10タップじゃないアホ美ちゃん

アホ美はトイレで女子の会話を聞く前からずっと

蓮斗のことが気になっていた

落書き騒動や靴を隠された時

殆どの生徒が目をそらしたり

ヒソヒソと話をしたりするだけで助けようとはしなかった

事情を知らなかったアホ美はその態度にイラっとしたが

恐らく他の生徒達はきっと

蓮斗の二の舞になるのを恐れて何もできなかったのだろう

蓮斗はアホ美に声をかけてきたり

いつも友美のことを気にかけているように見えたが

蓮斗もそれ以上のことができずにいたのだ

そして女子の会話を聞いて確信したアホ美は

蓮斗から詳しい事実を聞き出した

アホ美の力強い言葉に

蓮斗の中で何かが変わった

帰り道

アホ美は蓮斗にも家の事情を話し

時々、聖夜が協力や助言をしてくれていることを明かした

友美からは自然と笑みがこぼれ

その笑顔につられて蓮斗も笑顔になった

翌日

アホ美の元気な姿に

友美は心の底から嬉しさが溢れていた

勢い良く教室の扉を開くアホ美

途端に静まり返る教室内

黒板に人だかりができている

幸枝が笑みを浮かべながら黒板を指差す

黒板に貼られた一枚の紙

近づいて良く見ると

それは聖夜の親戚が起こした

天王寺殺人未遂事件の新聞の切り抜きだった