朝
下駄箱を開けると、折りたたんだ紙片が入っていた
佳澄
……ん?
佳澄
なんだ?
紙片を広げる
今日の放課後 体育館裏に来てください 待ってます
佳澄
──誰からだ?
首を傾げる
差出人の名前は書かれていない
佳澄
(少なくとも、竜一郎じゃないな)
佳澄
(わざわざメッセージを下駄箱なんて、入れないだろうし)
佳澄
佳澄
──放課後、体育館裏へ行ってみるか
お昼
竜一郎
ねー、佳澄ちゃん
竜一郎
今度の休み、どっか行こう
佳澄
どこに?
竜一郎
佳澄ちゃんの行きたいとこ♪
佳澄
抱きつくな
佳澄
弁当が食いづらいだろうが
珠希
ふふ。相変わらずだね
竜一郎
ふたりっきりに、なれるとこがいいよね
佳澄
……お前とふたりっきりになったら
佳澄
身の危険を感じるから、べつにいい…………
竜一郎
照れなくだっていいのに……☆
佳澄
照れてない!
珠希
(おもしろいな、このふたり──)
佳澄
珠希、引き剥がすの手伝ってくれ──
放課後
数時間後、放課後になり佳澄は体育館裏にやってきた
竜一郎と鉢合わせするものの、なんとか撒く
佳澄
(あいつがいると、確実にややこしくなるからな……)
女子高生(1年生)
体育館裏に1年生の女子高生がいた
佳澄
──えーと、下駄箱にメッセージを入れたのは
女子高生(1年生)
はい
女子高生(1年生)
──あたしです
彼女ははにかみながら、名乗った
ミツキ(1年生)
ミツキって、言います……
ミツキ(1年生)
……あの、あたし…………
ミツキ(1年生)
鴞沢(ときさわ)先輩のことが…………
ミツキ(1年生)
ミツキ(1年生)
好きです
ミツキ(1年生)
…………付き合ってください
佳澄
…………
目を丸くした
佳澄
(──まさか、告白されるなんて…………)
佳澄
(思いもしなかった…………)
佳澄
佳澄
……あの、えーと…………
ミツキ(1年生)
急に言われても、困りますよね──
ミツキ(1年生)
でも、どうしても伝えたくて…………
佳澄
(なんか、言わないと──)
そのとき、脳裏に竜一郎の顔が浮かぶ
佳澄
(……なんで、こんなときに)
佳澄
(あいつの顔が……!?)
佳澄
佳澄
……気持ちは嬉しいけど
佳澄
ごめん
ミツキ(1年生)
…………
沈黙が漂う
ミツキ(1年生)
ミツキ(1年生)
……わかりました
佳澄
……本当に、ごめん
ミツキ(1年生)
いえ、いいんです──
ミツキ(1年生)
自分の気持ちを、伝えたかっただけなので──
佳澄
…………
ミツキ(1年生)
──失礼します
一礼すると、彼女はその場から立ち去った
佳澄
……ほかになにか、言い方があれば
佳澄
よかったのにな…………
佳澄
…………
竜一郎
竜一郎
佳澄ちゃん
佳澄
……?!
竜一郎がいつの間にか、立ちふがっていた
佳澄
(怒ってる……?)
竜一郎
告られてたみたいだけど
竜一郎
──付き合うの?
佳澄
佳澄
いや、……断った
ぎゅっ
竜一郎
……よかった
佳澄
…………
竜一郎
オレには、佳澄ちゃんしかいないもん……
佳澄
……竜一郎
しばらく、その場で立ち尽くしていた