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潤間朝日

(はぁ〜・・・)

潤間朝日

(どうしたら
良いんだよ)

潤間朝日

(卒業まで誰にも
バレたくないのに)

潤間朝日

(あともう少しなんだよ)

潤間朝日

(このまま誰にも
詮索されたくない)

潤間朝日

(若葉のためにも・・・)

潤間朝日

(絶対に隠し
通したいんだ)

朝日は思い悩んだ表情のまま 自宅のドア前まで来ていた

潤間朝日

(だめだ・・・)

潤間朝日

(若葉にこんな
泣き顔見せれない)

潤間朝日

(しっかりしろ!俺)

朝日は両手で自分の頬を パシンと叩いて気合いを入れる

潤間朝日

(よっし!)

潤間朝日

ただいまー!

朝日が元気に呼びかけるが

潤間朝日

あれ?若葉?

いつもなら笑顔で 駆け寄ってくるはずの 若葉の姿がない

潤間朝日

どうしたんだ?

潤間朝日

ん?

朝日が不意に足元を見ると 乱雑に脱ぎ捨てられた 運動靴があった

潤間朝日

(と、父さん!?)

潤間朝日

(帰って来てたのか)

潤間朝日

!!!!!!

朝日の脳裏に 嫌な予感が思い浮かぶ

潤間朝日

(ま、まずい!若葉!)

朝日は一抹の不安を感じながら 部屋へと走っていく

潤間朝日

若葉!

朝日が部屋に入ると

潤間大和

おー!帰ってきたか!

潤間大和

おかえり!

ほろよい気味の大和が 上機嫌と言った様子で 朝日に呼びかける

潤間若葉

・・・・・

若葉はうつむいたまま 椅子に座っていた

潤間朝日

な、なんだよ・・・

潤間朝日

ん?

朝日はテーブルの異様さに気付いた

潤間朝日

なん・・だよ・・これ

テーブルの上には 出前でも取ったのだろうか 大量の寿司が敷き詰められたパックが 無数に置かれていた

潤間朝日

こんなの買う金
どこにあったんだ?

潤間大和

はぁ?金だ?

潤間大和

なーに言ってんだよ

潤間大和

あるだろ?

潤間朝日

は?

潤間大和

ホレ!

大和は朝日に 何かを投げつける

潤間朝日

(なんだ?)

朝日は不思議そうに それを手に取る

潤間朝日

!!!!!!

潤間朝日

こ、これは・・・

それを見た瞬間、朝日の顔は 血の気が引いた様に真っ青になる

潤間大和

お前も水臭いよな

潤間大和

俺に黙ってそんなに
溜め込みやがって

潤間朝日

これは俺の貯金だろ

大和が朝日に投げつけたものは 朝日が必死にバイトをして 稼いだ給料を貯金していた通帳だった

潤間大和

いいじゃねーかよ

潤間大和

家族だろーが

潤間朝日

何が家族だよ!

潤間朝日

いつもは他人だ
って言ってるくせに

潤間朝日

返せよ!これは
俺が必死に稼いだ金だ!

朝日は激昂し 大和の胸ぐらを掴んで詰め寄る

潤間大和

うるせーなぁ
男がグチグチ

潤間朝日

なんだと!?

潤間大和

つーか、この金は俺の
おかげで稼げた様な
もんだろーが!あぁ?

潤間朝日

は?どういう意味だ!

潤間大和

なら聞くがよ?

潤間大和

お前が仮に
ホームレスだったら

潤間大和

こんなに稼げたか?

潤間大和

貯金できたか?

潤間朝日

何意味わからない事
言ってんだよ!

潤間大和

お前がこの金を稼げたのは

潤間大和

安心して暮らせる
家があったからだろ?

潤間朝日

はぁ?

潤間大和

住所不定だったら
どこも雇っては
くれなかったろ?

潤間大和

て事は、つまり!

潤間大和

お前が金を稼げたのは

潤間大和

他人であるお前を
家に置いてやってた
俺のおかげだ!

潤間大和

違うか?

潤間朝日

ふざけんな!

潤間朝日

そんな無茶苦茶な
話があるか!

潤間朝日

俺は──

朝日の言葉はそこで途切れた

潤間朝日

わ、若葉・・・

潤間朝日

その顔・・どうした?

潤間若葉

・・・・・

涙を浮かべてうつむく若葉の頬は 腫れ上がり鼻からは血も出ていた

潤間朝日

も、もしかして・・

潤間若葉

ごめんなさい
お兄ちゃん・・

潤間若葉

私・・止めたんだけど

朝日が帰宅してくる数時間前

潤間若葉

ん?お父さん?

潤間大和

ああ・・若葉か

潤間若葉

お兄ちゃんの部屋で
何やってるの?

潤間大和

見てみろよコレ

潤間大和

朝日のヤツ

潤間大和

俺に黙ってこんなに
貯金してやがったよ

大和は不敵な笑みを浮かべ 若葉に通帳を見せつける

潤間若葉

!!!!!!

潤間若葉

(それはお兄ちゃんの)

潤間大和

今日は寿司でも食うか

潤間大和

それから──

潤間若葉

ダメだよ!お父さん!

若葉は大和の手から 通帳を奪い取る

潤間大和

あぁ?なんだ?若葉

潤間若葉

これはお兄ちゃんが
寝る間も惜しんで
必死に貯めたお金

潤間若葉

勝手に使っちゃダメだよ

潤間大和

あ?若葉!そりゃ
何の真似だ?

潤間若葉

コレはダメ!

潤間若葉

ダメなの!

若葉は通帳を 抱きしめる様に その場にうずくまる

潤間大和

そいつをよこせ!

潤間若葉

だからダメだって!

潤間若葉

コレはお兄ちゃんの!

潤間大和

よこせってんだよ!

潤間大和

オラァ!

大和は若葉の腹に足蹴りする

潤間若葉

やめてお父さん

潤間大和

うるせー!

潤間大和

さっさとよこせ!

大和は若葉の頬を 何度も平手打ちしながら 通帳を奪い取る

潤間若葉

お父さん!お願い!
それだけはやめて!

潤間大和

黙れ!ガキが
口答えすんな!

大和はそう捨て台詞を吐くと 通帳を持ったま部屋を後にする。

潤間若葉

お兄ちゃんの
お金が・・・

潤間朝日

・・・・・

朝日は怒りに満ちた表情で うつむき拳を握りしめる

潤間若葉

ごめんなさい
お兄ちゃん

潤間若葉

お兄ちゃんの
大切なお金なのに

潤間若葉

私・・私・・

潤間朝日

・・・・・

潤間大和

何謝ってんだよ

潤間大和

他人のこいつに
家を提供してやったんだ

潤間大和

こんなはした金
使ったってバチは──

潤間朝日

うわぁぁぁ!

朝日は怒りのままに 大和に殴りかかる

潤間大和

うぐっ

大和は殴られた衝撃で 椅子から転げ落ちる

潤間若葉

お、お兄ちゃん!?

若葉は、いくら殴られようとも やり返さず耐えていた朝日が 大和を殴った事で 驚きを隠せず呆然と立ち尽くす

潤間朝日

お前ふざけんな!

朝日は倒れ込む大和の胸ぐらを掴む

潤間大和

なんだコラ!

潤間大和

あんな金くらい──

潤間朝日

金が欲しいんなら
好きなだけやるよ!

潤間大和

はぁ?

潤間朝日

けど俺の怒りは
金の事じゃない!

潤間大和

金じゃねーだ?

潤間大和

だった何だって──

潤間朝日

何で若葉に
手をあげた!?

潤間若葉

お兄ちゃん・・・

潤間朝日

確かにあんたが
言う通り
俺は他人だよ!

潤間朝日

好きなだけ殴れば良い

潤間朝日

けど若葉は血の繋がった
唯一の家族だろ!?

潤間朝日

そんな家族を何で
躊躇なく殴れる?

潤間朝日

子供を護る立場で
あるはずのあんたが

潤間朝日

何でこんな事すんだよ!

潤間大和

ガキが一丁前に
説教か?あ?コラ!

潤間大和

生意気言ってんじゃ
ねーぞガキがぁ!

潤間朝日

ガキだからなんだ!

潤間朝日

大人のくせにガキに
言われてんじゃねーよ

潤間大和

んだとコラァ!

潤間若葉

や、やめてよ・・

潤間若葉

2人とも・・・

潤間若葉

ぐすっ・・・

若葉は言い合う2人に戸惑いながら ただ涙を流すことしかできない

潤間朝日

若葉は逃げろ!

潤間若葉

で、でも・・・

潤間朝日

でもじゃない!

潤間朝日

今のこいつは
何するか分からない

潤間朝日

若葉にも被害が
及ぶかもしれない

潤間朝日

それだけは嫌なんだ!

潤間若葉

で、でも、それじゃ
お、お兄ちゃんが・・

潤間朝日

良いから早くしろ
って言ってんだ!!!

潤間朝日

若葉!!!

朝日は声を荒げる

潤間若葉

私・・・

潤間若葉

助けを呼んでくるから

潤間若葉

待っててお兄ちゃん

若葉は涙を流しながら 部屋から出ていく

家を飛び出した若葉は 涙を流しながら 薄暗い住宅街を走る

潤間若葉

(でも・・誰に
助けを求めたら良いの)

潤間若葉

(誰か・・誰か・・)

潤間若葉

(あ!そうだ!)

潤間若葉

(椿先生なら!)

潤間若葉

(あ、いや・・・)

潤間若葉

(でもそうしたら
お兄ちゃんがずっと
耐えてくれてた意味が)

潤間若葉

(いいや!今は
お兄ちゃんの
命の方が大事!)

若葉はスマホを操作して 茉莉奈に電話をかける

潤間若葉

(お願い・・椿先生)

潤間若葉

(出て!お願い!)

八雲賢斗

うー・・ん

夜の学校の職員室では 賢斗が朝日の生徒資料を見つめながら 何やら顔をしかめていた

椿茉莉奈

お疲れ様!

椿茉莉奈

はい!コーヒー!

茉莉奈は賢斗のデスクに 缶コーヒーを置く

八雲賢斗

あ、椿先生・・・
ありがとうございます

椿茉莉奈

また潤間くんの事?

八雲賢斗

え、えぇ・・まぁ

椿茉莉奈

何かあった?

八雲賢斗

いや、実は今日ですね

八雲賢斗

放課後に敷島から
気になる事を
言われましてね

椿茉莉奈

敷島さん?

椿茉莉奈

敷島さんって
八雲先生のクラスの?

八雲賢斗

はい・・・

椿茉莉奈

何を言われたの?

八雲賢斗

潤間が父親から
虐待を受けている
可能性があるって

椿茉莉奈

え?虐待?

八雲賢斗

ほら・・潤間って
いつも顔に傷をつくって
登校して来ますよね?

椿茉莉奈

えぇ・・そうね

八雲賢斗

て事は喧嘩してる
って事ですよね?

椿茉莉奈

ま、まぁ、多分ね

八雲賢斗

にしては潤間の手が
綺麗すぎるって言うんです

椿茉莉奈

綺麗?

八雲賢斗

喧嘩をしてるんなら
当然潤間だって

八雲賢斗

誰かを殴ってる訳でしょ?

椿茉莉奈

まぁ、そうよね

椿茉莉奈

でなきゃそれは
喧嘩じゃなくて
一方的な暴力だからね

八雲賢斗

でも潤間の手は
誰かを殴ってるとは
思えないくらいに

八雲賢斗

傷ひとつ無くて
綺麗だって・・・

椿茉莉奈

た、確かに
それが本当なら
変な話よね・・

八雲賢斗

そう考えたら
疑問が解決するんですよ

椿茉莉奈

疑問?

八雲賢斗

俺たち教師はみんな

八雲賢斗

潤間はいつも
他校の生徒との
喧嘩に明け暮れている

八雲賢斗

そう思ってました

椿茉莉奈

・・・・・

八雲賢斗

でもどこで喧嘩を
してるんだろう?って

椿茉莉奈

まぁ、学校の外じゃない?

椿茉莉奈

他校の生徒と
喧嘩してるんだし

八雲賢斗

にしては近隣の方や
警察からの苦情や通報が
一件も無いですよね?

椿茉莉奈

あ!確かに!

八雲賢斗

それに誰も潤間が
喧嘩している場面に
遭遇してない

八雲賢斗

でも、潤間の顔の傷が
喧嘩によるものじゃ無くて

八雲賢斗

虐待によって出来た
傷なんだとするなら

八雲賢斗

その疑問が解決します

椿茉莉奈

確かに・・・

八雲賢斗

でもそれだと
何で潤間は誰にも
言わないんだ?

八雲賢斗

助けを求めないんだ?

八雲賢斗

って新たな疑問が
生まれるんですよね

椿茉莉奈

妹のためかしら?

八雲賢斗

え?

椿茉莉奈

自分が誰かに助けを
求めたりしたら

椿茉莉奈

次は妹が虐待を
受けるかもしれない

椿茉莉奈

それを危惧するあまりに
誰にも打ち明けられない

椿茉莉奈

そう考えたら
辻褄合わない?

八雲賢斗

あ!それだ!

八雲賢斗

なら潤間は
こうしてる今も──

プルルルル

賢斗の言葉を遮る様に 茉莉奈のスマホから 着信音が鳴り響く

椿茉莉奈

あ、ごめん!私だわ!

八雲賢斗

あ、いいですよ

八雲賢斗

出てください

椿茉莉奈

ごめんね

茉莉奈はそう言うと スマホの画面を確認する

椿茉莉奈

え?

八雲賢斗

ん?どうかしました?

椿茉莉奈

潤間さんからだわ

八雲賢斗

潤間?

八雲賢斗

もしかして妹の?

椿茉莉奈

えぇ・・・

椿茉莉奈

でもどうしたんだろ?

椿茉莉奈

潤間さんから電話なんて
珍しいわね

八雲賢斗

何かあったんでしょうか?

椿茉莉奈

とりあえず出てみるわ

茉莉奈は若葉からの 突然の着信を疑問に思いながらも 通話ボタンをタップする

Mask of the Delinquent

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