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真絢
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
宇宙が好きだと叫ばんばかりに
輝きを絶やさない太陽。
眩しい恋が、まさか、
世界を焼き尽くしてしまうのだろうか。
勘で向かった仮世環駅で、案の定
すまし顔で佇んでいた 真絢の背中に、
灼熱に疲弊し 垂れ下がった羽根が着いている
気がする。
日陰の暗さにすら完敗。といった
覇気のなさに若干臆しつつ 名前を呼ぶと、
何故だか得意満面で、 俺に切符を差し出してきたのだった。
樹木や住宅が、 怪物のような凄まじさで
迫っては捌けていく。
寒い。寒すぎる。
変な通知に跳ね起きてから 十数分前に至るまで
臓器が熱気に 圧し潰されてしまうのではないかと
間の抜けた畏怖を 覚えたほどだというのに
溜め息と共に人間を吐く車両からは
霊界を想起させる冷気が流れ出、
乗り込む頃には まるで正反対の感想を抱いていた。
流れっ放しの汗が乾き、皮膚のミントでも塗りたくったような清涼感に震える。
真絢
やけに洒落っけのある装いをした 真絢はとても楽しげに、
白桃の山をつついている。
列車が傾くたび
半濁の液が円形の皿から溢れ、 トレーから滴り落ちる。
甘い香りに 気が狂いそうだ。
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
郁
郁
郁
真絢はやけに険しい表情で 間を溜め、
永遠くらいに引き延ばし、
果実を突き刺したフォークを揺らしながら、
半端なウィンクを決めた。
真絢
真絢
郁
真絢
機械音声のアナウンスが 乗客に謝辞を述べ続けている。
瑞々しい果実は依然として艷めく。
郁
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
郁
郁
郁
真絢
真絢
真絢
郁
目が眩むように笑うな。
最初に到着したのは写真展だった。
真絢の好きなアーティストも参加しているとのことで
作品の魅力を訥々と語られたが
あまり理解できなかった。
それらを気にいる理由の方が 知りたかった。
撮影者の氏名の下に書かれた 作品説明文を読みながら
次々に見進める真絢を追う。
幾つかの写真の前で、真絢は立ち止まった。
一隻の船によって白く泡立つ海面。
葉の先端を離れた朝露が落ちる 瞬間。
黒猫の小さく健やかな舌を反射させる 銀食器。
夕陽に引き延ばされたダリアの影。
どれもこれも大したことはないのに、
いったい何に惹かれている というのだろう。
考え込むその立ち姿の方が
よほど、
画になるというのに。
退場口の傍で暫く立ち尽くしていると
全ての展示の確認を終えた真絢が、
緩やかな足取りで俺の隣に着地する。
真絢
真絢
郁
真絢
郁
郁
真絢
郁
郁
真絢
人波によって流されるまま 真絢は口を噤む。
それ以上何も答えなかった。
真絢
郁
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
マイクを二本スタンドから抜き取る。
真絢
郁
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
真絢
真絢は朗らかに微笑み、俺の歌う様を眺めていた。
俺はどの言葉が真絢を動かすのか見たかったのに
真絢は口角を僅かに上向かせて
表情筋をそれ以上に動かすことはなかった。
真絢
真絢
真絢
郁
郁
マイクを通して俺の声が室内を満たす。
スイッチを切った。
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
立ち上がって 俺の眼前に腕を差し伸ばしてくる。
それを無視してドアノブを掴んだ。
従者を失くした、歌詞だけが背後を流れる。
真絢
郁
恐るおそる差し出してきたリンゴ飴は
たった数口分欠けただけだった。
焼き鳥、タコ焼き、枝豆、綿飴、
フライドポテトに続きこれで六品目だ。
さすがに多少は罪悪感が増したのか
真絢は俯き、唇を噛んでいる。
しらじらしいにも程がある。
真絢
真絢
真絢
郁
郁
郁
真絢
真絢
郁
どくどくしい、《不健康の叫び》色の実を齧った。
鼓膜の内側で響く軽い音を聞きながら 説教を垂れる。
郁
郁
真絢
真絢
郁
郁
真絢
ただでさえ少食かつ偏食の真絢のテンションはやけに高いし
完全に浮かれてしまっている。
叱るだけで放置している俺も俺だ。
真絢
真絢
郁
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
郁
郁
郁
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
俺は調子を取り戻しきった真絢の後ろを着いて行く。
弾んだ足取りが人気の少ない道を進んでいく。
おそらく来たことのない町だというのに、やけに堂々と歩くものだ。
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
郁
指を奪われ、俺の左手が真絢の物になった。
熱の伝播を止められず、
左半身の麻痺を感じながら立ち尽くす。
あんたはどんな表情をしている?
照らされた顔は表面上の光源に向けられてはいるものの、
その瞳孔は小さく 閉じていた。
真絢
郁
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
慎ましく動く海面には、
レースの絨毯が敷かれている。
真絢
真絢
真絢
月影がぼわりと滲む。
真絢が微かに笑えば、
波だって揺らめいた。
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢は掲げた両手で楕円形を作る。
煌々とした丸い光を閉じ込める 額縁がうまれた。
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢は右手を反らせ、 徐々に楕円形を痩せさせる。
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
付き合っていた男を振ったのは 真絢の方だ。
俺は代打なのだと悟った。
今日のプランは全て、彼奴と行ったことのある場所で
俺はそこに残る感傷を拭う
布巾にされたに過ぎない。
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
真絢
郁
俺は真絢の微笑の中に綻びを探している。
ほんの些細な歪みがある。
無性に、すべてをぶちまけてしまいたくなった。
脈絡も寄る辺も捨てた。
他の一切の、時が止まったように
空は恐ろしいほどに静謐だった。
障害物もなく完璧だった。
郁
郁
郁
郁
真絢
真絢
真絢
郁
郁
真絢
郁
郁
郁
郁
真絢
郁
郁
郁
郁
郁
郁
郁
郁
郁
真絢
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
郁
郁
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
真絢
郁
郁
郁
さざ波や鳥の羽が生み出すささやかな音が一斉に蘇り、
世界を再び騒がしく染め上げる。
真絢
追い風で声が近くに届く。
ニ等星より強く瞬く真絢が眉を下げていた。
真絢
真絢
真絢
郁
真絢
何より眩しい真絢が指すのは、
宇宙への贖罪とでも言わんばかりに
永く煌めく月の路。
一筋の愛が、もしや、
世界を掻き立てるのかもしれない。