自分
高村
足の怪我を見せながら 高原さんは笑って言った。 その表情はどこか 吹っ切れたような顔をしていた。
自分
高村
僕はこの会社で働いて3年になる。 たまに帰るのが終電ギリギリに なること以外は割と居心地がいい。 ある1つの現象を除けば。
自分
高村
自分
時刻は23時30分。 なんとか終わりも見えてきて、 僕は一旦休憩を取ることにした。
小さなフロアの休憩室は 部屋の隅っこにあって 中には自販機や机、 電子レンジと冷蔵庫がある。 大きな長テーブルの椅子に腰掛けて 僕は携帯を触りながら 少しウトウトしてしまった。
カチッ 壁掛け時計の音で僕は目を覚ました。 短針と長針が12の所で揃っている。
自分
しまった。 寝すぎてしまった。 僕は休憩室の奥 喫煙所に目を向けた。
やっぱり…居る…。
そう、この会社には 1つある噂話が流れている
「午前0時になると 喫煙所のカーテンの下から 足だけが見える」
というもの。 喫煙所はカーテンで仕切られており、 誰も居ないはずなのに その下から足だけが見えるという。
何故それが0時なのか 何故喫煙所に出てくるのか この会社に何かあったのか 色んな噂話は飛び交うが 未だにその謎は分かって居ない。 またこの足が見える人と 見えない人が居る。 僕は残念ながら前者だった。
自分
女性だろうか 男性だろうか 膝から下の裸足の足は どちらにも見える。
自分
案の定僕はこの日 タクシーで帰ることになった。
数週間後…。 僕はあれからあの足を見ることはなく いつも通りの毎日を送っていた。
高村
自分
自分
高原さんは最近この支社に 異動してきたばかり…。 もしかして、
自分
高村
僕は…何も言えなかった。
それから数日後の事だった。 高原さんの訃報を聞いたのは。
僕はそれが あの「足」のせいなのか。 と一瞬頭をよぎったが そんなはずはない、 たまたまだ、と思い込むことにした。
それから数ヶ月後 高原さんの件も落ち着き いつも通りの日常を送っていた。
カチッ
その音を聞くまでは。
……………。 ちょっと冷蔵庫に飲み物を 取りに行こうと思って 時計を見てなかった。
振り返るな…!!! 振り返るな…!!! と思っていたのに
…でも…。 僕は気になった。 高原さんは本当にただの 事故だったのか…。 事故現場からどうして 両足だけが見つからなかったのか…。
自分
僕はその日の仕事を全部投げ出して 一目散に会社を飛び出した。
見るべきではなかった。
でも、見てしまったんだ。
いつもの「足」には
怪我の痕があったんだ。
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