轟音が鳴り響いた──
がばっ
ユウカ
……!
ユウカ
ユウカ
……夢…………?
?
やっと起きましたか?
フード付き目玉模様の緑のローブを着た青年が、キノコの上であぐらをかき、ユウカを見つめていた
手には水煙管を持っている
?
待ちくたびれましたよ
ゆったりと水煙草を吸い込み、吐き出した
ユウカ
あんた、誰よ……?
?
訊ねる前に──
?
まずは自分から名乗るのが礼儀では?
ユウカ
…………
?
まあいいでしょう
?
わたしは芋虫
ユウカ
……芋虫?
芋虫
ここがどこで、なぜここにいるのか
芋虫
理解してますか?
ユウカ
知らない
芋虫
芋虫
ここは地獄のような場所
ユウカ
……地獄?
芋虫
きみには心当たりがあるはずですよ
ユウカ
…………
芋虫
だんまりですか?
芋虫
──仕方ありませんね
芋虫
イマイユウカ、25歳。独身
ユウカ
……!
芋虫
会社員。口下手で人と話すことが苦手
芋虫
そのため唯一の友人が幼なじみのミチヨ
ユウカ
……なんで、知ってるの?
芋虫
知っていますとも
芋虫
幼なじみである彼女に対して
芋虫
殺意を抱いていたこともね
ユウカ
芋虫
動機は嫉み
芋虫
彼女の周りにはいつも人がいた
芋虫
それに比べ自分はいつもひとりぼっち──
ユウカ
…………
芋虫
そんな彼女が羨ましくもあり、妬ましかった
芋虫
それに彼女は再来月に結婚を控えてましたね?
芋虫
お相手は、きみが好意を持っていた男性──
ユウカ
…………
芋虫
自分の幼なじみと結婚すると知ったときの絶望感
芋虫
その絶望感がじょじょに、殺意へ変わっていったのは
芋虫
想像に難くありません
ユウカ
ユウカ
あたしはいつだって──
ユウカ
ミチヨの引き立て役
ユウカ
……好きになった人は
ユウカ
ミチヨしか、見てくれなかった……
ユウカ
結婚だってそうだった
ユウカ
……だから
芋虫
爆弾を製作し彼女を殺そうとした
芋虫
浅はかとしか言いようがありませんね
芋虫
愚の骨頂です
芋虫
ネット通販で材料を集めた、きみは爆弾を製作──
芋虫
そして、とんでもない過ちを犯した
ユウカ
とんでもない過ち……?
芋虫
覚えてないのですか?
芋虫
爆弾をほぼ完成した直後──
芋虫
誤作動を起こし、爆発したんですよ
芋虫
轟音が鳴り響き、きみの身体は肉片と化しました
ユウカ
…………
芋虫
当時住んでいたアパートはもちろん
芋虫
周囲にも甚大な被害が出ました
芋虫
かなりの騒ぎになったそうですね
芋虫
芋虫
きみの部屋の隣に住んでいた親子も犠牲になりました
ユウカ
(お隣さんはたまにだけど)
ユウカ
(晩ごはんのおかずをおすそ分けしてくれて──)
ユウカ
(あたしを気づかって、優しかった…………)
ユウカ
(……そんな、お隣さんを…………)
芋虫
芋虫
結婚しようかしないか
芋虫
ふたりはいずれ、別れます
ユウカ
え?
芋虫
きみの思い人であり、彼女の結婚相手は──
芋虫
女たらしなんですよ
芋虫
これまでにも、複数の女性と関係を持ってたようです
ユウカ
ユウカ
嘘……
芋虫
たとえきみに気があったとしても
芋虫
浮気相手としか思われなかったでしょうね
ユウカ
それじゃ……、あたしのしたことって……
ユウカ
……なんだったの?
芋虫
意味なんてなかったんじゃないですか?
胸に突き刺さる
ユウカ
意味なんて、なかった…………
芋虫
その無意味さが無関係の者たちを巻き込んだ
芋虫
芋虫
代償は支払わないと──
ユウカ
代償……?
芋虫
当然でしょう
芋虫
それだけのことを仕出かしたのですから
ユウカ
……!
芋虫
どこにも逃げ場なんてありません
ユウカ
芋虫
せいぜい、わたしたち“兄弟“を楽しませてくださいね?