テラーノベル
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包丁を胸に突き立てた。
うまく骨に当たらずに刃が通ったのか
思ったより手応えはなくて
突然の痛みに目を覚ました奴が 苦しそうにもがくのを
どこか冷めた気持ちで見ていた
でも次第に動かなくなっていくのを 見ていて
ああ、こいつは死ぬんだと思ったら
急に怖くなって
人間は脆かった
すぐ血を吐いて動かなくなった
死んでしまった
違う、僕が殺したのだった
顔を叩いた
奴の顔を、何度も
しぶとくてしつこいあいつが
何度も僕を叩いてきたあいつが
あっけなく死んでしまうなんて、 信じられなかった
こんなに簡単に解放されるのなら
ぼくの今までたえてきたくつうは
くるしみは
どりょくは
なんだったというのだろう
こころにあながあいてしまったような
こんなにもみたされないきもちは
はじめてだった
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