自宅にて
雄介
はあ……給料日まであと10日もあるのか
雄介
プレゼント、どうしようかな……
雄介
彼女ができたのは嬉しいけど、お金が続かない……
雄介
これからまた金がかかるな……冬は金が飛んでく季節だ
プルルルル
土田
あっ、先輩っスか?今夜、飲みに行きましょうよ
雄介
おー、土田か。そうしたいんだけど、金欠なんだ
土田
奢りますよ。じゃ、この前行った居酒屋で
プツッ、ツーツーツー
雄介
この前、酔っ払って金欠だって言ったから
雄介
気を遣ってくれてるのかな……?まあ、奢りなら行くか
30分後
居酒屋にて
土田
はい先輩、中ジョッキ。乾杯しましょう。カンパーイ!
雄介
奢りだっていうから来たけど、金あるのか?
土田
まかせてください
土田
……ってか、このお金、先輩のお金みたいなもんスから
雄介
俺、お前に金貸してたっけ
土田
まあ、そんなとこです。ちょっとトイレ行ってきまーす
ドン!
雄介
おいおい大丈夫か?よろけたりして
土田
すんません
雄介
あいつ、酒弱いのになあ。俺に付き合ってくれていい奴だな
雄介
後輩と飲んでるから今日は行くの遅れるって、彼女に連絡しとくか
雄介
……あれ?昨日出したのが既読になってない
雄介
おかしいな……けっこうスマホ依存のタイプなんだが……
土田
はー、スッキリした。どうしたんスか、先輩?
雄介
いや、別に
土田
彼女のことっスか?
雄介
うん…………まあね。クリスマスとかどうしようかなって
雄介
ディナーとかは予約してるけど、プレゼントまだ選んでなくて
雄介
中途半端なもんだとキレられるからな。大変だよ
土田
あのー、先輩。この前も先輩、愚痴ってましたけど……
土田
金銭的な価値観が合わない相手とやってくのは難しいっスよ
雄介
うん……でも、今別れちゃったらクリスマスも年末年始も一人だし
雄介
せめて来年のバレンタインまでは彼女いないと困るっていうか
土田
その間に確か彼女さんの誕生日もあるんでしょ?大丈夫ですか?
雄介
仕方ないよ。残業増やすとか、いろいろ考える
雄介
悪いけど、ちょっと……先、帰る。ごめんな
土田
彼女さんのとこ行くんですか?いってらっしゃい
雄介
ああ、またな
5分後
バスの中にて
雄介
まだ未読のままだ。具合でも悪いのかな
雄介
もしそうだったら、何か見舞いの品でも買わないと怒られそうだな
雄介
花ぐらい買っていくか……
30分後
彼女のアパートにて
雄介
電気消えてるな。いないのかな?
ピンポーン
雄介
……あれ?合鍵、どこへやったかな……
雄介
内ポケットに入ってない……あっ、外側のポケットに入ってた
雄介
俺、こんなところにいつ入れた?まあいいか
ガチャガチャ
ギィー
雄介
うわあああああああっ!?
雄介
あ、頭から……血が……おいっ!
雄介
こ、転んだのか?打ち所が悪くて……って、そういう感じだな……
雄介
とにかく救急車に電話だ
数十分後
ピーポーピーポー
数日後
居酒屋にて
土田
彼女の告別式、行ってきたんスね。お疲れ様っした
雄介
ああ
土田
先輩、前に飲んだ時、冗談で……
雄介
ああ、あんな女、死ねばいいのにって言ったよな、俺
雄介
その通りになっちまったよ……
土田
大変でしたね
雄介
いや、いいんだ。心のどこかで望んでたことかもしれないしな
雄介
……なあ、土田
土田
はい?
雄介
まだ、あの時の……金はあるか?
土田
もちろん、残ってますよ
雄介
このお金は先輩のお金みたいなもんスから、って言ったよな?
土田
はい。その通りっスよ
雄介
どういう意味だったのか、わかったような気がするんだ
土田
はい、たぶんそれ、当たってますよ
雄介
あれだけがめつい女が、一円も持ってないわけないからな
土田
取り返しただけっスよ
雄介
さらっと言うんだな
土田
彼女と先輩は、相性が悪かったんスよ
雄介
きっと、そうだったんだろうな……
土田
まあ、証拠はありませんから
雄介
そうだろうな。警察に呼ばれてもいないだろう?
土田
まさか、警察に突き出すつもりじゃないっスよね?
雄介
もちろん。今さらそんなことして何になる
雄介
そうしたいなら……あの日、ダイイングメッセージを消してはいないさ
土田
ダイイングメッセージ?
雄介
床に土田の名前が書かれてた。血でな
土田
へえー、知らなかったなー
雄介
へえー、じゃねえよ。ヘタすりゃお前、今頃……
土田
ふふ、まあ、それはそれでいいかなって思ったんスよ
雄介
土田……
雄介
いや、悪いのは俺だ。前にお前に彼女のことを愚痴った時……
雄介
俺がお前に合鍵を渡したんだもんな
土田
はい。彼女さんはタンス預金をしてるからってその時に教えてもらって
雄介
合鍵を持ってるんだから、俺がやれば良かったんだ
雄介
それなのに、自分の手を汚したくなくて、後輩のお前に頼んでしまった
雄介
だから、全部、俺の責任だ
土田
いいんですよ、先輩
土田
あの時、酔った勢いでも嬉しかったんス
土田
彼女と別れて、土田と付き合いたいって言ってくれたこと……
雄介
お前が真剣に俺の愚痴を聞いてくれたから……
土田
……先輩だけなんスよ
土田
私みたいな男っぽいヤツを、女の子として扱ってくれたの
雄介
お前、言ってくれたよな。私なら、高価なプレゼントなんか要らない
雄介
先輩と一緒にいられるだけでいい……って
土田
はい。私、物欲ないんで。金かからねっスよ
土田
彼女がいなくなったら、私と付き合ってくれますか?
土田
私がそう聞いたら、先輩、合鍵を渡してくれたんですもん
土田
だったらもう、やるっきゃないっスよ
雄介
彼女の部屋に行く前、さりげなく俺のポケットに戻してたんだな
土田
ははは、だって先輩、忘れてるっぽかったから
雄介
ダイイングメッセージを見つけて、全部思い出したよ
雄介
だから、消さなきゃいけないと思った
雄介
せっかく、事故に見せかけてくれたんだからな
土田
頑張りましたよ。褒めてください
雄介
よし、じゃあもう一軒行くか
土田
私の部屋でいいっスよ。お金、かけたくないですもん
土田
これからは、有効に使いましょうよ。せっかく取り返したんスから……
雄介
わかった。でも、クリスマスの時はホテルのディナーだからな
土田
予約してるんじゃ仕方ないっスね。ゴチになりますっ!