこの世には生きていない、とっくにいなくなっている人だって

──影山家……元サーペンツ家は、闇一族の中でも、特に幻術とかそんな力に長けた家だったらしくて

不意に、この前聞いたなるせ君の言葉を思い出す

幻術……幻を見せて、人を惑わせる力

翔太

（……分かってる……コレは偽物だって、幻影だって、分かってるけどっ……！！）

頭では理解できているのに、身体がそれを理解しようとしてくれない

翔太

（ダメだ……あの手を、取っちゃ──）

──ショウタ！！！

翔太

っ！！

突然、陰った思考を切り裂くように、ベルの声が頭の中に響く

翔太

（そうだ、何してんだ“俺”っ！！）

大丈夫、この距離ならまだテレポートで逃げられ──

アスト

もう遅い

〜百瀬 side〜

百瀬

は……！？

真冬

えっ、天ちゃん！？

棗

つ、つっきー！？　どこ行った！？

突然の出来事に、みんなが困惑する

迫り来るアストから逃げる為なのか、突如として姿を消した天月君

多分いつものテレポート…… なんだろうけど、何故か辺りを見回しても、どこにも彼の姿が無い

俺達を置き去りにするわけないし、だとしたら、一体どこに……！？

アスト

お前達はこっちだ

棗

……っ！？　な

彼方

ちゃんくろ！？

優

何がどうなって……おわっ！？

渉

坂田！！！　……っ！？

真冬

うらたさん！？

彼方

何なんだよこれ……！？

アストに近づかれた後、さっきの天月君と同じように、みんなが次々に姿を消していく

百瀬

（もしかして最初の天月君のは、テレポートじゃない……！？）

百瀬

（でもじゃあ、一体何で──）

真冬

そらるさん！！！

百瀬

っ！？　なっ……！！

考え事をしているうちに、兄貴の姿までなくなっている

百瀬

（何で……一体ここで何が起きて……！？）

真冬

……っ！！

真冬

“なるせ君、逃げて！！”

百瀬

……え？

百瀬

（あれ……？　まふ君の、このセリフ……）

この場面を“みる”のが、決して初めてではないような、そんな既視感に囚われる

そのせいか、逃げろと言われているのに、身体が動かなかった

百瀬

……あっ！！！

直後、まふ君も姿を消す

百瀬

（何だよ……何なんだよ、この状況は……！！！）

これは、だって……！！

──あの時視た“夢”と、全く同じじゃねぇか……！！！

百瀬

……“みんな、待って……！！！”

夢の終わりに俺が叫んでいた言葉を、そっくりそのまま、無意識に呟く

百瀬

（まさか……本当に、あれは……）

鳴海家本部であの夢を見た時まふ君の心を読めてしまった時魔法界で不思議な光景を見た時

ずっとそんなわけないって、どこか他人事のように感じて軽く流していた

……だけど、今のこれは夢じゃない、間違いなく現実で起きていることだ

百瀬

（俺はあの時、無意識に能力で今日の予知夢を見て……。）

百瀬

（……この結末を、知ってたのに……。）

百瀬

（俺が、救える筈だったのにっ……！）

百瀬

（っ俺のせいで、みんなは──！！）

百瀬

……俺の……せいで……！！

魔法使いは何を唱う？－紫苑の叛逆者－

作品ページ

次の話を読む

この作品はいかがでしたか？

2件

え？な…待って…え？…えーと… １回、頭を整理しよう！まずBoEから完全なる宣戦布告を受けて訓練だの準備をして公園に行って影山兄妹が姿を現し7人を勧誘…でもそんな誘いに乗る訳もなく…そしたらグレンさんの幻覚を見たあまちゃんが消えて他のみんなもっ！？まふくんのあの言葉はなるせちゃんが見た夢まさか予知夢だったの！？どうなるんだ！？話が動き出したあああ！！続き楽しみにしています！

かえで🍁✒️

プロフィール