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――数日後。
斑目
あいも変わらず、ここは辛気臭いというか埃っぽいというか。
古物商店――店を名乗っているのであれば、もう少し入りやすい雰囲気を作り出せばいいのに。
そんなことを思うのは斑目だけなのであろうか。
千早
しばらくすると千早が出てくる。
今日もまた、セーラー服という格好だ。
学業と店を両立させているのだろうか。
斑目
斑目
千早
千早
こんな客の来ないような店が、どうして続いているのか。
そして、なぜ警察の関係者が事件に関与する物品――彼女の言う【いわく】を持ち込むのか。
そのシステムは上の人間からもしっかりと伝えられていないし、彼女自身も語らない。
しかし、彼女が店を維持し、生計を立てているのは、すなわちそう言うことなのであろう。
いつか、彼女自身に聞いてみたいものだ。
斑目
斑目はそこまで言うと、手土産を持ってきたことを思い出した。
斑目
斑目
そう言って、シュークリームの箱を見せる。
すると、まるで表情を動かさない千早が、ぴくりと反応を見せたような気がする。
千早
千早
千早
そう言うと、いそいそと店の奥へと消えてしまった。
斑目
しばらくすると千早が戻ってくる。
待っている間、斑目はふと目に入った気味の悪い人形を手に取る。
千早
千早
千早の言葉に慌てて人形を元に戻す。
お茶を淹れて来たであろう千早は、カウンターにふたつの湯呑みを並べる。
千早
斑目
斑目はカウンターに歩み寄ると、手土産を開ける。
千早の家族構成が分からないから、とりあえず5つほど買ってきたのであるが――。
斑目
シュークリームは随分と大きく、ひとつで充分なボリュームである。
千早
千早
ボリューミーなシュークリーム。
この場で斑目と千早がひとつずつ消費するとして、残ったものを斑目単独で処理するのは難しい。
斑目
千早
千早
斑目
千早は小さな皿を並べると、そこにシュークリームを乗せる。
斑目の分と、千早の分。
斑目
斑目
千早
千早
斑目
斑目
千早
斑目
斑目は皿に移してもらったシュークリームに視線を落とす。
店の奥にいたのだろうか、確か【ちょぴ】という名前だった黒猫が、カウンターの上へと飛び乗り、興味深そうにシュークリームの匂いをかいでいる。
斑目
手持ちを持って来ているほうが先に手をつけねば、千早も手をつけにくいだろう。
斑目はシュークリームを頬張った。
千早は小声で「いただきます」と呟くと、そこ小さな口でシュークリームを口にする。
千早
その表情を見た斑目は、思わずニヤけてしまう。
千早
斑目
千早
千早
千早の反応が面白くて、とうとう吹き出してしまう斑目。
それを茶化すように、黒猫のちゃぴがニャーと鳴く。
この物語は、とある集落にある小さな古物商店の店主と、新人刑事のお話。
【いわく】を持ち込む者と、それを見定める者の物語である。
―家族記念日 完―