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月琴

ああ…

公園のベンチのような所で

月琴は目を覚ました

月琴

今日はこの世界か

昨日と比べると、随分まともな世界だ

ベンチから降り、公園内を歩く

自分が子供の頃に住んでいた場所に似ている

もう、あの頃には戻れない

何度起きても、同じ世界に居られた

あの頃には

月琴

懐かしい…訳でもないな

月琴

鉄棒をして、思い切り落ちて

月琴

頭を打って怪我をした

あの頃通った公園にあったものと似た鉄棒の前でそう呟く

月琴は目覚める度に並行世界に移動する

何故なのかは分からない

でも、絶対に移動する

この事には例外は無いし、同じ世界には二度と戻ってこれない

十年で知ることが出来たことだ

同じ世界に留まり続けるには眠らなければ可能だ

それで一度二日間同じ世界に滞在できた

月琴

……行くか

話すことを忘れないように呟きながら公園を出る

周りは閑静な住宅街だ

特徴は何も無い

子供

ねーねー!いつもの公園行こうよー

子供の母

今日はこの後雨が降るからだーめ!

子供の叫ぶ声と、それを宥める母親の声がする

日常的にどの世界でも見かける光景だが、

何となく母親の声に聞き覚えがあった

故に、声の方をむく

子供

おーねーがーいー!

子供の母

ダメったらだめ!

月琴

あ…

思わず、声が出た

何となく、見たことがある人だ

他の世界で会ったのだろうか

そんな感じはしなかった

もっとずっと前

起きても起きても、同じ世界に居られた頃

彼女に会った気がしているのだ

子供の母

あっ…すみません

自分が迷惑がって見てきたと思われたのだろう

母親は子供を抱きかかえ

足早に去っていった

月琴

まって……

待ってください!と、声に出すことは出来なかった

月琴

はぁ……全く

目覚めた時に寝ていた公園のベンチに座り、溜息をついた

いつから並行世界を彷徨っているのかは忘れてしまった

こんな事になる前の日、何をしていたかすら思い出せない

ただ、この世界は自分の並行世界の旅のトリガーになった世界のような気がする

全てが、懐かしく

見覚えがあるのだ

少年

隣、いいですか?

ほかのベンチだって空いているのにとおもって相手を見る

それは、自分自身だった

今の自分と何一つ変わらない姿をしている

月琴

……はい、どうぞ

少年

ありがとうございます。

少年は座ったきり何も話さない

とても気まずく、重い沈黙だ

少年

……気になるのでしょう

少年

この世界がなんなのか

月琴

いきなりなんですか?

少年

僕は貴方ですから、この世界の事は知ってるのです

月琴

悪いけど、俺はこの世界なんか知らないな

少年

はぁ…覚えてないのですね

少年

あの日、何があったのか

月琴

あの日?

少年

貴方が並行世界を彷徨うトリガーとなった日です

月琴

覚えていないな

月琴

毎日更新されていく情報に、適応するだけで精一杯だったからな

少年

だと思ってましたよ

少年

貴方は、元の世界に戻りたいですか?

月琴

元の世界すら覚えていないが

月琴

ここに似た世界だったか?

少年

似てた…というよりもこの世界の未来が

少年

貴方の居るべき世界ですから

月琴

じゃあ……戻ってきたんだな

少年

そんな感じです

少年

これから12年眠らなければ、

少年

元の世界に戻れますよ

月琴

そんなに起きていたら死ぬだろうな

月琴

でもこのチャンスを逃したら次この世界に戻って来ることもないだろうな

少年

はい、貴方は数多の可能性の世界から

少年

たった一つしかない本来の世界への入口に立ったのです

月琴

そうか……なら、質問だ

少年

どうぞ

月琴

この世界で、俺を待っててくれる人はいるか?

少年

はい、居ますよ。

月琴

分かった。この世界に帰ることにするよ

月琴

長かった孤独も、終わるんだな

少年

そうですね。行きましょうか

月琴

ああ。

白く、美しい光で自分の視界は覆われた

白く無機質な光が差し込んでくる

あまりの眩しさに目を開けた

月琴

ここは……

見るからに病室だ

なんで自分はこんな所にいるのだろうか

全く思い出せない

思考を巡らせていると、見回りに来たのだろう看護師と目が合った

月琴

あ……

看護師

月琴さん、気付いたんですか!?

月琴

はい…

看護師

分かりました!待っててください

看護師は急いで病室を飛び出した

数十分後、とっくの昔に忘れたはずの両親がやってきた

彼らの話によると、自分は2年前塾の帰りに事故にあい

ずっと意識が戻らなかったらしい

脳死判定を受けても諦めずに

自分が目覚めるのを待っていたらしい

この世界で、自分を待っていた人は彼らだったのだろう

もう1人の自分を名乗った少年が誰だったのか

10年経った今でも分からない

この作品はいかがでしたか?

183

コメント

14

ユーザー

ハ━━━ヾ(。´囗`)ノ━━━イ ありがと!

ユーザー

全然いいよー!気にしないで。

ユーザー

そなの!?なんか、ネタばらしになっちゃったね...。Sorry(._.)))

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