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母さんはずっと、あいつに付きっきりだった。
泣けば抱いて、笑えば喜んで。
ー か わ い い で し ょ う ? ー
何度もそう言われた。
…知ってる。
そんなこと。
でも。
俺の名前を呼ぶ回数は、確実に減った。
一緒にいた時間も、減った。
「お兄ちゃんなんだから」
その一言で、全部終わり。
我慢するのが“正解”になった。
それでも。
あいつは、俺を見ると嬉しそうに笑う。
小さな手で、服を掴んでくる。
T.A
拙い声で呼ばれるたび、胸がざわついた。
嬉しいのに。
苦しい。
そんな日々は、長く続かなかった。
母さんは、突然いなくなった。
病だった。
あっけなかった。
あまりにも。
残されたのは、俺とあいつ。
それから、執事とメイド。
屋敷は静かになった。
けれど、あいつは相変わらず俺に懐いてきた。
T.A
T.A
……正直、しんどかった。
全部、押し付けられた気がした。
母さんの代わりも、家のことも。
そして、この子の“全部”も。
ある日。
ついに、口にしてしまった。
L.M
静まり返る部屋。
あいつは、きょとんとしていた。
理解できていない顔。
それが、余計に刺さった。
L.M
言った瞬間、後悔した。
でも、止められなかった。
あいつは、少しだけ震えて。
T.A
そう言って、離れていった。
その背中を、追えなかった。
それが、最後だった。
数日後。
屋敷が騒がしくなった。
メイド.
血の気が引く。
部屋に駆け込むと、あいつが倒れていた。
白い肌。閉じた目。
手には――かじりかけの林檎。
執事.
執事が、淡々と言う。
頭が真っ白になる。
L.M
声が震える。
執事.
L.M
理解が追いつかない。
この家のために
その瞬間、何かが切れた。
L.M
掴みかかる。
でも、執事は動じない。
執事.
執事.
何をいっているんだ、こいつは
執事.
執事.
L.M
執事.
その言葉に、息が詰まる。
執事.
執事.
執事.
執事.
ちぐさのためだったら、俺の命一つくらいいらねぇ。
けど、ちぐさが起きた時っ、俺が居なかったら?
あいつは、どうなる
執事.
そんなの、ふざけてる。
L.M
迷いはなかった
あいつを、あのままにしておけない。
執事.
執事が言う。
執事.
L.M
執事.
静かな声。
執事.
L.M
理解できない、
執事.
L.M
執事.
言葉を遮られる。
執事.
執事.
執事.
静かで、揺るがない声だった。
止めるべきだった。
でも。
言葉が出なかった
鏡の前に立つ執事。
執事.
光が、溢れる。
思わず目を閉じた。
――静寂。
L.M
目を開ける。
そこにあったのは。
T.A
目を覚ましたあいつ。
涙が、止まらなかった。
L.M
抱きしめる。
強く。
L.M
あいつは少し驚いて、
T.A
小さく、笑った。
その場所に執事の姿はなく。
ちぐさとらいと、たった二人の、兄弟の時間だった。
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#KnightX-騎士X-