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#恋愛
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工房・昼
ロゼリア
目を開けた瞬間、体中がズキッと痛んだ。
古い油の匂い。
低い天井、石壁、作業台。
ロゼリア
ロゼリア
そうつぶやいた瞬間。
ノエル
ノエル
真っ青な顔のノエルが駆け寄ってきた。
ノエル
ノエル
ロゼリアの体は、あちこちが壊れていた。
手の甲、腕、脚、胴体──
全身という全身に、無数のひび割れが走っている。
ロゼリア
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
工房内を見渡すロゼリア。
目に留まったのは、前面ガラスの運搬箱。
ただしまだ組み立て中だ。
ロゼリア
ノエル
ノエル
ノエル
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリアはようやく息を吐いた。
──まだ、東の離宮が燃える前。
──まだ、赤薔薇の間へ連れて行かれる前。
ロゼリア
グレッタ
工房の奥からグレッタが出てくる。
グレッタ
グレッタ
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
グレッタ
グレッタ
グレッタはニヤリと笑い、そして言った。
グレッタ
ノエル
グレッタ
グレッタ
ノエル
ノエルは細い銀糸を取り出した。
それからグレッタは、ロゼリアへと視線を向けた。
グレッタ
グレッタ
ロゼリア
老女の瞳はまっすぐだった。
小さな少女を、“女帝”として認めていた。
ロゼリア
胸が詰まりそうになるロゼリア。
一呼吸おき、堂々と口を開く。
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
笑い出すロゼリア。
ノエル
ロゼリア
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
グレッタ
グレッタ
グレッタ
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
宮殿の外庭・夕
植え込みの陰で、荷車が止まった。
ノエル
ノエルが運搬箱の蓋を開け、手を差し出す。
ロゼリア
彼の手をとり、ロゼリアは箱の外に出た。
植え込みに隠れ、様子を伺う二人。
ノエル
少し不安そうなノエル。
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリアが自信たっぷりに答えた。
ロゼリア
ロゼリア
──コツ、コツ…
石畳の通路の先から、足音が近づいてきた。
イリス
それから現れたのは、侍女服の少女。
彼女が植え込み脇を通った瞬間──
ロゼリア
ロゼリアは侍女の前に飛び出した。
イリス
突然、前に出てきた白い少女に驚くイリス。
ロゼリア
ロゼリア
イリス
イリス
イリスは混乱しているようだ。
ロゼリア
イリス
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
イリスの顔色が変わる。
イリス
イリス
ロゼリア
イリス
イリス
ロゼリア
イリス
イリスは、少し考えた。
そしてポケットから何かを取り出す。
端だけ焦げた、一枚の紙。
ロゼリア
ロゼリア
イリス
ロゼリア
イリス
イリス
イリス
ロゼリアは紙を受け取った。
見覚えのある、自分の筆跡だった。
イリス
イリスは石畳の道を去っていく。
後ろ姿を見送ってから、ノエルが聞いた。
ノエル
ロゼリアは小さく息を吸う。
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリアは、日記のページを抱きしめた。
それからノエルに向き直る。
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
ノエル
ノエル
ロゼリア
ロゼリアは、輝くような笑顔で笑った。
それから覚悟を決めて──
──力の限りに 体を壊した。
ロゼリア
目を覚ますと、ロゼリアは豪華な部屋にいた。
ロゼリア
ロゼリア
部屋を見渡した瞬間。
鏡に映る自分の姿が目にとまる。
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリアは立ち上がり、部屋を出て行った。
鏡の間・夕
夕焼けのオレンジの光が差し込む部屋。
たくさんの鏡が並ぶ中。
ロゼリア
ロゼリア
鏡面が揺れ、もう一人が現れる。
女帝ロゼリア
女帝ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
女帝ロゼリア
“女帝”は少し、寂しそうな顔をした。
ロゼリア
ロゼリア
女帝ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
女帝ロゼリア
ロゼリアは鏡に手を伸ばす。
向こう側の“女帝”も、同じように手を重ねた。
触れた瞬間、鏡一面にひびが走る。
──パリンッ
ロゼリア
女帝ロゼリア
赤い光が弾けた。
一人きりで、泣きたかった夜。
切り離した弱さ。
守ろうとした誇り。
全部が、一気にロゼリアの中へ流れ込んだ。
ロゼリア
その場に膝をつきかけて、ロゼリアはこらえた。
ゆっくり顔を上げる。
その瞳は、もう揺れていなかった。
ロゼリア
ロゼリア
鏡の間の隅、柱の陰からクラウスが姿を現した。
クラウス
ロゼリア
ロゼリア
クラウス
クラウス
ロゼリア
クラウス
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
クラウス
クラウスはしばらく黙っていた。
やがて、深く息を吐く。
それから、静かに膝をついた。
クラウス
ロゼリアはもう、振り返らなかった。
帝都の大通り・昼
戴冠式の翌日。
旗と赤い花で埋まった大通り。
ロゼリア
白い馬車では、笑顔の“女帝”が民に手を振る。
群衆
群衆
両脇の人波が歓声を上げている。
その群衆の中に、一人の少年がいた。
ノエル
黙って馬車を見上げるノエル。
歓声には加わらない。
ただ、遠くのロゼリアから目を離さなかった。
風が吹く。
ロゼリア
女帝が手を上げた拍子に、右手の袖口がわずかに揺れた。
白い肌に残る、細いひび。
ノエル
気づいたのは、彼だけだった。