昼休み
佳澄
静かでいいな
珠希
いつもは賑やかだもんね
佳澄
……賑やかというより嵐だよ
珠希
あはは
カチャ
突然ドアが開く
竜一郎
佳澄ちゃ〜ん♪
佳澄
……
珠希
噂はなんとやらだね
竜一郎
一緒にお昼食べようよ♪
佳澄に抱きついた
佳澄
おい! 抱きつくな!
竜一郎
照れてるの?
佳澄
て、照れてねーから!
佳澄
一緒に食べるんなら、女の子にしろよ!
竜一郎
えー
竜一郎
オレ、佳澄ちゃんと一緒に食べたいのに〜
珠希
(見てておもしろいな。このふたり──)
佳澄
とにかく離れろ!
なんとか引き剥がそうとする
佳澄
珠希、コイツを引き剥がすの手伝ってくれ──
竜一郎
佳澄ちゃん
竜一郎
オレがいんのに、ほかの男の名前なんて呼ばないでよ
唇を尖らす
佳澄
……頬っぺた膨らませても、全然かわいくないからな?
珠希
──ぷっ
佳澄
笑ってないで手伝えって!
珠希
ゴメンゴメン──あははは
謝るも珠希は口を押さえ、笑いを堪えるので精いっぱいだった──
数時間後
下校
竜一郎
ねーねー、佳澄ちゃん
竜一郎
どっか遊びに行こうよ〜♪
佳澄
パス
竜一郎
カラオケ? ゲーセン?
佳澄
パスだって、言ってんだろ
珠希は寄るところがあるからと言って、さっき別れた
竜一郎
あ、それともオレん家へ行く?
佳澄
なんでそうなるんだ?
佳澄
ってか、行かないぞ
佳澄
あと、目を輝かせるな
佳澄
佳澄
あのな、竜一郎
竜一郎
ん?
佳澄
俺じゃなくて、ほかのやつを誘えばいいだろ?
佳澄
俺と違って交友関係は広そうだし、誰かしら──
竜一郎
佳澄ちゃんだから、誘うんだよ
佳澄
へ?
竜一郎
佳澄ちゃん以外のやつなんか誘ったって、何の意味もねーし
佳澄
……竜一郎
竜一郎
…………佳澄ちゃんはマジで嫌?
竜一郎
オレと一緒にいるのは迷惑?
佳澄
……それは
竜一郎の真剣なまなざしに佳澄は何も言えなくなった
佳澄
(ん?)
佳澄が視線を逸らした先に、赤いワンピースを着た髪がボサボサの女が歩いてきた
女
…………
なんとなく薄気味悪い
佳澄
……!
女は視線に気づかず通り過ぎっていった
背すじが寒くなる
佳澄
(……なんだ、今のは?)
竜一郎
佳澄ちゃん
振り返ると、竜一郎がムッとしていた
竜一郎
よそ見、しないでよ
佳澄の腕に抱きつく
竜一郎
佳澄ちゃんの視界に入っていいのは、オレだけなんだからさ
すっかり拗ねていた
竜一郎がこうなってしまうと、あとあと面倒くさいことになるのは経験上わかっている
佳澄
……はぁ
ため息をし、竜一郎をどう宥めるか模索し始めた
翌朝
珠希
おはよう。佳澄くん
佳澄
……おはよう
珠希
?
珠希
疲れた顔してるみたいだけど、大丈夫?
佳澄
……ちょっとな
きのうのことを一部始終話す
珠希
それは大変だったね
珠希は苦笑を浮かべた
佳澄
……まあな
佳澄
佳澄
さっき険しい顔で、スマホの画面見てただろ?
佳澄
なんかあったか?
珠希
あー、たまたまネットニュースを見ててね
珠希
駅前商店街のところで
珠希
通り魔事件があったみたいでさ
佳澄
通り魔……
佳澄
(駅前商店街って……)
佳澄
(きのう、俺と竜一郎がいた場所の近くだよな)
珠希
犯人は女の人で、すぐ捕まったって
珠希
幸い刺された人も、命に別状はなし
佳澄
……そうか
佳澄はきのうの赤いワンピースを着た髪がボサボサの女を思い出した
もしかして犯人は──
佳澄
(いや、まさか)
すぐに考えを打ち消す
ゔゔゔ
佳澄
…………
珠希
また竜一郎くんから、お昼の誘い?
佳澄
なんで、あいつはいつもオレを誘うんだ……
今日も佳澄はため息をつく









