テラーノベル
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森は、静かで好きだ。
人の声がしないから。
嘘をつかなくていいから。
フードを深く被りながら、歩く。
――見られたくないから。
昔から言われている。
「狼は恐ろしい存在だ」と。
でも、本当は違う。
少なくとも、俺は違う。
……そう思っているだけかもしれないけど。
人間の中で生きるのは、息が詰まる。
少しでも気を抜けば、終わりだ。
「普通じゃない」って、すぐに排除される。
だから、隠す。
耳も、感情も、全部。
そんな時だけ、この森に来る。
ここなら、少しだけ“自分”でいられるから。
ある日。
木漏れ日の中で、誰かが笑っていた。
小さな動物たちに囲まれて、楽しそうにしている。
……人間、だよな。
なのに、妙に目が離せなかった。
気づいたら、声をかけていた。
P.A
振り返ったその子は、赤いフードを被っていた。
顔はよく見えない。
でも、どこか警戒しているのが分かる。
そりゃそうか
少しずつ話すようになった。
名前は聞かない。
素顔も見ない。
それでも、不思議と心地いい。
P.A
ふと、口に出してしまった。
試すみたいに。
少しの沈黙。
R.S
その答えに、ほんの少しだけ安心する。
やっぱり、この子も――
違うかもしれない。
でも、同じかもしれない。
そんな期待が、消えなかった。
その日、森が騒がしくなった。
「狼を見つけたら仕留めろ!」
遠くから聞こえる声。
最悪だ。
ここまで来るなんて。
逃げないと。
そう思った瞬間、その子の手を掴んでいた。
R.S
考えるより先に、体が動いていた。
守りたい、って思った。
理由なんて、分からないけど。
走る。
枝をかき分けて、奥へ。
後ろから足音が迫る。
間に合え……!
その時。
ふわり、と赤いフードが外れた。
P.A
見えてしまった。
隠されていたものが。
――耳。
人間じゃない証。
足が止まる。
思考が追いつかない。
でも。
P.A
口から出たのは、そんな言葉だった。
ずっと感じていた違和感。
この子も、自分と同じ“側”なんじゃないかって。
それが、確信に変わる。
帽子に手をかける。
もう、隠さなくていい。
そう思えた。
P.A
外した瞬間、風が通る。
隠していた耳が、空気に触れる。
その子が、目を見開く。
驚いてる。
でも、怖がってはいない。
P.A
少し笑ってみせる。
P.A
こんなに安心したのは、初めてだった。
P.A
沈黙。
でも、それは嫌なものじゃない。
R.S
小さな声。
でも、はっきり聞こえた。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
P.A
即答だった。
これで、もう隠れなくていいわけじゃない。
世界は変わらない。
人間はきっと、これからも怖がる。
でも。
隣に、同じ存在がいる。
それだけで、こんなにも違う。
森の奥。
誰も来ない場所で。
二人の“狼”は、初めて本当の姿で笑った。
――そしてその日から。
赤いフードの子と並んで歩くのが、当たり前になった。
ああ、やっと見つけた
“同類”を。
黒...ぷりっつ視点
白...莉犬視点
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