洋介
俺は孤児だったんだ

洋介
産まれて間もない俺は孤児院の前に捨てられていたんだ

洋介
それから数十年経った時俺は聞いてみたんだ

洋介
俺の親はどうしていないのかって

洋介
普通は教えてくれないだろうけどよ、なぜかそこの院長は教えてくれたんだ

洋介
俺の家には2人の男の子が産まれたらしい

洋介
だが、片方の子は聞き分けが良くぐずることも少なかった

洋介
そして片方はよく泣き、好き嫌いが激しいって感じで育てるのが大変だったんだ

美晴
え、まさか…

洋介
そういうことだ

洋介
その聞き分けの良くないほうが俺だ

洋介
そう、親は聞き分けのいい方だけを残し俺を捨てたんだ

美晴
そんなことって…

洋介
現実だ

洋介
俺は15歳になっていたが

洋介
その時全てに絶望したよ

洋介
だがあんたと違うのは、その時から俺には死にたいという気持ちよりは

洋介
殺意や憎しみ、そういった感情が一気に押し寄せてきたんだ

美晴
だから殺人を?

洋介
そうだ、だから俺はなんの苦労もしてなさそうなヘラヘラ生きてるだけのやつらを見ると

洋介
抑えられない殺意が湧き上がってくるんだ…

美晴
そうなのね

洋介
あぁ、そして20になった俺は孤児院を出てアルバイトをしながら生計を立てた

洋介
幸いここのアパートは全ての料金込みで50,000円という安さでな

洋介
暮らしていくのには困らなかった

美晴
そうだったんだ…

洋介
それから何人も殺したよ

洋介
電車の中で騒ぐカップル、狭い道なのに広がって歩くバカなJKとかな

美晴
え、じゃあ最近のニュースの犯人って

洋介
あぁ俺だ

美晴
そうなんだ…

洋介
怖くなったか?

美晴
ううん

美晴
こんなこと言ったら世間的に良くないとは思うけど

美晴
その人たちは死んで当然だと思うの

洋介
ほう、それはなぜだ?

美晴
だって人に迷惑をかけてる人でしょ

美晴
そんな人生きてる意味ないじゃん

洋介
あっはっはっは

洋介
お前本当に意味わかんねぇ

洋介
ひねくれてるのかと思ったらそういう正義感みたいなのはちゃんとあんのな

美晴
うるさいなぁ

美晴
それくらいの気持ちはまだ残ってるわよ!

洋介
そうかそうか

洋介
そりゃ何よりだ

美晴
ねぇ

洋介
なんだ

美晴
お腹空いちゃった

洋介
はぁ?だから餓死するって言ってんだろ?

美晴
これ無理だよ辛すぎる

美晴
喉も今やばいし

洋介
しらねぇよお前が死にたいったんだろーが!

美晴
もーだめ!

美晴はそう言って冷蔵庫にある食材を勝手に食べ始めた
洋介
おい、それ俺の晩飯!

美晴
んー美味しい!

美晴
やっぱり最高ね

洋介
出てけ

美晴
え?

洋介
でてけっつってんだよ

美晴
な、何どうしたの急に

洋介
お前もその辺のヘラヘラしてる奴らと同じだ

洋介
結局何も我慢しないで、親がちゃんといて甘やかされて育ったんだろ

美晴
違うそんなことはない

洋介
うるせぇ、さっさと失せろ

美晴
…わかった

美晴
いろいろお手数かけました

洋介
あとこれだけは言っておいてやる

洋介
お前は死ねないんじゃない、死ぬ意思がないんだ

美晴はその言葉を聞いて図星を突かれているような気がした
洋介
死ぬのが本当は怖くて怖くて仕方ないんだ

洋介
車が避けたってのもギリギリ当たらないところに飛び出しただけだ

洋介
飛び降りた時も無意識に枝のある方に飛び降りただけだ

洋介
俺がナイフで殺そうとした時も壁が壊れかかってるところに呼び出したしな

美晴
…そんなこと……

洋介
ないって言い切れるか?

美晴
いえ

美晴
言えません

美晴
お邪魔しました…

洋介
あいつ、本当になめてやがる

洋介
くそが!

洋介
あー真面目に考えて損した

洋介
バイト行くか…

美晴
なんであいつにあんな説教されなきゃいけないわけ

美晴
確かに孤児出身かもしれないけど

美晴
私みたいに必要とされなかったわけじゃないのに…

美晴
あーもう考えるのやめよ!

美晴
家帰ってテレビ見てゆっくりしよ

美晴
ただいまぁー

美晴
っ!

父
てめぇ昨日帰らないで何してやがった

父
ただでさえいるだけでうっとおしいのに他人に迷惑かけるようなことしてねぇよな?

父
責任とるのはこっちなんだよ!

美晴
ご、ごめんなさい

父
てめぇは部屋の中で閉じこもってればいいんだよ

父
産むんじゃなかったわほんと

母
おとうさーんテレビ始まるわよー

父
おう、今行く!

美晴
なんなの…

美晴
痛っ…

美晴
なんで殴られなきゃいけないのよ…

美晴
テレビは居間にしかないし…

美晴
スマホ適当に触って寝よっと

美晴
ん、

美晴はよく分からないがなぜか気になるニュースを1つ見つけた
美晴
これって

美晴
ひょっとして洋介さんの孤児院かしら…

美晴
…………行きにくいけど、明日行って聞いてみよう

美晴はこの決断がのちの自分の運命を大きく変えるなんて考えもしなかった…