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次の休日。
ヴィッテの実力を 試すべく、朝から 街の外に出かけた。
スライの分裂体な『2号』は 家でお留守番。
森を抜ける石畳の街道を 進んで行くのは、 私・ヴィッテ・スライの 3名。
ヴィッテ
ヴィッテ
うれしそうに跳ねつつ 歩くヴィッテ。
彼女の背中で上下に揺れる リュックの中には、 スライが静かに潜んでいる。
さすがに魔物は 堂々と連れて歩けないけど、 置いてく訳にもいかず――
――ってことで、 リュックに入れて こっそり連れてきたんだよね。
マキリ
最後尾の私は、 周囲を見回しながら 緊張していた。
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
…あの時は、 “偶然出会った冒険者”に 助けてもらえて生き延びた。
だけど今回、 彼らはいない。
マキリ
マキリ
どこからどう見ても、 ヴィッテは 普通の“幼女”である。
この可愛さ&か弱さで 「魔物より“強い”」とか、 ありえないって!
マキリ
マキリ
買ったばかりの 短い槍を ギュッと握りしめる。
確かに、私は 戦い慣れてない。
槍なんて握るのも 初めてだけど、何もないより 100倍マシ。
マキリ
昨日から何回も イメージトレーニング しまくってきた。
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
――ガサガサ…
狼の魔物
草木がこすれた瞬間、 1体の魔物が現れた!
マキリ
私が身構えるのと 同時だった。
――シュッ!
ヴィッテ
素早く移動した幼女が 狼を殴った!?
バゴオォンッ!
狼の魔物
あどけない笑顔から 想像できない “重い一撃”。
狼は、勢いのまま 木へとぶつかり、 粒子になって消え去った。
マキリ
ヴィッテ
ヴィッテ
マキリ
自分の目が 信じらんない。
だけど、認める しかない。
――これは 事実だと。
スライ
ヴィッテのリュックから スライが体をのぞかせ、 文字を表示する。
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マキリ
ヴィッテ
スライ
私とヴィッテが答えると、 スライはリュックの外に もぞもぞ出てきた。
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スライが指したのは、 さっき魔物が消えた場所に 現れた “黒い小石” 。
RPGとかでいうとこの、 いわゆる“ドロップアイテム” ってやつだね!
ヴィッテ
ヴィッテ
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ヴィッテ
ヴィッテ
ヴィッテ
マキリ
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ヴィッテ
ヴィッテ
うれしそうに 走り回るヴィッテ。
マキリ
マキリ
マキリ
私は、一抹の不安を 覚えたのだった。
ヴィッテ
ウサギの魔物
マキリ
ヴィッテ
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その後も、出現した魔物は 全てヴィッテが瞬殺。
ドロップしたアイテムを 拾っては、 リュックに溜めて喜んでいた。
マキリ
本当ならスライのように、 ヴィッテと喜びを 分かち合うべきなのだろう。
だけど私は――
――素直に喜ぶことが できなかった。
しばらく進んだところで、 少し早めの お昼ごはんタイム。
森の中の、開けた場所。
マキリ
朝、意気込んでた頃の “緊迫感”はどこへやら。
手頃な切り株に座り、私が ぼけーっとサンドウィッチを かじっていると――
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スライが、 私だけに向けて 文字を表示してきた。
マキリ
…このスライム、 意外と鋭いな??
ヴィッテ
はしゃぎながらサンドウィッチを 食べるのに夢中なヴィッテは、 私たちの会話に気付いてないみたい。
だけど一応、 声のボリュームを抑えて 小声で話しとこ…!
マキリ
マキリ
マキリ
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――前言撤回。
スライ、あんまり 鋭くないかもしんない。
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
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マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
出発前に「何かあったら 私が守らなきゃ!」ってあふれてた 精一杯の気合いも緊張感も、
初戦終了後には 跡形も無く消えていた。
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
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マキリ
マキリ
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マキリ
マキリ
マキリ
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マキリ
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マキリ
マキリ
“先日の話”が 頭をよぎる。
マキリ
マキリ
マキリ
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マキリ
ふと思い出したのは、 初めてヴィッテに会った 時のこと。
彼女は とても強がっていた。
そして、とても おなかをすかせていた。
だけど我が家に来て、 一緒にごはんを食べる様になって、 少なくとも空腹に苦しむことは なくなったはずだ。
それに笑顔も増えた。
何でもないことで 明るく笑うヴィッテを見ると、 私まで嬉しくなっちゃう時もある。
そんなヴィッテに ずっと付き添っているのが、 魔物のスライ。
人間から敵意を向けられる存在が 人間の街で暮らすのは 並大抵のことじゃなかったはず。
スライは 幼いヴィッテを守り育てるために、 ずっと苦労してきたっぽいよね…。
ヴィッテやスライと 暮らした数日間、 私はすごく楽しかった。
もし彼らが いなくなっちゃったら――
――うん。 間違いなく さみしいよね。
私にとっても、彼らが 必要な存在に なってたんだな。
マキリ
マキリ
マキリ
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マキリ
マキリ
マキリ
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マキリ
マキリ
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ヴィッテ
――と、ヴィッテの賛同も 得られたので、
お昼ごはん休みのあと、 私たちは 『オークの集落』へ直行した。
目的地に近づくにつれ 魔物の出現頻度が上がり、 出現する魔物も大きく強くなる。
だけど、 ヴィッテの敵じゃ なかった。
どんな魔物が出現しても 殴るか蹴るかの一撃で 討伐完了だったのだから。
その勢いのまま、 『オークの集落』に 突っ込んだ――
――と思ったら、 数分後には、周囲に 魔物の姿が見えなくなった。
ヴィッテが、 集落のオークを 全滅させたのだ。
ヴィッテ
ヴィッテ
達成感あふれる顔のヴィッテ。
汗ひとつかいていない涼しげな姿は、 さっきまで大型魔物集団相手に 無双していたとは到底思えない。
ここで 気になることが 1つ。
マキリ
マキリ
マキリ
私の目線の先には――
――戦利品 の山。
全てヴィッテが倒した魔物の ドロップアイテムで、
「ヴィッテの戦闘の邪魔になるから」 と、私とスライが 一ヶ所にまとめたものだ。
私の身長ほど積まれたアイテムは、 武器やアクセサリーなど 古い金属製の装飾品が大半。
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
ヴィッテ
ヴィッテ
――ブォンッ!
ヴィッテの言葉を聞いた途端、 スライが巨大化。
数十倍に膨れ上がった と思うと アイテムを山ごと飲み込み、
再び、手のひらサイズに 縮んでいく。
全ては、数秒のうちの 出来事だった。
マキリ
マキリ
文字表示(スライ)
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マキリ
この世界のスライム、 そんなことも できるのか……!