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カナエ

就活…

カナエ

また落ちた

カナエ

カナエ

次、どうしよう?

勉強さえしていれば

幸せになれると信じ

青春の青さも知らず

大人になったのに…

カナエ

どうしたらいいの?

カナエ

選ばれないの側の人間になるのは…

カナエ

もう、イヤ…

にゃー

カナエ

ノラ猫…?

にゃーにゃー

カナエ

かわいい

カナエ

いいな…

カナエ

猫は、自由で…

カナエ

カナエ

私も…

「猫になりたい」

次の日

カナエ

ううーん…

カナエ

体中が痛い…

カナエ

あれ?

カナエ

なんで私、こんな所にいるの!?

カナエ

昨日…何があったの?

辺りを見回すと

カナエ

カーブミラーに映ってるの…

カナエ

猫だけ──

カナエ

まさか…!

慌てて自分の姿を見る

カナエ

にゃ…

カナエ

(ねこ…?)

カナエ

にゃにゃっ!!

カナエ

(私…猫になってる!?)

カナエ

(どうしよう…)

カナエ

カナエ

(…だけど)

カナエ

(人間に戻りたいとは、思えない)

カナエ

(これから)

カナエ

(どうやって、生きていこうかな?)

そう考えた時

ノラ猫?

カナエ

みゃ!

カナエ

(きゃっ!)

知らない男に 抱きかかえられた

カナエ

にゃー…

カナエ

(だ、誰なの…?)

メス猫だ

それに、まだ若い…

オス猫に狙われたら、大変だな

カナエ

なぁ!?

カナエ

(それって、まさか!)

とりあえず、ウチに連れて帰ろう

カナエ

にゃ…!

カナエ

(い、家…!?)

カナエ

(私が…)

カナエ

(知らない男の人の!?)

誰とも付き合った事ない 私にとって

男の家に行くのは

初めての事だった

可哀想に…

誰かに捨てられたのかな?

カナエ

なぁー

カナエ

(よかった)

カナエ

(優しい人で…)

捨てる神あれば拾う神あり

人生とは、分からない事の繰り返しだ

カナエ

(よかった…)

カナエ

(猫になって…)

大丈夫

すぐに、綺麗にしてあげるからね?

男の手が私の背を撫でる

カナエ

(くすぐったい…)

カナエ

なぁー…

優しいその手つきに ノドを鳴らした

怖くないからね?

カナエ

なぁー…

カナエ

(見た目は猫だけど)

カナエ

(恥ずかしい…)

綺麗にしようね

君は女の子なんだから

カナエ

カナエ

(女の子…か…)

カナエ

(男の人から、そんなふうに言われるの)

カナエ

(…はじめて)

カナエ

なぁー

カナエ

(あぁ…幸せ…)

男の手は優しく

私の体を撫でた

君の肌は、本当に綺麗だね?

傷ひとつ、見当たらない…

カナエ

にゃー…

カナエ

(恥ずかしい…)

だけど…

ごめんね?

カナエ

ふにゃぁ?

カナエ

(どうしたの?)

男の手が首をつかむ

カナエ

ギニャ!!

カナエ

(く、苦しっ!)

これが僕の仕事なんだ

カナエ

なっ…なぁー…

男の力に かなうはずもなく

私は…わた…しは…

カナエ

……

ご注文のお品、出来上がりましたよ

…まあ

早かったのね?

ええ

これも全て、ミヤビさんのためですからね?

カナエ

(この男の人は…)

男の声のトーンから

この女が好きなんだと 伝わった

あら、ありがとう

この皮は?

警戒心の薄い猫を1匹

捕まえたんですよ

…まあ、可哀想に

悪い男に捕まったのね?

女が薄ら笑いを浮かべ

私に触れた

三味線になった 私をかかえ

女がバチで打つ

カナエ

(やめてっ!!)

打たれるたび

悔しくて悲しくて

声を張り上げて泣いた

カナエ

(悔しいはず…なのに)

思い出すのは

男の優しい声と 手の温もり

カナエ

(私って、本当にバカ…)

カナエ

(願いが叶って、猫になったのに)

カナエ

(優しくされたくらいで、知らない男にだまされ)

カナエ

(…殺されて)

カナエ

(皮をはがれ)

カナエ

(三味線なんかにされて)

カナエ

カナエ

(それでも…)

カナエ

(もう一度、会いたい)

未だ心を支配するのは

世界で、ただ一人

カナエ

(あの男の人に…)

私に一番合わないのは

“女という生き方”

そのもの、なのかも しれない…

#TELLER文芸部

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