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Re grow ━よいこの賽原保育園━

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9 - 第9話 回顧のじかん、ピクニックのじかん

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2024年09月15日

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俺が生まれた家庭は、選民思想が強い家だった。

親も上の兄弟もいい学校に通い、お偉い職業に就いて

他の普通の家庭を常に見下していた。

街を歩いていても、肉体労働者を横目に見ながら

「優」の母親

あらまあ、あんなに泥だけになって

「優」の母親

いい?雄信(ゆうしん)

「優」の母親

オベンキョウができなかったら

「優」の母親

あんな事しなきゃ生きていけないんだからね

……と眉をひそめて俺に言って聞かせるのが日課だった。

雄信

……そうだね、ママ

雄信

「テーヘン」や「シャチク」になったら大変だ

雄信

よく「オベンキョウ」して立派な人になるよ!

「優」の母親

いい子ね、雄信は

俺がそう答えるたびに、母親は睨みつけてくるおじさん達には目もくれず

甘い声を出しながら頬擦りしてきた。

「優」の母親

雄信は将来なんになりたい?

雄信

うーん、パパみたいなお医者さんにもなりたいし

雄信

ママみたいな「ベンゴシ」にもなりたいな

「優」の母親

あらあら、雄信は欲張りさんね

「優」の母親

でも大丈夫、雄信はできる子だもの

「優」の母親

なりたいものになーんにでもなれるわ!

 

俺もその思想をなんの疑いもなく掲げ、大きくなった時の自分の姿を夢想していた。

 

 

家族が俺を見る目が変わったのは

小学校への受験勉強が本格化し始めてからだった。

「優」の母親

もう、何回言ったらわかるの!?

「優」の母親

この図形の問題はここを見て、ここ!

「優」の母親

よく考えたらわかるでしょ!?

「優」の母親

もしかしてわざとやってるの!?

「優」の母親

いい?これは貴方のためなんだからね?

俺はどうやら、家族のお目がねに適う人間ではなかったらしい。

母親は、俺を叩く用の物差しを振り上げて

よくヒステリックに怒鳴り散らしていた。

父親はそれにうんざりしていたようで

日曜日も仕事が、付き合いがなんだと言い訳をして

あまり家に帰ってこなかった。

……でもたまに帰ってきた時に

「優」の父親

──、お前が欲しがってたゲームだぞ!

「優」の父親

「優」の父親

……雄信は辞書だ、勉強頑張るんだぞ

兄弟達に配るプレゼントと、俺に渡されるプレゼントを見比べてみると

どちらを可愛がっているか、残念な事に幼い俺でも察してしまえた。

 

 

 

試験本番でも、まるで問題に歯が立たない事に泣きそうになりながらも

自分なりに何とか解答したが……

試験終了後、合格発表の日。

「優」の母親

……

「優」の母親

……

合格者の番号が書かれた大きな看板を、しばらく睨みつけていた母親が

「優」の母親

はあ……

「優」の母親

いくら注ぎ込んだって思ってるの?

「優」の母親

もういいわ、貴方は

「優」の母親

早く帰っていらないものを処分しましょう

そう言って手を引く母親が俺を見る目は……

いつか見た、道路で作業をする肉体労働者を見るような目をしていた。

 

 

 

俺はまざまざと「オベンキョウ」の出来ない人間だと

まだ小学生でもない頃から思い知る羽目になった。

それならそうと割り切って

公立に進む奴らと愉快に過ごせたら、どれほど楽だっただろう。

でも俺のプライドは……

親から押し付けられた価値観は、それを許してくれなかった。

一家の失敗作として過ごす事が

意識だけが高いまま、かつて自分が侮蔑していた世界で生きる事が

俺には到底我慢できるものでは無かった。

 

 

……だから俺は、家のベランダから飛び降りた

開業医と弁護士、二人とも信用で食ってたから

子供を死なせた事で社会的地位を失って、路頭に迷ってたぜ

ウケるよな、ハハハッ!

いつもご飯を、誰よりも上品に食べる優くんは

ヤケになったように、サンドイッチを片手で貪りながら話を終えた。

……でも俺は地獄から解放されるでもなく

死んだ後「自死界」とかいう鬱蒼とした森みたいな所で目を覚まして

しばらく彷徨う羽目になった

彼岸のお偉いさん達からすると、自分から死を選んだ人間は

現世での修行を放棄した罪人、みたいなもんらしいからなあ

そこで気の遠くなるような時間を過ごしていたら

男鹿さんのバスに迎えられて保育園にやってきた、って訳だ

するとどうだ?自分より後から入ってきた子供に

次から次へと俺を差し置いて「お迎え」が来て行っちまう

この状況で腐るなって言われても無理があるさ

鬼塚先生

……そうだね

鬼塚先生

人には人の事情、というものはあるけど

鬼塚先生

どうしても他殺、病死、事故死した子供に先に「お迎え」は来やすい

ロクじい

寿命を、命の理を自分から反故にした、と

ロクじい

どうしても見做されてしまうのじゃ

ロクじい

……気の毒な話だけれど、な。

「現世で傷ついた魂を癒すのに時間が掛かる」とも説明されたけど

そんなもの口ではなんとでも言えるしなあ?

男鹿さん

……

男鹿さん

どっちでもいいんじゃないか?

……は?

何がだよ、適当なこと言うな!

男鹿さん

「口ではどうとでも言える」のなら

男鹿さん

「自分が楽でいれる」方を選んでも良いじゃないか

男鹿さん

現世で嫌と言うほど傷ついたんだ

男鹿さん

少しくらいこの世界で休んでいってもいいだろう

男鹿さん

それこそ「バチ」が当たるわけでもない

……

男鹿さん

真面目が苦しかったのなら

男鹿さん

今からでもここで「不真面目」してもいいんじゃないか?

……

……はは、そうだなあ

裏を返せば「ずっと子供のまま過ごせる世界」なんだ

「ショーライのため」に人生苦しんでたけど

ちょっとくらい遊んでもいいよな?

決まりごとは守った方がいいと思うけどね

鬼塚先生

後、みんなと喧嘩しないこと

はは、分かってるよそれくらい

先生も健もお堅いなあ

さ、早く飯食って帰ろうぜ?

……大事な日なのに不貞腐れててごめんな、陽子

陽子

……!

何だよ、面食らった顔して

陽子

いや、素直に謝ってくれたから……

そんなの、陽子が普通に話をしてる事の方が驚きだろうが

陽子

……

陽子

ふふ、それもそうだね

愛斗

愛斗

ご馳走様!

愛斗

お前ら、まだ食い終わってなかったのか?

愛斗

寂しいのはわかるけど時間ないんだぞー

今度は愛斗くんがお利口になってるし

愛斗

む、そんなにいつもの俺がいいなら……

愛斗

おらー!食わないならサンドイッチよこせー!

陽子

あはは、ちょっとやめてよー!

……そうだね、これで最後なんだから……

にーげろー!

愛斗

待て待てー!

鬼塚先生

全く……

鬼塚先生

ちょっと遊んだら帰るからねー!

 

 

 

男鹿さん

さあ、到着だ

陽子

ありがとう、男鹿さん

陽子

……それと、鬼塚先生も

陽子

今まで、見守ってくれてありがとうございました

男鹿さん

……仕事だ、気にするな

鬼塚先生

こっちこそありがとう

鬼塚先生

……何だかしんみりしちゃうな……

 

ブロロロロ……

ん?何だろうあのバス

男鹿さんの黒いバスとは違って真っ白だ

私も見た事ない

……!

あのバスは……

白いバスの運転手

白いバスの運転手

皆さん、そして陽子さん

白いバスの運転手

ご機嫌よう

白いバスの運転手

陽子さんをお迎えに参りました

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