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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

令和6年 11月15日 TELLRE編集部

渡辺

(人を殺した話ね……)

渡辺

(フィクションだったら、ありきたりというか、使い古された話なんだが)

編集長

どうした渡辺。

編集長

そんな仏頂面で。

渡辺

仏頂面は元からです。

渡辺

いえ、今ちょっと連絡を取っているユーザーがね、人を殺したことがある……なんて言い出しましてね。

渡辺

その経緯をこのサイトに物語として連載したいみたいで、ちょっと目を通していたんです。

編集長

人を殺した……随分と物騒な話だが、そのユーザーはどんなユーザーなんだ?

渡辺

日比野響というユーザーです。

渡辺

3年D組のクーデターという作品をアップしてますね。

渡辺

実はちょっと……いえ、これは関係ない話ですから、やめておきましょうか。

渡辺

とにかくですね、妙に気になるんですよ。

渡辺

与太話だと言ってしまえば、そこまでなんですが……。

編集長

まぁ、ユーザーはそのユーザーだけじゃないんだ。

編集長

あまり入れ込みすぎるなよ。
お前の悪いところだ。

渡辺

はい、気をつけます。

渡辺

(とりあえず、時間を見つけて調べてみるか)

渡辺

(与太話なら与太話で構わないし)

自宅に帰ると、簡単にシャワーを済ませ、コンビニで買い込んだ缶ビールとつまみをテーブルの上に並べる。

その中央のスペースでノートパソコンを開くと、缶ビールを開け、とりあえず1本目を飲み干す。

これが美味いと思えるようになったということは、それなりに歳を重ねたのだなと渡辺は思う。

検索エンジンを立ち上げると、別の窓で動画サイトを開き、作業用にとまとめておいたリストで音楽をかけた。

渡辺

さて、まずは苗字から調べてみるか。

渡辺

芒尾と書いて【すすきお】って読む苗字は珍しいからな。

正直、このサイトに登録された情報だけで、彼のことを調べるのは難しいだろう。

ただ、ひょんなきっかけで、彼の本名を……苗字だけだが知れたことは大きかった。

これが鈴木やら佐藤だったら量が膨大になるだろうが、渡辺が知る限り、芒尾という苗字は珍しい。

ヒットする件数も限られてくるだろう。

渡辺

……駄目か。珍しすぎてヒットしない。

検索エンジンのトップに出てきたのは、ススキの写真ばかり。

芒(すすき)という苗字の方はいるようだが、芒尾でヒットはしなかった。

渡辺

名前でヒットしないってことは、事件にはなっていないのか?

渡辺

もし本当に人を殺したのだとしたら、完全犯罪ってことになるな……。

渡辺は改めて途中まで書かれているデータを見直す。

渡辺

事件自体は物語中だと平成26年に起きてる。

渡辺

今が令和6年だから……10年?
いや、11年前か。

渡辺

当時、兄が高校生、弟は中学生だったことが分かっているから、現在兄が26歳から28歳、弟が23歳から25歳ってことになる。

渡辺

で、兄のシンジが物心ついた辺りで、殺害された母親との同居が始まっている。

渡辺

うーん、ちょっと曖昧だけど、兄弟が最小の3歳差ってことはないか。

渡辺

それだと、兄が2歳の頃に同居が始まって、3歳の時に弟が産まれた計算になるからな。

渡辺

……待てよ。

渡辺

当時、シンジは当然ながら未成年だ。

渡辺

仮に事件が起きて捕まっていたとしても、メディアでは報じられないんじゃ。

どうも、しっくりと来ない。

気にしなければいいだけの話なのであるが、なぜか渡辺は妙な違和感を抱いていた。

渡辺自身も説明しがたいのであるが、胸の奥底にモヤモヤが漂っていた。

渡辺

死体を捨てたのが、家の裏にあった井戸。

渡辺

おそらくだけど、使用中の井戸に死体を隠そうなんて思わないだろうから、すでに使われていない井戸だったんだろう。

渡辺

井戸に落ちた死体の描写では、手足があらぬ方向に曲がっていたとある。

渡辺

殺害現場は玄関で、死因は不明だけど、掃除をしなければならないほど玄関は血の海だった。

渡辺

そうなると、死因は刃物などでの刺殺という可能性が高い。

渡辺

手足が曲がる要素は死因と関係ないから、手足があらぬ方向に曲がったのは、井戸に落とした際だと推測できるか。

渡辺

つまり、井戸はすでに使われていない枯れ井戸だったと思われる。

現在の情報から分かることを拾い上げてはみるが、しかし有力な情報は見つからない。

渡辺

井戸台帳を調べたところで……。

実は国土交通省には全国の地下水台帳なるものがあり、ネット閲覧が可能である。

渡辺

そうだよな。件数が多すぎて絞りきれない。

渡辺

せめて、地域が分かるような描写があればいいんだけど。

渡辺が続いて注目したのは、駐在が出てくるという点だった。

渡辺

これはご本人も言っていたけど、現場となった一軒家は田舎にあったものだ。

渡辺

田舎のニュアンスをどう受け取るかによるけど、駐在さんと呼ばれる存在は、基本的に過疎地の警察機構になるから、やっぱりそれなりの田舎ってことになるんだろうな。

渡辺

それでいて、自転車でしばらく走ればコンビニくらいはある立地。

渡辺

そんな田舎、探せば馬鹿みたいにあるぞ。

渡辺

……駄目だ、今の情報だけだと事件の信憑性はもちろん、どこで起きた事件なのかも分からない。

渡辺は缶ビールを冷蔵庫からリビングへと追加すると、その足で換気扇の下へと向かう。

渡辺

(今のところ分かるのは、かなり田舎で事件が起きたかもしれないってことくらいか)

煙草をくわえると、火を点けてから換気扇を回す。

煙草も短くなり、そろそろリビングに戻ろうと思っていた時のことだった。

PCにメールが届いた音がした。

こんな時間にメールを送ってくるなんて、限られた人間だけだ。

基本的に仕事のメールは夜中に送ってはいけないという決まりがあるため、会社関係ではない。

となると、生活時間が基本的に不規則で、夜遅くにメールを送ってくるという、やや常識から外れた行為をしそうな人間が相手。

渡辺

やっぱり、日比野さんからか。

届いたメールには【平成26年 11月4日】とタイトルがつけられている。

どうやら、前回からの続きらしい。

渡辺

さて、これはどうやら、まだ寝れないみたいだな。

ノートパソコンの前に戻ると、缶ビールのプルタブを起こしつつ、渡辺はエンターキーを叩いたのであった。

私は人を殺したことがあります(仮題)

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