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トーマ
トーマ
詩乃は こくん、と頷いた
おれは詩乃の隣に ゆっくり身を寄せた
トーマ
詩乃
詩乃
詩乃
おれは目を閉じて
ゆっくりと 顔を詩乃の方に近づける
想像していたよりもずっと 柔らかい肌が
唇に触れた
詩乃
詩乃の両手が
おれの後頭部を支える
おれは 唇の間隙に
自らの舌を差し入れる
ねっとりとして 淡く甘い空間
それを 舌全体で感じる
詩乃の鼻息は 少しずつ荒くなる
そこにおれの呼吸が重なる
数分間そうしていて 唇を離した時には
詩乃の頬は うっすら赤らんでいた
おれは無言で 詩乃のブラウスのボタンを ひとつずつ外していった
詩乃
おれの手は震えていた
トーマ
トーマ
それは「詩乃と初めて」という 意味ではなく
「詩乃が初めて」という 意味だった
谷間が目立つほど 豊満な乳房に
ブラジャーが被さっている
どう外すのだろう 戸惑っていたおれに
詩乃は優しく 微笑みかける
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃は 「キスをしてほしい」と 言いたそうに
唇をこちらに向けた
トーマ
もう一度 おれは詩乃に口づけを落とした
詩乃は幸せそうな目をしていた
後ろに手を回すと
ブラジャーのホックが外れた
トーマ
詩乃は真っ赤な顔で
こう囁いた
詩乃
おれも身体中が熱くなっていた
そのまま
顔を胸部に寄せた
詩乃の心音が どくん、どくんと
直接的に 伝わってきた
そこから行為が進展し
はじめてのセックスを 終えるまでの時間は
長くなかった
幸せな雰囲気に包まれたまま おれと詩乃はベッドの上で
下着姿のままだった
詩乃
トーマ
トーマ
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃
その日以降
詩乃との親密度も増し
家でデートする日も
増えてきた
お互いに
肉体的な快感を 求めるようになったのだろう
行為を終えてから
ユニットバスに ふたりで入るときも増えた
おれは幸せだった
ふたりの間に 問題が起こる気などしなかった
このまま詩乃と交際を続け
結婚して子供を産み 家庭を築く
そんな淡い望みを抱いていた
詩乃
詩乃
詩乃
トーマ
トーマ
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃
トーマ
詩乃
詩乃
詩乃
幾度となく 身体をかわすたびに
おれと詩乃は よりスパイスの効いた
セックスをするようになった
いつもと違う場所でしたり
おもちゃを試してみたり
その日も 家で行為の最中だった
おれはふと 詩乃にある提案を
投げかけた
トーマ
詩乃
トーマ
トーマ
トーマ
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃
トーマ
おれは 上着のポケットからスマホを取り出し
おれに跨った彼女の 上半身にカメラを向ける
詩乃
詩乃
詩乃
おれの上で 詩乃は躍る
上半身も 接合部も
赤らんだ顔も
そのすべてを スマホにおさめる
おれたちが果てるまで そう長くはなかった
何度も唇を合わせ
行為の余韻に浸る
今思えばそれが 最後のセックスだった
ある日突然 彼女との連絡が途絶えた
いつも朝になったら 「おはよう」とメッセージをしているのだが
それを送信しても 全く返信が来ない
忙しくしているのだろうか
その時は それぐらいしか思わなかった
だが時間が経過するにつれ
不安は疑念へと転じた
何かあったのだろうか それともおれとの関係性に 問題が生じたか
おれは夜8時 詩乃に通話を飛ばした
すると詩乃は どうしてか元気のない声で
応答した
詩乃
トーマ
トーマ
トーマ
詩乃
トーマ
トーマ
トーマ
詩乃
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
詩乃
トーマ
トーマ
トーマ
詩乃
トーマ
詩乃
詩乃
トーマ
トーマ
トーマ
詩乃
詩乃
トーマ
詩乃
通話は それで終わった
「なにもない」わけが ないじゃないか
詩乃の身に何かあったに 違いない
だが
おれにはどうすることも できない
そんな気まずい状態で 会話が終わったまま 数日間過ぎた
それからだ 彼女を食事に誘ったのだが——
詩乃
詩乃
そう言うと 詩乃はぽろぽろと
涙を流しはじめた
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
随分と痩せ細った身体
両目に大きな隈をつくっている詩乃は 千円札を一枚机に叩きつけると
足早に店の外へ出ていった
それが最後に 詩乃をみたときだった
彼女の死をもって
事態は収束するかに見えた
しかしそれは終わりではなく
新たな事態の 「始まり」だった
なぜ彼女が死んでしまったのか
その理由を探り当てた時
おれはおれでなくなるような気さえした
彼女のポルノ動画が
ネット上に 横溢していたのだ
トーマ
トーマ
進次郎は 大袈裟にうんうんと
首を縦に振っていた
進次郎
進次郎
進次郎
進次郎
進次郎
進次郎
トーマ
トーマ
トーマ
進次郎
進次郎
進次郎
トーマ
アルラは ぶるぶると震えている
目の焦点が定まっていない
アルラ
アルラ
アルラ
アルラ
おれはアルラに目を向けたまま 瞼をぱちぱちさせた