これは、私の母が学生の頃 アルバイトをしていた時の話です。
母のバイト先はステーキ屋で
お客さんが集まる本店と、人が ほとんど来ない蔵があったそうです。
その蔵は、団体のお客様用で
お客さんに頼まれると、そこでも 食事が出来るようになっていました。
その蔵には、古いタンスやテーブル、
針の動かなくなった、壊れた 振り子時計が置いてありました。
ある日母は蔵の掃除を頼まれ
一人蔵の中へと入っていきました。
テーブルの上を拭いてまわっていると
どこからか、音が聞こえたのです。
ボーン
…と、一回。
母は一目散に走って逃げ、
アルバイト仲間に起きた事を 話しましたが
誰も信じてくれなかったそうです。
霊の仕業か、はたまた誤作動なのか、 それは分かりませんが
母は確かに聞いたそうです。
重々しく辺りに響いた、 振り子時計の音を。
母は、それからもその店で長い間 働いていましたが
あの日から、振り子時計の音を聞いた 人は一人もいなかったそうです。