テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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朝溶けの魔女

第2話 - 朝溶けの魔女第2話

1,525

2021年10月03日

#ホラー

#SF

#ダーク

Portrain

あやめ

きゃああああああーーーっ！！

ガシッ！！

あやめ

いだっ！！

誰かが私の腕を掴んで、痛みが走る。

でも、おかげで落ちずに済み、

私はビルの屋上から宙ぶらりんになった。

？？？

痛かった？ごめんねー♡

あやめ

えっ！？

あやめ

（誰か、男の人が助けてくれた……？）

？？？

とにかく一旦引っ張り上げるよー

あやめ

は……はい！

私を助けてくれたのは

真っ赤な髪に黄色いメッシュを入れた、

不良っぽい男の人だった。

あやめ

（ちょっと怖いけど……）

あやめ

あの……

あやめ

ありがとうございました

？？？

いいよ～

あやめ

（まだ、心臓がドクドクいってる）

あやめ

（屋上にいるのも怖い……）

あやめ

すみません、ここ、怖いから……

？？？

ああ、じゃ下階に降りよっか

あやめ

はい、すみません

下階に降りて、私たちは改めて話をした。

あやめ

（この辺なら太陽が入って明るいし、大丈夫そう）

あやめ

あの、助けてくれてありがとうございました

乃木修一

どーいたしまして～

？？？

俺、乃木修一（のぎしゅういち）ってんだけど

あやめ

あ、私、あやめって言います

乃木修一

運が良かったねー、あやめちゃん

乃木修一

俺もたまたま趣味の肝試しに来てただけだから

あやめ

趣味の肝試し？

あやめ

（ここって、そんな有名な心霊スポットなんだ）

私は、幽霊に襲われて気を失い

気が付いたらここに居たことを

乃木さんに話した。

乃木修一

へ～、あやめちゃん見える系の子か～

あやめ

ここ、何県なんですか？

乃木修一

ここね、日本じゃないよ

あやめ

えっ！？

乃木修一

ここはねー、イギリスのちょっと外れの方

あやめ

で、でも乃木さん、日本人ですよね

乃木修一

俺はこっち住んでて、こっちの大学行ってんの

乃木修一

で、趣味のオカルトのため

乃木修一

今日みたいに心霊スポットめぐってるわけ

あやめ

うそ……で、でも日本語……

乃木修一

あー、じゃあ

乃木さんは、流暢（りゅうちょう）な英語で喋りはじめた。

あやめ

（本当なんだ……）

私も、英語で返す。

あやめ

……本当にイギリスなんですね

乃木修一

お！英語うまいね～

あやめ

あ、あの私、イギリスって憧れの国だったのと

あやめ

英語は得意科目なので……

乃木修一

へ～、なるほどね

あやめ

（そういえば）

あやめ

あの、スマホ貸してもらえませんか？

あやめ

家に連絡をしたいんですけど

あやめ

私のスマホ、圏外で使えなくて

乃木修一

すまほ？

あやめ

はい。SNSでいいから呟いておこうと思って

乃木修一

……何言ってんのか、よくわかんねーんだけど

乃木修一

すまほって何？SNSって？

乃木修一

連絡したいなら公衆電話から自宅にかけてみれば？

乃木修一

その分のお金くらいなら出したげるし

あやめ

こうしゅうでんわ？

乃木修一

知らねーの！？

あやめ

いや、存在は知ってますけど！

あやめ

使ったことなくて……

あやめ

みんなスマホだし、アプリで電話すれば無料だし

乃木修一

…………

乃木さんは何か考え込む仕草をした。

乃木修一

あやめちゃん

乃木修一

いま、西暦何年？

あやめ

え……2021年ですよね

乃木修一

にせん！

乃木修一

ちょっとその、「すまほ」見せてくれる？

乃木修一

できれば持ってるものも、全部

あやめ

は、はあ。どうぞ

乃木さんはキラキラした目で

しばらく私の持ち物やスマホを触っていた。

乃木修一

ふー。……あのさ、あやめちゃん

乃木修一

驚くと思うけど

乃木修一

いまね、1984年だよ

あやめ

はい？

乃木修一

この時代、スマホなんか存在してないの

乃木修一

そもそもこんな薄型の電話、初めて見るし

乃木修一

ボタンもなしに触るだけで認識する機能とか

乃木修一

一般に普及してないんだわ

あやめ

…………

乃木修一

一般人が電話機を、それもこんな高性能なやつを

乃木修一

あやめちゃんみてーな子供まで持てるってーのは、

乃木修一

俺的に結構未来のテクノロジーなわけ

あやめ

でも、実際ここにありますし……

乃木修一

そこで！

乃木修一

オカルトに精通しているこの俺は

乃木修一

ある答えに行き着きました！

あやめ

な、なんですか？

乃木修一

あやめちゃんは

乃木修一

2021年の日本から、1984年のイギリスに

乃木修一

タイムスリップしたんだと思いま～す♡

あやめ

……た、た、

あやめ

タイムスリップ！？

──それから数十分たち、

いま、私は乃木さんの家まで来ていた。

私を保護してもらうという話になったのだ。

何故ならあのとき、幽霊ビルで……

乃木修一

じゃ、うちでしばらく保護したげるからおいでよ

乃木修一

貴重なタイムトラベラーだしさ

あやめ

で、でも……男の人の家になんて……

乃木修一

大丈夫。俺、面食いだから！

あやめ

（は？）

乃木修一

それに、このままだとあやめちゃん

乃木修一

パスポートもないし、学生証も役に立たねーし

乃木修一

発見されりゃニュースになって全世界の晒し者

あやめ

…………😨

乃木修一

何より、この幽霊ビルでひとりきりになるけど

乃木修一

まあ来ないなら頑張っ

あやめ

行きます！

あやめ

保護してください、お願いします！

乃木修一

よーし、けって～い♪

──なんてことがあったからだ。

あやめ

（タイムスリップなんて信じられない……）

あやめ

（でも実際、ここまで来る時にも）

あやめ

（スマホを触ってる人、誰も居なかったし）

あやめ

（見かけた新聞の日付も、1984年だった……）

ガチャ

乃木さんがリビングに戻ってきた。

乃木修一

ひとつ客室があいてるから、とりあえずここ泊まって～

乃木修一

あと風呂とかもてきとーに使っていいから

あやめ

ありがとうございます

あやめ

あの、早速ですけどお風呂を……

乃木修一

はいはい、どーぞ～

あやめ

（最初は乃木さんのこと警戒しちゃったけど）

あやめ

（こんなに良くしてくれて）

あやめ

（感謝しないと……）

あやめ

（それにしても、空いてる客室があるなんて）

あやめ

（広い家に住んでるなあ）

あやめ

（なんか、他にも部屋があるみたいだったし）

あやめ

（もしかして、他にも誰か住んでるのかな？）

あやめ

ん？

あやめ

（なんか……視線を感じる）

あやめ

（でも、乃木さんはリビングで電話中みたいだし）

あやめ

（いや……今日は怖い思いをしたから）

あやめ

（気のせいかな）

そう思って鏡の方に向き直ると

あやめ

ひぃっ……！

黒い人影は

ゆっくりと鏡に向かって手を伸ばして

鏡に指で真っ赤な文字を書いた。

黒い人影

『あなたは誰ですか？』

あやめ

え……

あやめ

（いつもだったら、無視するんだけど）

あやめ

（あの気持ち悪いぞわわって感じもないし）

あやめ

（答えたほうが良いかな……？）

あやめ

あ……の、あやめって……いいます

あやめ

乃木さんに助けてもらって

あやめ

行くあてもないので

あやめ

しばらく、ここでお世話になります……

きゅ、きゅ、きゅ

黒い人影

『なるほど』

黒い人影

『驚かせてしまって　すまなかったね』

あやめ

あ……

あやめ

消えた……

ドンドンドン！！

あやめ

ぎゃああ！！

乃木修一

あやめちゃん、俺俺！

乃木修一

言い忘れてたんだけどー！

乃木修一

お風呂さー、青い目で黒い人影の幽霊が出るんだけど

乃木修一

そいつジョージって言って、無害だから安心してね♡

あやめ

（お、遅い！！）

お風呂から上がって

私は借りた客室のベッドに入った。

あやめ

……今日はいろいろありすぎたなあ

あやめ

実は今日のことはぜ～んぶ夢で

あやめ

明日の朝起きたら

あやめ

全部元通りになってたりしないかな……

あやめ

おやすみなさい……

ちゅんちゅんと鳥の声が聞こえる。

──朝だ。

あやめ

元通りになってない……

あやめ

そんな都合よく夢オチになんてならないか……

あやめ

……なんだか、リビングの方が騒がしい

あやめ

行ってみよう

あやめ

（なんか、数人で揉めてる雰囲気……）

あやめ

（入りにくいな……）

あやめ

（ドアの隙間から覗いてみよう）

乃木修一

だから、客室使ったのは悪かったけど

乃木修一

別に大丈夫だって！

？？？

大丈夫なわけないだろ！

？？？

まあまあ、落ち着こうよ……！

あやめ

（めちゃくちゃ美形の男の外国人と）

あやめ

（日本人っぽい？女の子がいる）

あやめ

（男の人のほうが、すごく怒ってるみたい）

？？？

タイムスリップしてきた女だって？

？？？

そんな怪しい女

？？？

さっさと捨ててきなさい！

朝溶けの魔女

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乃木さんだいすきっ！

あの三人がまた喋って、いるのが本当に嬉しくて泣きそうです…！！！

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