語り継がれる悪い魔女

箒に乗って空を飛びながら 初めて見る世界に浮かれている

キューィ

キュキュキュ

空に向かって空高く

探しに行くの

私のパートナー！

カァー

カァー

カァー

からかわれたのが悔しくて、私はそっぽを向きながら

海を渡っていった

次に出会えるわくわくと期待に胸いっぱいで

海を横に飛んでいたら、森が見えてきた

私の生まれ故郷は魔法が使える国

女は魔女、男は魔法使いってゆう種族

魔法の国には掟がある

16歳になるまで故郷から出てはいけない。

人間と仲良くしてはいけない。

魔女、魔法使いとバレてはいけない。

バレると魔力を失って人間になってしまう。

なぜか？ 昔の悪い魔女が呪いをかけたからだ

って何度も学校や親、周りの大人に聞いたり教わったりした

急いで上に向けたけど、遅かった

勢い良く森に突っ込んでガサガサって音を出しながら、やっぱり、勢い良く…落ちた

そこらじゅう擦り傷を負った私とほーちゃんは、痛くて少しだけそのまま休憩することにした

そうだ

16歳まで国を出てはいけないって言ったよね？

ってことはさ、

16歳になったら国を出ていいってことなんだよ

魔法の国は16歳になったら受けなきゃいけない試験がある

それは、パートナーを探しに行くこと

生き物なら何でもオッケー

人間以外の…

パートナーは人間界にいる

だからみんな人間の世界に行って探す

人間に見つかったら帰れない

パートナーを見つけないと帰れない

結構過酷な試験だけど…

こんなお年頃

国を出て色んな世界を見たい！が勝つお年頃

誕生日をどれだけ待ったか

ものすっごい！！

待って待って待って！

今日誕生日を迎えて

親に友達に先生に挨拶をして

わくわくドキドキ

国を出る

大体みんなそう

だめって言われるほど出たくなる！

本や話でしか聞いたことない世界に興味が無い人なんていない！

そーでしょ？

小さい時から時々見てる夢

聞くと、パートナーの手がかりになる予知夢なんだって

ぐー…

森だけど、鬱蒼としていない、心地いい森

果物に杖で触れる

すると果物は小さな塊になる

箒のほーちゃんには口がないから(喋れるけど…) これを渡すと食べることができる

杖を果物ひとつひとつに当てると、熟し度がわかる

人間に魔女とバレれば人間になってしまう

影がキョロキョロしながらこっちへ向かってくる

私は音を立てないように地面へ降りた

国と同じ味がした

紅茶の作り方なんて分からない私にはハテナが飛んだ

庭には薔薇を始め色んな物が植わっていた

花に果物、野菜…

柔らかくニコって微笑んだけど、その顔は悲しみに溢れていた

しばらく人間になってからの話を聞いた

楽しかった事

魔法が使えない代わりにできる事が増えたこと

そして…

辛く悲しかったこと

コロコロと表情を変えては楽しそうに話すのを聞いてた

悲しかった話も今は昔話の様に懐かしい顔で

ついつい聞き入って、楽しかった

魔女や魔法使いの寿命は長い

何千年生きるなんてざらで

でも…

その顔で色々分かった

やめた

悲しむだけじゃん。

こんなこと聞いたら…

なんだか懐かしく感じた

種って聞いて心臓が鳴った

でもハムスターは種好きだし…

そもそもこんな早く見つかるわけないし…

するするっと肩に乗られてほっぺたにふわっと毛が触れた

知ってる感覚

知ってる重さ

知ってる匂い